令和7年県民環境委員会 本文 2025-10-03

【高木ひろし委員】
 二点質問する。
 最初は、ヘイトスピーチ、いわゆる外国人政策に関わる話である。
 さきの参議院選挙の中で私が強く感じていたのは、選挙が始まってから外国人政策が争点に急浮上したことである。言説の中では、外国人が急増したことによって日本の生活、治安が脅かされていることが盛んに言われ、日本の社会制度に対して外国人による不当な利用が横行していることも言われた。以前から一部の候補者が言うことはあったが、今回の場合はそれと質的、量的に異なる規模に拡大したと言わざるを得ない。特定の政党の名前は挙げないが、こうした言説を看板にして多くの支持を得て議席を伸ばした勢力も実際にいるわけで、これは、ゆるがせにできない課題になってきた。与党を含めて主要な政党の中にも、これに応じて外国人施策、取締りを強化する方向での動きも出ている。
 そこで、愛知県人権尊重の社会づくり条例を所管する当局において、特にその中には、本邦外出身者に対する差別的言動を規制するようなヘイトスピーチに関する条項も含んでいるが、こうした条例を所管し、あいち人権推進プランを推進している担当として、参議院選挙中に特に顕著になった排外主義というか、外国人のもたらす日本社会の弊害について、極端に事実に基づかずにこれを扇動、流布するような言説が横行した事態についてどのような受け止め方をしているのか、まず聞きたい。

【人権推進課長】
 参議院選挙の件であるが、選挙活動であれば何を言っても許されるものではなく、法務省が2019年に考え方を整理している。選挙運動等の自由の保障は民主主義の根幹である一方、その言動が選挙運動等だからといって、安易に人権の侵犯性を否定することはあってはならない。人権侵犯性の有無を総合的かつ適正に判断して各法務局は対応するようにという内容である。したがって、選挙運動であれば何を言っても許されることではないといえる。こうした考えは法務局から県にも通知され、県から県内市町村にも通知している。
 愛知県では、高木ひろし委員からも話があったように、愛知県人権尊重の社会づくり条例に基づき、各取組を進めている。こうした差別的なことをあおるような発言は、あってはいけないと考えていて、ヘイトスピーチにつながるような言動が生じないように、まず県としては啓発活動を国や市町村と連携しながら進めている。
 公の施設でそうしたヘイトスピーチが行われないよう、行われる恐れがある場合には施設の利用を許可しない。さらに、県内の道路上の公共の場所などでヘイトスピーチが行われたのではないかという申出があった場合、愛知県人権施策推進審議会に諮問して、審議会がヘイトスピーチに該当すると判断した場合は、その答申を受けて、概要を知事が公表する取組を進めている。

【高木ひろし委員】
 この条例を2022年につくって4年目に入るわけだが、ヘイトスピーチに関わる規制の条例に基づいて県がやっていることは、具体的なヘイトスピーチではないかと思われるような事象が発生した場合には、審議会の意見を聴きながら、公の施設や場所でヘイトスピーチが行われないような措置を講ずること。もう一つは、部落差別や外国人差別等に関わるようなキーワードを検索してもらうモニタリング業務を委託して、それぞれに関連した項目の動向を把握し、その中で極端な例は、法務省に削除要請するという、大きく二つの対策をやっていると思う。こうした対策の中で、ヘイトスピーチに該当すると思われるような事案の検討や、モニタリングの中で上がってきた、外国人差別に関係するような項目は、どのような数値になっているのか。

