令和6年9月定例会(第5号) 本文 2024-09-30

◯九十三番(高木ひろし君)
 通告をいたしました三つのテーマにつきまして、順次質問をしてまいります。
 まず、最初のテーマは、木曽川水系の水資源問題についてであります。
 国土交通省と水資源機構は、本年七月に、木曽川水系連絡導水路事業の検証に係る検討結果報告書を公表いたしました。そして、二〇〇九年の事業の凍結以来、十四年にわたって検証作業が続いてきたこの木曽川水系の連絡導水路事業が、いよいよ継続、実施へと動き出そうとしております。
 この事業はもともと一九九五年に運用を開始した長良川河口堰、二〇〇八年に完成した徳山ダムなどの木曽川水系における水資源開発計画の一環として、徳山ダム計画に愛知県と名古屋市の新規利水権、合計毎秒四トンを設定したことに起因するものであります。揖斐川上流の徳山ダムにためた水を愛知県と名古屋市が水道用水や工業用水として利用するために、一部長良川を経由して、木曽川にある取水施設につながる直径四メートル、四十三キロに及ぶトンネルを建設しようとするものであります。この検証が始まった十五年前は、その事業費は八百九十億円とされていました。それが、今回の検討報告書とともに公表された事業費では、二・五倍の二千二百七十億円に上るということが明らかになりました。
 大村知事は、二〇一一年に知事に初当選されたときの環境マニフェストでこの木曽川水系連絡導水路事業の見直しを掲げておられました。以後の知事答弁においても、この導水路事業は約八百九十億円を要する大規模事業でありますので、その在り方、進め方については不断の検証が必要として、事業検証において、代案を含め、事業の必要性、事業効果やコスト、環境への影響、実現性などの面から、予断を持たず、しっかりと検討していただくよう国に求めていくという立場を繰り返し述べておられます。
 その検証作業がこのたび終結をしまして、新たな事業費も示されたわけでありますので、いよいよ愛知県としてこの事業に係る基本的判断を明らかにする段階を迎えていると思います。  この導水路事業が今日までなかなか前に進まず、こんなに長い時間を要した背景を改めて振り返ってみる必要があると思います。高度成長時代が終わり、一九九〇年代にはダムなどの巨大公共事業に対して、環境面や財政面から批判の声が高まり、実際に多くのダム計画が見直され、中止をされました。本県においても二〇〇〇年に矢作川河口堰の計画が中止をされております。この地域において最も大きな議論の的となったのは長良川河口堰と徳山ダム。これらは結局完成はしたものの、その意味や運用をめぐっての議論は収束することがありませんでした。この木曽川水系連絡導水路は未着工ではありましたが、この徳山ダムの不可分の最後のワンピースであったために、議論は導水路事業単体では論じることができず、木曽川水系水資源の在り方そのものまで遡らざるを得なかったのだと思います。
 その意味で、この導水路事業に関わる疑問点を改めて二つ指摘をしたいと思います。
 第一点は、水道事業にとっての問題です。今日の愛知県にとって、毎秒二・三トンという徳山ダムからの新規利水を確保する必要がどれほどの投資に見合うものであるのか。これに対する投資が今後の県の水道事業にどのように影響してくるのかという問題であります。
 二〇〇四年に改訂された木曽川水系水資源開発基本計画、いわゆるフルプラン。ここで示されていた二〇一五年時点での水需要の予測は実績とは大きくかけ離れた過大なものであったということは、今日では議論の余地がありません。
 公共事業の妥当性は費用対便益で評価されますが、この木曽川水系連絡導水路事業の事業費全体が二・五倍にもなったことから、愛知県の利水分毎秒二・三トンに対する県水道の負担も、これまでの百八十六億円から、二・五倍の四百七十億円に増えるであろうことが推測され、はるかに費用が便益を上回ることになります。
 徳山ダムそのものの建設費についても、県は利水者として既に二百七十億円を負担していることを考え合わせると、今回の導水路分を合わせれば明らかに過剰投資となって、今後の県水道の水道料金を押し上げる要因になることは間違いありません。
 第二の問題は、導水路事業のもう一つの目的とされる異常渇水時に木曽川に供給される毎秒二十トンの緊急水という問題であります。
