【高木ひろし委員】
国際芸術祭あいち2025の話が出たので、私からも国際芸術祭あいち2025について伺う。
私は6年前にもこの県民環境委員会におり、内外の抗議や問題提起、様々な圧力にさらされながら、委員会で議論をしてきた。今回の国際芸術祭あいち2025の監督の人選、テーマの設定は、これまでのあいちトリエンナーレの経験を踏まえた、素晴らしい設定をしたと思っている。
先日、フール・アル・カシミ芸術監督と直接やり取りをし、また、中日新聞に掲載されたフール・アル・カシミ芸術監督のインタビューを読んだが、灰と薔薇のあいまにという戦争と平和、環境と人間といった非常に今日的なテーマを真正面からテーマとしたこと、また、初めての女性かつ外国人の芸術監督であり、中東・アラブ出身の監督を迎えたことは、非常に素晴らしいと思っている。
その理解を広げるために今回の作家のラインナップを見て聞きたいのは、中東地域、アフリカ地域、中南米地域といった非欧米圏のアーティストの作品が多数選ばれていることが一つの大きな特徴だと思うが、どのような経緯や意図を持ってこういった作品群を選んだのか。
【国際芸術祭推進室担当課長(調整・広報)】
アーティストの選考については、灰と薔薇のあいまにのテーマにふさわしいアーティストを、フール・アル・カシミ芸術監督をはじめとするキュレーターチームの協議により選出し、国際芸術祭「あいち」組織委員会の大林剛郎会長の承認の下、選考している。
国際芸術祭あいち2025には61組のアーティストが参加しているが、これを出身地別に見ると、日本を含むアジア地域が31組、中東地域が9組、アフリカ地域が6組、中南米地域が5組、大洋州地域が4組に対して、北米地域が5組、欧州地域が2組の参加となっている。これはフール・アル・カシミ芸術監督が海外出身の著名な芸術監督であり、そのキャリアで築いた世界的なネットワークを生かし、これまで国際芸術祭あいちではアプローチが難しかった国や地域のアーティストにも参加を呼びかけることができたためである。
また、アジア地域、中東地域、アフリカ地域など、いわゆるグローバルサウス出身のアーティストを紹介し、発表する機会を与えることを通じて、来場者に世界は広いことを感じ取ってもらいたいというフール・アル・カシミ芸術監督の思いも反映されている。
【高木ひろし委員】
さらに言えば、フール・アル・カシミ芸術監督が選ばれた時期は、まさにイスラエルによるハマスとの戦闘が勃発したことと前後して選ばれたわけである。また、5月、6月には、イスラエルを中心とした周辺諸国との、あるいはパレスチナ地域との摩擦が、イランとの戦争といった形で飛び火をして、中東地域全体が緊張に包まれている。フール・アル・カシミ芸術監督自身もアラブ首長国連邦出身として、パレスチナにも多くの友人や犠牲者がおり、非常に心を痛めているといっていた。
そんな緊張が高まり戦火が絶えない中、この第三次中東戦争の直後に、アドニスが書いた詩、灰と薔薇のあいまにという、この中東地域における戦禍の中からどんな希望や愛がめぐり、蘇ることができるのかといったテーマは、怖いぐらいアジャストしたタイミングでこの人選を設定したものだと思う。
アラブ首長国連邦をめぐっては、イスラムの人に心を寄せる人やイスラエル、ユダヤ人に心を寄せる人といった、いろいろな立場があり、これは当然宗教的な、歴史的な問題も絡み、意見が異なる、立場が異なる問題が作品の中に表現されることは大いにあり得るし、フール・アル・カシミ芸術監督もパレスチナ出身の芸術家の名前を挙げていた。これがどれぐらい芸術作品として昇華されたものか、以前のあいちトリエンナーレ2019での平和の少女像ではないが、ナショナリズムやヘイト感情などに強烈に刺激を与えるような直截的なものであるのかは実際に見ないと分からないと思うが、今回の開催においても、そういった事情から、作品や開催をめぐっていろいろな意見が寄せられ、混乱が生じる可能性があると思う。こうしたいろいろな議論を含むテーマにアジャストしているだけに、6年前のあいちトリエンナーレ2019の経験も踏まえて、起き得る混乱や内外の摩擦について、事務局としてどのような準備、心構えをしているのかを伺う。
【国際芸術祭推進室長】
現代アートは、同時代を生きるアーティストが、それぞれの社会で今起きている様々な事柄から受けたインスピレーションを多角的な視点から作品として表現するものであり、鑑賞者は作品を通じて世界の多様な今とつながることができ、様々な気づきや考えるきっかけを得ることができる。