【人権推進課長】
 ヘイトスピーチ関係の大きく二つの対策についてである。まず、ヘイトスピーチが道路上で行われた場合、2022年の条例施行以来、四つの案件について10件の申出があった。そのうち1件についてヘイトスピーチに該当するという審議会からの答申を受けて、概要の公表を行っている。
 このヘイトスピーチは、本年1月12日に名古屋市中区内の中国に関係する行事が開催された会場付近で、中国人に対して祖国で生きろというプラカードが掲示されたものであり、特定の民族を地域社会から排除することを扇動することに当たるものであった。なお、この概要の公表の目的は、ヘイトスピーチを広く県民に周知して、このようなことをしてはいけないという理解促進に努めるものであるので、行った者の氏名、団体の名称や住所等の公表はしていない。
 また、この1件以外はヘイトスピーチに該当しないという審議会からの答申だったが、地域社会からの排除の扇動に発展する可能性があるという懸念もあり、社会の分断をあおることがないように、必要な啓発等をより一層講じられたいとした意見も受けて、しっかりとヘイトスピーチの解消に向けた県民への啓発に取り組んでいく。
 さらに、もう一点のインターネットモニタリングの件であるが、2021年の試行的な取組以来、条例の施行後も続けており、ヘイトスピーチの恐れのある言動を把握した場合においては、速やかに拡散防止に向けて国の人権擁護機関である名古屋法務局に削除要請を行っている。
 昨年度は、そうしたヘイトスピーチの恐れがある言動を25件確認し、名古屋法務局に削除要請を行って、そのうち7件が削除されたことを確認している。

【高木ひろし委員】
 非常に限定的な案件だと思うが、こうした条例をつくり、ヘイトスピーチは許さないという県の姿勢を明確にし、取組が進んでいることは評価したい。
 そうした中で、愛知県弁護士会から、愛知県において人種差別撤廃条例、ヘイトクライムやヘイトスピーチを厳しく規制する条例をつくってほしいという意見書が今年2月に提案されて県に届いていると思うが、これをめぐって、8月9日には愛知県弁護士会館でシンポジウムがあった。私も出席し、県は愛知県人権尊重の社会づくり条例をつくって、県なりの努力をしていると発言をしてきたが、県としては愛知県弁護士会からの意見書に対してどのような対応をしようとしているのか答えてほしい。

【人権推進課長】
 本年2月の愛知県弁護士会の意見書は、3月に愛知県及び県内の市町村宛てに提出されている。この意見書は、県内におけるヘイトスピーチ等の実情を踏まえて、本県の人権条例に刑事罰や禁止規定を盛り込むことなどが求められている。本県では、条例制定の前年に行った有識者会議において、ヘイトスピーチが行われた場合に条例に刑事罰などを盛り込むことを含めて検討したが、本県の状況を踏まえ、東京都の人権条例と同じように、ヘイトスピーチの概要の公表を行うこととして、刑事罰などは設けないこととした。
 2022年の条例施行から4年目となるこれまでに、ヘイトスピーチの概要の公表は1件あり、ヘイトスピーチがなくなったとまではいえないが、条例によって一定の抑止効果はあるものと考えている。
 そのほか、意見書で求められていることとして、インターネット上の拡散防止措置や、公の施設の利用、ヘイトスピーチが行われる場合には制限をすることについては、インターネットモニタリングの実施や公の施設に関する指針の策定により、本県では既に対応している。
 ヘイトスピーチをなくすためには、ヘイトスピーチは決して許されるものではないという意識が広く深く社会に浸透していくことが非常に重要であるので、今後もあいち人権センターを拠点として、パネル展示などをはじめとする様々な広報、啓発活動を実施することで、ヘイトスピーチの解消に向けて取り組んでいきたい。