 国が行ってきた検証方法は、既に完成している徳山ダムを前提にして、導水路事業にかかる経費と、ため池とかダムのかさ上げなど、様々な方法によって異常渇水時の緊急水分を確保した場合の事業費、いわゆる身代わり事業費といいますが、これを比較して、導水路事業のほうが有利だという結論を導いているものであって、徳山ダムからの導水路事業そのものの必要性や合理性を証明するものとはなっておりません。
 ダムなどの巨大公共事業を見直す議論の高まりの中で、一九九七年には河川法の改正が行われ、従来の治水や利水に加えて、河川環境の整備と保全が目的に加えられました。
 徳山ダムについても、一九七三年のダム計画当初は毎秒十五トンの新規利水計画が主要な目的であったはずでしたが、その後、岐阜県や名古屋市からは水利権の返上が相次ぎ、二〇〇四年の時点では利水分は毎秒六・六トンまで減少した結果、徳山ダムの巨大な貯水量の使い道がなくなってしまいました。
 そこで、木曽川導水路の主目的に浮上したのがこの異常渇水時の緊急水補給というものでありました。この異常渇水時とは何か。これは一九九四年の平六渇水と呼ばれるような大渇水が起きたときを想定され、そして、そのあくまで緊急水の目的というのは、木曽川の正常の流量を確保することによって、ヤマトシジミ等の生態系が絶滅から守られるという河川環境保全のためのものでありまして、利水分として使えるものではないということに注意が必要です。また、そもそもこうした別水系のダムから巨大な公共事業によって緊急水を補給することが、本来の長良川や木曽川の河川生態系について本当にプラスとなるのかどうか、環境面からの検討は尽くされてはいません。
 一九九四年のいわゆる平六渇水で厳しい断水を余儀なくされた愛知用水地域の苦い経験から、徳山ダムができてしまっている以上、何十年に一度というような異常渇水に備えて、徳山ダムの水を利用できるようにしたほうがよいと繰り返し言われてきました。しかし、実際には平六渇水の後、愛知用水の新たな水源として味噌川ダムが加わり、また、長良川河口堰で確保していた上水に加えて、使い道がなくなった工業用水を上水用に転用して知多地域に供給されるようになったことなどで、断水のリスクは三十年前とは大幅に改善をされていると言えます。  これからの木曽川に必要なのは、これ以上ダムや導水路などハードな巨大施設に頼るのではなく、既存のダム運用の見直しや、農業用水など既存水利間の調整によって、異常渇水のときにも対応できるような柔軟なシステムをつくり上げ、上流の森林保全などを含めた流域全体の協力で進める、環境重視の河川対策への改革ではないでしょうか。
 導水路事業の今、大きな分岐点に際して、これまでの長い経過を踏まえ、今後の河川行政や水資源問題の在り方を導いていくような提言をすることこそ、県に求めたいと思っております。
 そこで質問です。
 まず、企業庁長に伺います。人口減少等によって給水量が今後減少し、高度経済成長期に建設した水道インフラがどんどんと老朽化の時期を迎えていく中で、新規利水のためにさらにこれだけ巨額の投資を行うことについて、水道事業者としてどのように経営判断をしているのか、お聞かせをいただきたいと思います。
 さらに県当局に伺います。国による検証結果を受けて、木曽川水系の水資源対策の最後のピースとされる導水路事業がいよいよ進められようとしていることに対してどのように県は考えているのか、お聞かせをください。
 二つ目のテーマであります。
 旧優生保護法の不妊手術等の被害者の救済について。
 本年七月三日、最高裁の大法廷は、旧優生保護法によって強制的に不妊手術を受けた被害者ら原告の主張を全面的に認めて、国に損害賠償を命じる判決を言い渡しました。判決では、一九四八年に成立した優生保護法は、その立法当時から個人の尊厳を保障する憲法十三条、法の下の平等を定めた十四条に違反しており、優生政策を推進し、重大な人権侵害を生じさせた国の加害責任の重さに照らせば、除斥期間の経過を理由に国が損害賠償責任を免れ得ることは、著しく正義と公正の理念に反し、到底容認することはできないと厳しく断じました。
 この最高裁判決を受けて、七月十七日には、岸田首相は、原告の障害者らを官邸に招き、政府を代表して丁寧に謝罪を行いました。そして、被害の全面的な補償のための新たな立法と、障害者差別の解消、優生思想の払拭に向けた国の動きは現在進行中であります。
