令和6年県民環境委員会 本文 2024-06-25

【高木ひろし委員】
 環境局の今年度の最大テーマの一つであろうあいち地球温暖化防止戦略2030(改定版)について、これまであまり議論されてこなかったと思う視点で二、三点質問する。
 一昨年の12月に大幅に改定したあいち地球温暖化防止戦略2030(改定版)であるが、これに改めて目を通すと、この戦略がいかに広い分野で、産業も含めた県民生活のありようを含めて、愛知という地域社会に非常に大きな変化を求めていることを改めて感じる。例えば、新たに戦略の基礎として2013年度比での本県のCO2の排出量マイナス46パーセントという目標が設定されたが、これは2013年から目標年度の2030年までの期間のちょうど中間年になる2021年度段階の実績から言うと、2021年度段階では、いろいろな施策を動員して取り組んだ結果が2013年度比でマイナス15パーセントをやっと達成した状況であった。それを、残りの9年でマイナス46パーセントにする、つまりこれまで削減した量の3倍を削減しようという、本当に異次元のという言葉を使いたくなるような目標である。
 そして、これには家庭部門などいろいろな部門別に目標値が定められているが、この戦略の視点に図らずもきちんと書いてあるとおり、先日の所管事項説明会でも言ったように、温室効果ガスを排出している9割以上はエネルギー生産が起源である。要するに、エネルギーを生み出す、熱や動力を引き出すために、化石燃料を燃やしてCO2を出している。言葉を変えて言えば、温室効果ガスの排出を削減することは、エネルギー問題そのものである。
 そういった観点で、端的に言えば、使うエネルギーを減らすという省エネルギー、それから化石燃料から再生可能エネルギーに大胆にシフトして再生可能エネルギーの可能性を極大化すること、それともう一つはこれからの技術革新の課題ではあるが、エネルギーをためる、いわゆる蓄エネルギー、この三つがエネルギー問題としての地球温暖化問題の三テーマだと言える。
 そこで、再生可能エネルギーの中でも、これまで本委員会を含めてあまり議論してきていないと私が思っている小水力発電に着目して伺う。
 資源エネルギー庁の様々なデータには、都道府県別でどの県にどのような再生可能エネルギーのポテンシャルがあるのか調査したデータがあり、これによると、愛知県の場合は太平洋側に面していることから、まずは太陽光発電に非常に適した立地である。現に、住宅用の太陽光発電設置基数はずっと全国一を誇っており、可能性がくみ尽くされているとまでは言わないが、かなり取り組まれてきたテーマである。
 もう一つが水力である。矢作川、豊川、県内を流れている川ではないが木曽川も含めて、非常に大きな河川に恵まれ、それを農業用水路として愛知県の全域に行き渡るように水路が整備されて農業生産物を生み出している立地から、大きなダムを造って行う水力とは別に、中小水力、特に農業水路を使った水力発電に大きな可能性があると、資源エネルギー庁も言っている。
 そのため、今まで農林水産委員会では時々議論されているが、当委員会ではあまり議論されていない。そこで、本県における小水力発電の現状、県内における設置基数や、今後小水力発電をさらに普及させていくための県の取組について伺う。

【地球温暖化対策課担当課長(温暖化対策)】
 本県における発電出力1,000キロワット未満の小水力発電については、これまで電気事業者により設置されるとともに、最近では県とその他の団体の協力により農業水利施設や水道関係施設等に設置されてきた。主なものとして、中部電力株式会社によるものが8か所で4,780キロワット、農業水利施設に係るものが15か所で2,030キロワット、水道関係施設に係るものが8か所で312キロワットの小水力発電が稼働している。
 また、本県においては、2021年にあいちカーボンニュートラル戦略会議を設置するとともに、幅広い事業、企画アイデアを募集し、その第1号プロジェクトとして矢作川・豊川カーボンニュートラルプロジェクトを選定した。このプロジェクトでは、建設局等を中心に、流域における水循環をキーワードとして、流域の関係者が一体となりカーボンニュートラルの実現を目指す取組を進めている。その中で、小水力発電に関しては、豊田市内の木瀬ダムにおいて、既設の放流管を活用しその設置に向けた検討を進めている。
 また、同プロジェクトでは、水インフラ空間を活用し、再生可能エネルギーの創出等に関して実証実験を行う意欲がある法人からの提案を幅広く募集するサウンディング型市場調査も新たな取組として行っている。
 本県としては、引き続き小水力発電をはじめとする再生可能エネルギーのさらなる導入拡大に向け、関係部局等とも連携して進めていきたい。