国際芸術祭あいち2025では、中東地域ゆかりのアーティストをはじめ、ふだんなじみの薄い地域のアーティストや先住民族にルーツを持つアーティストなど、多様な背景を持つアーティストが参加し、テーマである灰と薔薇のあいまにを踏まえた作品を展示する。
アーティストの中には、世界情勢や個別の歴史的・文化的事象を背景とした作品を制作するケースもあると思う。しかしながら、今回、フール・アル・カシミ芸術監督が掲げたテーマは、人間と自然や環境との関係について、破壊や絶望をイメージさせる灰、繁栄や希望をイメージさせる薔薇の、灰か薔薇かといった二項対立的な考え方から離れて、アートを通じてそのあいまにある考え方を探っていく趣旨である。
芸術祭として目指す方向は、個々の事象や地域に焦点を当てることではなく、アーティストの表現を尊重するとともに、このテーマに応答した新たな視点や可能性を見いだし、分断を越えた未来につなげていく展示を行うことであり、それにより、芸術祭が新たな角度から世界を捉えるよい機会となり、平和を求める連帯の契機となることだと考えている。
過去の記者会見や取材などでも、フール・アル・カシミ芸術監督は同様のことを発言しており、現代アートの中で起き得る意見の相違や衝突に対しては、一つ一つ誠実に答えていきたいと述べている。事務局においても、そうした意図を十分に共有し、大林剛郎組織委員会会長やフール・アル・カシミ芸術監督、キュレーターチームと相談しながら開催準備を進めていく。
【高木ひろし委員】
私自身、6年前のあいちトリエンナーレの騒動について、自分自身反省しなければいけないと思っているのは、当時の津田大介監督が情の時代というテーマを発表した。後から見ると、これは津田大介監督が考えている当時のあいちトリエンナーレ2019の作品の選出の意図や背景、時代認識が見事に表現されているものだった。ところが、我々は情の時代というテーマに描かれたコンセプトについて、委員会でそれを読み込んで議論することもなく、また、監督と我々が直接対話する機会も一度もなく、あの騒動に入ってしまい、これを企画した当時の津田大介監督と我々との間のコミュニケーションが全くなかった点が、本当に自分自身反省するところである。
今回は、フール・アル・カシミ芸術監督の選考の過程から、テーマを発表した際に、監督自身の口から意図を我々の前でも直接説明してもらい、質疑に答えてもらう機会があり、このプロセスが重要だと思う。我々はそういった形で、フール・アル・カシミ芸術監督と一緒にこの国際芸術祭あいち2025が成功するように、もちろん県職員ともしっかりとコミュニケーションを取りながら、全体として成功するように持っていきたいので、よろしくお願いする。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
【高木ひろし委員】
今の授業料無償化に関連して、私からも聞きたい。
6,000億円を新たに投じて、大阪府で既に実現されているような所得制限のない私立学校の授業料の完全公的負担は、もちろん前向きに評価すべきだと思う。
ただ、これはこれまでの実質的に公私の格差を是正する意味で、所得によって平均的な授業料等の差額を埋めてきた考え方とは全く違う支援のため、いろいろなところに影響を与えると思う。
その一つは、私立学校は一体どうあるべきかという話に関わる。要するに、私立学校の収入の大部分は入学納付金や、授業料といった保護者の負担と、県が助成している経常費による負担である。この2本柱で経営が成り立っていると理解しているが、その授業料は、私立学校がそれぞれの学校の経営事情に応じて、学校選択の市場原理も見ながら学校側が決めている。30万円や50万円と、学校によって違う。平均額は40数万円だと思うため、今回の国の制度においても45万7,000円という金額は、ほぼ愛知県の平均授業料に近いので、本県においては顕著な影響は受けないかもしれないが、学校によってはこれが30万円台のところもあれば、50万円、60万円のところもある。それが45万7,000円までは全額公費で授業料は負担する。所得に関係ないとした場合に、これは私立学校経営者に対しては意地の悪い見方かもしれないが、ただで国庫が負担してもらえるならば、高めに設定しても保護者の懐には響かないため、授業料をこの45万7,000円に張りついてしまうような改定が行われるおそれがある。学校の経営から理由があって設定されたというよりは、制度を活用する意味でその授業料を変更する、45万7,000円に張りつくことが起きはしないか。