 優生保護法は、この前文において、優生上の見地から不良な子孫の出生を防止することを目的とし、精神障害や知的障害などの障害のある人に対し、都道府県に設けられた優生保護審査会の決定によって、本人の同意なくても生殖を不能とするような手術を行ってきたもので、一九四八年に議員立法により国会で可決されてから、九六年に母体保護法に改正されるまでの半世紀にわたって、統計上明らかになっているだけでも約二万五千人が、その優生手術の対象となってきました。
 しかし、その二万五千人の方々を特定できるはずの行政資料は、本県を含む二十八都道府県で既に廃棄済みとされてしまっていることから、被害者への補償がどこまで行き届くことができるのか、多くの課題を残しております。
 私は六年前、二〇一八年の三月にこの問題を県議会で取り上げました。本人同意なしの優生手術が行われた集計のある二百五十五人、特に愛知県優生保護審査会の個別の審査記録が見つかった六十人の方々については、個人情報保護を徹底した上で、御本人への情報提供や現況の把握を要請したところですが、そのときの県の答弁は、国の方針が示されたら調査を行うという受け身の姿勢にとどまりました。そして、今日までこの調査は少しも進むことなく、一時金の支給対象についても、本人からの申出を促すような県広報を行うにとどまってまいりました。
 今回の最高裁判決を受けて、国と一体となってこの優生手術を実行してきた県として、主体的な責任を明らかにすべきときが来ていると思います。去る九月六日には、優生保護法裁判原告を支援する会や、障害者団体などから優生保護法被害に対する要望書が知事宛てに提出され、十八日の定例記者会見においては、知事から、知事として、政治家として一連の経過は極めて遺憾であると思う。大変申し訳ないことだったと心からおわびをすると謝罪の表明がありました。
 本日の愛知県議会にも、原告である尾上敬子さんや一孝さんの御夫妻を含めて、障害者の方々が大勢傍聴に来ていただいております。
 以下、その要望書の主要な部分について、質問をさせていただきます。
 まず、第一に、優生保護法に基づいて県が行った措置がどのような被害を障害者にもたらしたのか、具体的に調査、検証することが求められています。特に、県が直接運営していた病院や保健所、障害者施設等において、当時の県の職員や医師を含めて、関与した可能性のある人に対して聞き取り調査をすべきだと思います。県の考えをお聞かせください。
 第二に、この問題の性質上、まだ声を上げられていない被害者の方は相当広範に存在していると考えられます。こうした方々が補償から取り残されることがないように、個別通知を行う必要がありますが、県はこれにどのように取り組んでいくのか、お答えください。
 第三に、旧優生保護法の根本に横たわっていた優生思想という考え方は、学校教育を通じても、国民の中に広く浸透させられてきました。私自身が高校生だった頃、県立高校で当時採用されていた高等保健体育の教科書には次のような記述がありました。優生結婚とは、遺伝学的に見て素質の健全な者同士の結婚を勧め、精神分裂病、先天性聾などのような遺伝性疾患の素質が結婚によって現れるのを防ぐことである。したがって、優生結婚をするには自分並びに相手の家系を調査し、遺伝病患者の有無を確かめなければならないと。このように教科書に書いてあったわけであります。
 さすがに現在ではこのように露骨な優生思想は教科書から姿を消しましたが、障害者は子供を産まないほうがいい、障害者は生きていく価値がないというような、障害者を根本的に差別するような考え方がいまだに根強く残っていることは非常に残念であります。学校教育においてこうした優生思想を克服する人権の立場から、結婚や出産に関する教育をどのように行っていくのか、教育委員会の考えをお聞かせください。
 最後、三点目の質問です。
 浮体式洋上風力発電について。
 海面に巨大な風車を浮かべて発電を行う浮体式洋上風力発電の国による実証事業が、本県の田原市、豊橋市の沖合で行われることが六月に発表されました。
 地球温暖化防止戦略の上で、再生可能エネルギーの比率を極限まで高めていくことが大きな課題となっておりますが、国土が狭く四方を海に囲まれた我が国にとって、洋上風力はその再生可能エネルギーの主力に成長することが期待されております。
 これまでは主に秋田県や北海道の遠浅の沿岸で設置されてきた、海底に固定する着床式というものに比べて、百メートルから百五十メートルという、より深い海域でフロートによって浮かべる浮体式の風車は日本の近海に適しているとされます。今回はそのテストケースとして、秋田県南部沖とともに、本県の渥美半島沖の二か所の海域が設定されたものであります。