【高木ひろし委員】
 最後にこの項目に関する要望になるが、弁護士会の場でも具体的にいろいろ指摘していたが、条例をつくる、法律を改正するためには、立法事実が必要である。愛知県内において、2022年の条例制定以降、先ほどの話だと、ヘイトスピーチとして認定されて公表されたのは僅か1件であるが、措置に至らないような事象は、実は愛知県内にも相当発生している。ここで一々列挙することは避けるが、弁護士会はそういった事例を集めている。愛知県は全国でも有数の外国人県民の多い県でもあるし、また、来年にはアジア・アジアパラ競技大会という、アジアの各国からいろいろな人を迎える重要な行事が控えていることもあり、愛知県内における人権条例の考え方に基づく規制や、発信が十分かどうかは、条例が設定されて4年目、5年目になれば、十分吟味する時期にきている。
 そこで、弁護士会や審議会とも十分協議をして、当局は愛知県における多文化共生という重要な役割も有しているので、外国人県民や往来する外国人が安心して訪れてもらえる、住み続けてもらえるような愛知県となるための施策の強化に向けて、ぜひ議論を進めてもらいたい。
 もう一点、別のテーマだが、9月13日に国際芸術祭あいち2025が開幕した。既に20日ほど経過して、11月の末まで開催しているから、これからだと思うが、現時点の国際芸術祭あいち2025の来場者の傾向や数、どのような社会的な反響を呼びつつあるかについて、担当部局がどのように把握しているか、まず聞かせてほしい。

【国際芸術祭推進室担当課長(調整・広報)】
 国際芸術祭あいち2025は、9月13日から順調に開幕を迎えている。来場者数は9月28日までに9万2,000人を超え、開幕から16日間の合計で、前回の国際芸術祭あいち2022と比べると1万人ほど多い人数が来場している。チケットも概算値だが、前回よりも枚数で20パーセント程度、売上金額で30パーセント程度増えていて、順調な滑り出しを迎えている。
 周りからの評価も、マスコミ等で聞く限りでは大変よい評価をもらっていて、新聞、テレビでも多く取り上げてもらっている。この調子で閉幕まで進めていきたい。

【高木ひろし委員】
 大変結構なことだと思う。私もこれから再三会場を訪問し、見たいと思っているが、実は、開幕直前に、気になるニュースを耳にした。それは、大林剛郎氏が会長を務める組織委員会で副会長を務めていた東朋テクノロジー株式会社の富田英之氏が組織委員会の副会長を退任したことである。県としては、富田英之氏の退任についてどのように受け止めているのか聞きたい。

【国際芸術祭推進室担当課長(調整・広報)】
 辞任の理由としては一身上の都合としか聞いておらず、そう受け止めている。

【高木ひろし委員】
 民間の個人の人であるし、非常に重要な人物でもあるので、あえてその理由を詮索することは控えるが、重要な副会長として役割を果たしていた富田英之氏が欠けたことによって、組織委員会の執行体制に対して何か影響があるか懸念するが、その点はどうか。

【国際芸術祭推進室担当課長(調整・広報)】
 組織委員会の規約では、副会長の職務は会長を補佐することであって、会長1人、副会長2人を置くこととしている。副会長は、県民文化局長及び愛知県知事が委嘱する者となっている。今回、副会長のうち1人が辞職したことで、会長、副会長の負担は増えるが、国際芸術祭あいち2025が成功するように、事務局が一丸となって取り組んでいきたい。

【高木ひろし委員】
 この件に関しても要望するが、2019年のあいちトリエンナーレ事件の当時も私は、県民環境委員会にいて、正面に座っている県民生活部長が当時は主幹として本当に苦労していたのを見ているし、知事は非常に原則的な姿勢を貫き、いろいろあったが、最終的には、大きな議論を呼びながらも、芸術祭、トリエンナーレとしては、成功したのではないかと思っている。
 こういった取組が過去にあったことと比較して、今回の芸術祭はまた違った意味で、フール・アル・カシミ芸術監督の選任、その芸術監督を選任した株式会社大林組の大林剛郎組織委員会会長の見識は、まさに灰と薔薇のあいまにという中東の戦乱の中から生まれているものに対して我々がどのようなメッセージを出し得るかという、今の世界情勢とマッチしていると思う。中東のパレスチナをめぐる情勢は非常に緊迫して、多くの人が関心を寄せているが、そういった関心と非常に重なる形で今回の芸術祭の展示とフール・アル・カシミ芸術監督の発信が共鳴していると評価している。ぜひこの効果を高らしめて、11月までの、終結に向けて引き続き努力をしてもらいたいと要望して終わる。

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