また、先ほど入学金の話も出たが、幾らを授業料でもらい、幾らを入学金でもらうか、あるいは設備充実のための費用とか、授業料以外の費用を私立学校は何十万円も保護者からもらっており、この比率をどうするかも私立学校経営者が自分で判断するわけである。
ところが、今回の制度は公費の入る基準として、45万7,000円のラインを引いて、これが平均的な私立学校の授業料のあるべき水準だと示しているわけで、この問題が私立学校の経営にどのような影響を与えて、今後の学費の水準に影響を与えるのではないかと懸念している。こうした根拠のない便乗値上げの動向が出てきた場合に、私学振興室は、私立学校に対してどのように指導、対応しようとしているのか。
【私学振興室長】
本年3月4日の衆議院予算委員会において、石破茂総理は便乗値上げが行われない仕組みをきちんと確保しなければならないと答弁しており、国においても問題意識を持って取り組んでいくものと思われる。
また、令和7年6月定例議会において県民文化局長が答弁したとおり、来年度の制度拡充に向けて十分考慮すべき事項について、全国知事会で意見を取りまとめ、文部科学大臣に緊急提言を行った。この緊急提言の中で、私立高校等の自主性を妨げることなく、合理性のない値上げを抑える適切な仕組みを検討するよう要望した。
こういった状況のため、本県としては、まずは国の動向を注視していきたい。
【高木ひろし委員】
もう一つの大きな論点としては、公立高校と私立高校との関係である。これまでは、おおむね2対1の形で入学者の受入れ割合を決めて、それぞれの受入れ希望者全員が高校に行けるように制度を進めてきたが、私立学校における授業料負担がゼロになると、必然的に私立高校のほうが設備も立派で、便利な場所にもあるといろいろなメリットが目立ち、私立高校を選択する保護者や生徒が増えることは明らかだと思う。
先日、大阪府で話を聞いてきたが、大阪府は高校の授業料無償化を去年から実施しており、それによって何が起きたかというと、大阪府立高校159校のうち半数である70校が定員割れになってしまった。これはひどい状態で、しかも大阪府の場合、より極端なのは、募集生徒が集まらない公立学校が定員割れを3年続けると、自動的に廃校になってしまうことが条例で決まっている。公立高校は、一生懸命、魅力化などいろいろと取り組んでいるが、去年から授業料負担を、特に大阪府は限度額を63万円に設定しているため、私立高校に通うメリットがものすごく大きいわけである。これによって、公立高校、私立高校の今までのバランスが甚だしく変わることが予想される。
大阪府は、例えば、もともと授業料無償化を提唱した橋下徹元大阪府知事は、公立学校であろうが、私立学校であろうが、自然淘汰の原理のように、人気のないところは潰れても仕方がない、だから公立高校が減っていくのはある意味当然だといった、自らが設置者である大阪府立高校の責任者としてあるまじき発想だと私は思うが、そんな発想もありの状態が大阪府では起きている。
本県においても、高等学校等就学支援金の充実化に伴い、公立高校における定員割れの事態がここ数年発生しているが、2010年度から高等学校等就学支援金制度ができて以降、この公立高校及び私立高校の定員割れはどのように推移してきたのか。
【私学振興室長】
高等学校等就学支援金制度が創設され、国公立高校の授業料が完全無償化された2010年度の欠員数は、国公立高校46人、私立高校2,327人であり、私立高校欠員数は、その前年度の1,727人から600人の増となり、その後も、私立高校の欠員数は2,000人程度で推移することとなった。
2010年度当時の制度は、国公立高校については完全無償化、私立高校については、年収約350万円未満世帯が実質無償化され、授業料に係る保護者負担額に大きな差があった。
こうした中、2020年度に私立高校等の実質無償化の対象を年収約720万円未満世帯まで拡充したところ、私立高校の欠員数は大幅に減少した。具体的には、制度拡充した翌年度、2021年度の欠員数は、国公立高校2,669人、私立高校181人となっている。
なお、今年度の欠員数は、速報値であるが、国公立高校2,368人、私立高校363人となっている。
【高木ひろし委員】
今、示されたように、これは公立高校、私立高校、双方の協力によって、希望する全ての生徒を高校に迎え入れる趣旨からして、ただ無償の額を増やすだけでは済まない問題がいろいろ出てくる。これは来年度予算にも大きく関わることで、国の制度設計の詳細を見ながら、今年一年かけてこの委員会でも十分議論したいので、とば口として今日は少し質問したが、今後とも、しっかり議論していくことを約束したい。