 そして、その事業者として選ばれたのは、中部電力グループのシーテックや日立造船などの五社で構成するコンソーシアムで、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金から資金援助を受けて、まずは風の状況調査や漁業への影響などに関する環境アセスメントを実施した上で、二〇二九年度から風車一基を稼働させる計画であります。
 その風車は、羽根──ブレードですね──ブレードの直径が二百五十メートルという巨大なものでありまして、最大出力も一万五千キロワットで、一般家庭一万七千世帯分の消費電力を賄えるという、実現すれば、浮体式としては、その大きさも出力も世界最大級の洋上風力発電となる、非常にチャレンジングな実証実験であります。
 国は、この浮体式を含めた風力発電を、現在の二十万キロワットから、二〇四〇年までに三千万から四千五百万キロワットにまで飛躍的に増やすことを目標としており、世界的にも、洋上風力が現在の二十三ギガワットから、二〇四〇年には二十四倍の五百六十二ギガワットにまで増えると予想されています。
 こうした風力発電に関わる巨大市場が見込まれる中で、風力発電産業という面では、日本のメーカーは既に撤退をしてしまっておりまして、現在は欧米の三大メーカーと中国メーカーにほぼ独占されているというのが現状であります。この実証実験が成功すれば、その次にはもっと大規模な風力発電の需要が発生するわけでありまして、こうしたサプライチェーンの構築や専門人材の養成などが求められてきます。行政として、こうした長期的な視点に立った支援が必要だと考えます。
 そこで質問します。
 今回、浮体式洋上風力発電の実証実験が、本県の渥美半島沖において取り組まれることになったことについて、その意義と課題をどのように捉えているのか。また、産業政策も含めて、今後の巨大化が予想される風力発電事業をどのように推進しようとお考えなのか、お聞かせをいただきたいと思います。
 以上をもって私の壇上からの質問を終わります。各担当局長、県の誠実な答弁を期待して終わります。(拍手)

◯企業庁長(坂田一亮君)
 木曽川水系水資源対策についてのお尋ねのうち、水道事業の経営判断についてお答えをいたします。
 県営水道においては、老朽化対策や地震防災対策といった施設の強靱化、また、渇水など有事においても安定的な水の供給が可能となる水源の確保など様々な課題がございます。
 木曽川水系では、これまで度々、渇水により県民生活と産業活動は大きな影響を受けてきておりまして、こうしたリスクに対しても安定的な水供給が可能な水源を確保していくことは大変重要でございます。御質問の木曽川水系連絡導水路により、徳山ダムに確保している水道用水を有効に活用し、水道の安定供給につなげてまいりたいと考えております。
 県といたしましては、持続的、安定的な水道事業を進めていくために、経費の削減はもちろん、官民連携、デジタル技術の活用などの新たな取組を通じた経営の効率化を図りながら、水道施設の強靱化、安定的な水源の確保に努めてまいります。
 また、受水市町との連携による施設の共同化、管理の一体化などの水道の広域化についても検討を進め、水道事業の経営基盤強化、持続可能な水道システムの構築を図り、安全・安心な水道水の安定的な供給に取り組んでまいります。

◯建設局長(西川武宏君)
 木曽川水系連絡導水路事業に対する考え方についてであります。
 国のダム検証における点検の結果、事業費が当初計画の八百九十億円から大幅に増加していることから、県といたしましては、コストの縮減、県の財政的な負担の軽減を図ることなどを、国及び水資源機構に働きかけてまいります。
 加えて、本事業が円滑に進み、早期に効果を発揮するよう、利水関係者などの声をしっかりと伝えてまいります。
 また、事業の必要性について、国は、木曽川水系における気候変動に伴う大規模渇水、地震、津波などの自然災害や施設の老朽化による水供給の遮断などのリスクを軽減するためには、水供給の代替機能を確保していくことが重要であるとしています。
 県といたしましては、こうしたリスクに対して、木曽川水系連絡導水路の建設によって、県民の暮らしを支える必要最低限の水をしっかりと確保してまいります。
