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2024年10月号

優生手術被害者へ知事が謝罪 「命守る」県政へ補正

愛知県議会の9月定例会は9月19日から10月11日まで開かれ、総額約170億円の一般会計補正予算など54議案を審議、可決しました。
補正では、犬山市の小学1年女児が5月に母親の内縁の夫から暴行を受けるなどして死亡した事件を受け、県の児童相談所と県警が児童虐待事案の情報を即時共有できるシステムの改修費用や、三河地区にある児童の一時保護所の移転整備費用など、子どもの命を守る当面の措置を盛り込みました。
このほか10月末に開業するステーションAIの整備費を、物価高騰などにより2億3千万余円、交通安全対策として信号機の発光ダイオード(LED)化や道路標識の更新などで1億1400万余円などを増額。
高齢者が犠牲となる交通事故が全体の5割を超え、これを抑止するためのものです。
旧優生保護法による障害者への強制不妊手術に関して、大村愛知県知事も9月18日の記者会見で「知事として、政治家として一連の経過は極めて遺憾。
大変申し訳ないことだったと、心からおわびをしたい」と謝罪の意を表明しました。
一般質問で高木ひろし議員がこの問題を取り上げ、今後の県による検証や人権教育のあり方を質しました。

政治不信一掃の総選挙に

自民党の総裁選挙を受けて石破茂内閣がスタートしたが、予算委員会での質疑も経ぬまま、いきなり解散・総選挙に突入した。
立憲民主党は野田佳彦元首相を新代表に選び、「政権交代こそ最大の政治改革」と訴え、石破首相に真っ向勝負を挑んでいる。
この総選挙の最大の焦点は、80人を超える自民党安倍派議員らによる裏金・脱税問題によって極限まで高まった政治不信をどう一掃するかだ。
石破首相は、総裁選挙までの発言を次々に後退させており、裏金問題の解明も政治資金の透明化などの改革も全く期待できないことが明らかになってきている。
こうしたやり方は、3年前の岸田首相の時と全く同じだ。2度と同じ轍を踏むわけにはいかない。
3年前以上に深刻なのは、安倍政治によってもたらされた政治の腐敗、不正があちこちで表面化したことだ。
統一教会との癒着はその象徴的なものだった。自民党は各議員の自主点検でお茶を濁してきたが、朝日新聞の9月17日のスクープがそれを打ち破った。
2013年の参議院選挙直前に、統一教会幹部と安倍首相が自民党本部で会談を行ったという証拠写真だ。
組織的に自民党が統一教会と関係し、それに基づいて多くの自民党議員が支援を受けていたことが裏付けられた。こうした『壺』議員たちの再選を許してはならない。

原告・尾上夫妻らも傍聴 障害者に不妊手術を強制「優生思想」の根絶へ

高木ひろし議員が旧優生保護法問題を取り上げた9月30日の県議会本会議には、国賠請求の原告である尾上敬子さん、一孝さん夫妻をはじめ多数の障害者や支援者が傍聴に詰めかけた。
夫妻は県立名古屋聾学校で学ぶ中で知り合って結婚し、理容店を営んできた。
子供を望んでいたが、周囲から強く反対され不妊手術を強いられた。
これを悔やんで裁判を起こすことを決意。
今年3月に名古屋地裁は、優生保護法のもとで行われた強制的な不妊手術は憲法違反だとして、国に賠償を命じる勝訴判決を下した。
裁判は、愛知県聴覚障害者協会(中嶋卯月会長)をはじめ愛知障害フォーラムに参加する障害者らが熱心に支援を続けてきた。
愛知県心身障害者コロニーや城山病院などかつての県機関で行われた強制不妊手術の実態について、元職員や医師などから聞き取り調査を行うべきと迫る高木議員に、県保健医療局長らは「国の方針が示されたら」と受け身の答弁に終始。
一方、過去の「保健体育」教科書の記述(別掲)を示して「優生思想」の普及に加担した学校教育の責任を問うと、教育長は「(強制不妊を)今後の人権教育の題材に取り入れていく」と積極的な方針を示した。 優生結婚とは、遺伝学的にみて素質の健全なものどうしの結婚をすすめ、精神分裂病、先天性聾などのような遺伝性疾患の素質が結婚によってあらわれるのを防ぐことである。 したがって、優生結婚をするには自分ならびに相手の家系を調査し、遺伝病患者の有無を確かめなければならない(昭和47年「高等保健体育」大修館書店より)


傍聴後に高木ひろし議員を囲む尾上夫妻(前列左から2、3人目)ら支援者の皆さん

わたしで最後にして ナチスの障害者虐殺と優生思想

ナチスが「優秀なドイツ民族を残す」という優生思想に基づき、障害者20万人以上を殺害したT4作戦。
それがユダヤ人のホロコーストにもつながっていった。
日本障害者協議会代表の藤井克徳さんが、このT4作戦の跡をドイツに訪ねて事実を丹念に掘り起こし、NHKドキュメンタリーとしても放映された。
元職員が障害者ら46人を殺傷した「津久井やまゆり園事件」など、今日にも及ぶ優生思想の考え方を徹底的に批判。
「優生保護法は終わっても、優生保護法問題は終わっていない」として、障害者権利条約の立場から全面解決への道筋を示す。


(合同出版) 藤井克徳 著

2.5倍の導水路 県の姿勢を問う

2010年以来凍結されていた木曽川水系連絡導水路事業(愛知県、名古屋市の利水と異常渇水対策のため、徳山ダムの水を木曽川へ導水する43キロのトンネル事業)について、国は事業再開へと動き出そうとしている。
その事業費が、890億円から2.5倍の2270億円に膨らんだことを受けて、高木議員が9月30日の本会議質問で、県の対応を改めて問いかけた。
長良川河口堰(1995年)や徳山ダム(2008年)と一体の導水路事業は、根本的に高度成長時代の水需要の激増を前提にしたもので、新規利水の必要性は著しく低下しており、水道事業にとっては今後の巨大な設備更新を控えて大幅な料金値上げに結び付く懸念も指摘した。
また異常渇水に備えては、農業など各種の既存水利権を融通するシステムや、目的別の既存ダムの運用見直し、節水技術の応用など、ソフトで環境重視の河川行政への転換も提起した。
県は「コスト縮減や県負担の軽減を国や水資源機構に働きかける」として事業への同意については明言を避けたが、「木曽川の既存ダム群の利水、治水機能を連携運用」について初めて言及した


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