 さらに、国は三県一市や関係機関と協力し、木曽川水系連絡導水路と木曽川ダム群を連携させ、ダムの利水容量と洪水調節容量を一体的かつ弾力的に活用するハイブリッドダム運用を行い、治水機能を強化するとともに、カーボンニュートラルに資する水力発電の増強に対応していきたいとしております。
 こうした運用を早期に実現することは、本県にとっても大変有益であることから、国及び水資源機構などと緊密に連携し、一層の社会基盤の強化に取り組んでまいります。

◯保健医療局長(長谷川勢子君)
 旧優生保護法に基づく強制不妊手術に関与した可能性のある人への聞き取り調査についてお答えします。
 旧優生保護法に基づく強制不妊手術については、本年七月三日に最高裁判決において、憲法違反であり立法行為に関する国の責任は極めて重大として国に賠償が命じられたところです。
 当時行われた強制不妊手術につきましては、法律に基づいて行われていたものとはいえ、人権上の問題があり、県内でも二百五十人の方に手術が行われていた事実について、極めて遺憾であると考えております。
 今般、国においては、超党派議員のプロジェクトチームを立ち上げ、新たな補償の仕組みの創設に向けた法律案の検討がされているところであり、その中で優生手術等に関する調査、検証を国として行う見込みであります。
 そのため、当時の県職員を含め、関与した可能性のある人に対する聞き取り調査につきましては、国の動向を注視し、国から調査・検証等に関する方針が示された場合には、その内容に応じて対応してまいりたいと考えております。
 次に、旧優生保護法に基づく手術を受けた方への個別通知についてお答えします。
 優生手術を受けた方の置かれている状況は様々であり、家族には一切知らせていない場合や、当時を思い出したくない場合も想定されることから、現行の一時金支給法においては、支給対象になり得る旨を個別に通知することは慎重になるべきとされておりました。
 そのため、本県では、一時金の申請手続等について、広報あいちへの掲載や、医療機関、福祉施設へのチラシの配布などにより周知、広報を行ってまいりました。
 現在、国において新たな補償に係る法整備が進められておりますが、優生手術を受けた方の配偶者等や旧優生保護法に基づく、人工妊娠中絶を受けた方が対象として拡大される見込みであり、こうした方々を含め、広く補償の仕組みが届くことが重要であります。
 県といたしましては、対象の方が補償から取り残されることのないよう、引き続き様々な媒体を用い医療機関等への周知、広報にしっかり取り組むとともに、個別の方への働きかけについて、今後の国の対応を踏まえ、適時、適切に対応してまいります。
 失礼いたしました。先ほど、旧優生保護に基づく強制不妊手術に関する可能性のある人への聞き取り調査についてお答えしたところで、答弁として、県内でも二百五十五人のところを二百五十と言っておりました。訂正させていただきます。二百五十五名でございます。おわび申し上げます。

◯教育長(飯田靖君)
 人権の立場からの結婚や出産に関する教育についてお答えをいたします。
 一九五六年に当時の文部省が改訂をした高等学校学習指導要領には、保健体育科と家庭科の学習内容として、旧優生保護法に基づく優生を取り扱うことが記載をされておりました。
 これに基づき、当時の高校の保健体育の教科書には、心身の障害は遺伝をするとの考えから、本人の同意なしに不妊手術を行うことや、障害や血統を結婚の一条件とすることは、科学的な知見に基づくものと記載をされ、愛知県においても、こうした教育が行われておりました。
 その後、一九七八年の学習指導要領から優生についての記載がなくなり、教科書にも、本人の同意に基づかない不妊手術や血統を重んじる結婚などの記載はなくなっております。
 県教育委員会では、今回の最高裁判所の判決を受け、県立学校の教員でつくる人権に関する研究会において、旧優生保護法下での結婚や出産に係る人権侵害を来年度の研究テーマの一つとし、このような誤りを二度と繰り返してはならないという思いが、子供たちに伝わる授業実践を行ってまいります。
 その成果を全ての県立学校に還元をして、授業等で旧優生保護法下での人権侵害を取り上げ、愛知の子供たちの人権意識を一層高めるよう、取り組んでまいります。

◯経済産業局長(矢野剛史君)
 浮体式洋上風力発電についてお答えをいたします。
 本県は、温室効果ガス排出量が全国最多レベルであり、二〇三〇年度に、二〇一三年度比で四六%削減する目標を掲げる中、再生可能エネルギー主力電源化の切り札である洋上風力発電の導入は、喫緊の課題であります。
 こうした中、田原市・豊橋市沖での実証実験は、水深が深い海域でも導入が可能な浮体式であり、今後日本全国で洋上風力が行われる際の重要な試金石となると考えております。
 一方で、この海域は良好な漁場であることから、漁業関係者の理解を得ながら丁寧に事業を進めていく必要がございます。県としましても、実証実験の実施者と情報共有を密にして、関係者と十分調整を行いながら、実証の目的であります国際競争力のあるコスト水準での商用化技術の確立のために積極的に協力をしてまいります。
 今後の洋上風力産業について、国では産業界の目標として国内調達比率を二〇四〇年までに六〇%とすることとしています。この目標を基に、国内企業のサプライチェーンへの参入が進んでおりますが、本県としましても洋上風力発電機用シャフトの製造企業や、風車施工用の高荷重繊維つりひも製造企業に対しまして、産業立地や研究開発の補助金を交付するなど、個別企業への支援を開始しているところでございます。
 今後、こうした産業面での支援の強化をはじめ、本県での洋上風力事業における様々な効果の把握や理解促進、機運醸成を図る取組を検討し、本県としても本腰を入れて挑戦をしてまいります。

◯九十三番(高木ひろし君)
 それでは、優生手術の被害の救済について、要望と再質問をさせていただきます。
 まずは、知事がこの問題に対して記者会見の場で謝罪の意を示されたことについてはまず評価をいたしますが、これはぜひ、今日も傍聴にお見えの被害者の方々と直接お会いになって、その実情に触れて、謝罪をお伝えいただけるようにお願いをしておきます。
 その知事の謝罪を実のあるものにするためにも、国の指示を待つという受け身の態度ではなくて、過去の被害実態との調査と検証を県が主体的に行うという姿勢が求められているのではないでしょうか。書類が存在していないなら、なおさらのこと、当時の状況を知り得る関係者から実態を聞き取るということは欠かせないプロセスです。愛知県優生保護審査会には、県の衛生部長を中心に、県警察本部の防犯部長、県の城山病院の病院長などが入っていましたし、県の障害者福祉施設や、優生思想の普及に加担した学校教育などを含めて、県の関係者は多岐にわたって、検証のための一元的なプロジェクトチームも必要になってくると思われます。
 被害者、原告である尾上敬子さんと一孝さんは、御夫婦共々とも愛知県立名古屋聾学校の御出身であります。その聾学校の方々から聞いたお話ですが、他県の聾学校での話として、校長が生徒に向かって、結婚するなら子供ができないような手術を必ず受けなさい。そうしたら私が仲人になってあげようと親切めかして訓辞をしていたというのであります。障害のある人々が長年受けてきた、こうした受難と差別の具体例は、枚挙にいとまがありません。
 特に私の問題意識の中にあるのは、愛知県の直轄の組織として優生手術の具体例があったことが疑われる愛知県心身障害者コロニーであります。これは一九六八年に設置され、最大時には数百人もの様々な障害を持つ児童や人々が、生活や療育や医療を受ける県内最大の施設でありました。ここで働いたことのある元職員の方からは、不妊手術を受けさせられた複数の事例を実際に見聞きしたという具体的な証言も私は得ております。
 この障害者コロニーは二〇〇七年以降、地域移行などによって再編され、現在の部局は福祉局の所管となっているようですが、このコロニーに関わっていた県職員の退職者や医師などからでも、まずは聞き取り調査を行うべきではないか、少なくともその準備を始めるべきではないか、これを再度お尋ねしたいと思います。

◯福祉局長(加藤明君)
 心身障害者コロニーに関わっていた職員に対する聞き取り調査についてお答えいたします。
 福祉局では、二〇一八年に、心身の発達に障害のある方々の総合的な施設であった当時の心身障害者コロニー、現在の医療療育総合センターを対象に、優生手術に関する書類の保管状況を調査し、該当する簿冊がなかったことを確認しているところです。
 聞き取り調査につきましては、国の動向を注視し、今後、国から調査・検証等に関する方針が示された場合に備えつつ、一九六八年の設立以降、県内の障害者施設の中核であった心身障害者コロニーにおいても、その内容に応じて適切に対応してまいります。


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