【高木ひろし委員】
 それなりに取組を行っていることはよく分かった。この戦略の中で愛知県における再生可能エネルギーの導入実績及び2030年度における予測導入量という表を見ると、今、農業や農業外の水路を含めて7,000キロワット弱と紹介があったが、目標ではない導入予測量として小水力発電に関して挙げられた数字は僅か1万キロワットである。現在、既に7,000キロワットくらいつくっているのに、もうほぼその直後の2030年の目標で、あと二、三割増やせば達成できるような数字になっている。これは、再生可能エネルギーの導入目標としての予測値であるということは、結局、今のこの傾向が続けば、自然に2030年度までにこれくらいの量になるだろうという値であって、目標ではない。私は、もっとこの小水力発電の目標値を高く設定し、農業以外のいろいろな促進策を設ければ、まだまだ愛知県内には再生可能エネルギーの開発可能性があると思っている。
 そこで一つの提案、要望であるが、各県のいろいろな制度を調べてみると、佐賀県において佐賀モデルというものが提唱されており、これがどのようなものかと言うと、非常に小さな地域主体での小水力発電である。佐賀県は、恐らく本県よりもさらに山間部が多くて平地が少ない小さな県である。その中で小川のような流れや水路のようなもの、30キロワットとはかなり小さいので、数十万円の投資でもすぐできる程度のものであり、県内全域からその可能性をくみ尽くそうとしている。佐賀モデルの特徴は、佐賀県全域でどの水路にどれほどの水量があって、発電可能性の事業性がどの程度あるかを、県が調査する。
 県が調査した上で、それを公開し、ここの水路にはこのような可能性があるが、これを行う人はいるかと公募する。そして、民間のいろいろな事業者やNPO、地域の村落共同体のようなものが、それに手を挙げて応募して水力発電を始める。これは先ほど言ったとおり中小の中でもさらに小さい、これはもうピコやマイクロ水力といった感じであるが、それだけに、個人あるいは本当に小さな村落の何軒かが協力してつくる母体でもできる、非常に小規模の投資と手間でできる可能性をくみ尽くそうというモデルである。愛知県の場合はどうしても大きな県なので、大きなプロジェクトで何十万キロワットといったものを幾つかつくることになりがちだと思うが、これはもっと小さい規模の水力発電の可能性をくみ尽くすモデルとして研究してみてほしい。
 そして、小水力発電の2030年度の導入目標数値は、ぜひ予測値ではなく目標数値をかなり高めに設定し、それに向けての取組を始めてほしい。
 続けて、もう一つは、かなり新しい課題である風力発電、その中でも洋上風力である。残念ながら、この戦略の中に風力はほとんど触れていない。恐らくこの段階ではまだ、どの辺りに立地の可能性があるのか、国がいろいろリサーチをしていたが、まだそれが定まらない中で戦略に組み込むことができなかったという事情だと思う。しかし、これは近年急速に変わった。先頃の政府の発表によると、幾つか事業化が可能な風力発電の適地の一つに愛知県の渥美半島の田原市、豊橋市の沖合が選ばれた。事業化の実証事業が始まるという話があり、私も非常に注目した。
 この豊橋市や田原市の沖でこれから実証事業が始まろうとしている洋上風力発電の概要について、県として把握していることを伺う。

【地球温暖化対策課担当課長(温暖化対策)】
 浮体式洋上風力実証事業については、経済産業局が中心となって進めているが、昨年3月に県から国に対して、田原市・豊橋市沖をその候補海域の一つとして情報提供、応募し、10月に候補海域の一つとして選定された。その後、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が本年3月まで事業者の公募を行い、審査を進めた結果、今般同海域での実証事業計画で応募していた民間事業者のコンソーシアムが実施予定先として選定されたものである。
 今回、太平洋側で唯一行われる浮体式洋上風力実証事業となり、国内の洋上風力発電では最大規模の大型風車1基が運転される計画となっている。この実証事業では、実証期間の2030年度までに、当海域の一定状況下で浮体式洋上風力を国際競争力のある価格で商用化する技術の確立を目指すものとなっている。

【高木ひろし委員】
 改定されたばかりの戦略ではあるが、私は、この戦略からさらに先を見通した上で、洋上風力の可能性はこの中に組み込んでいくべき非常に大きなテーマだと思っている。ちなみに、最近、大村秀章知事が発行したダイバーシティ興国論という本を読んだ。私も少し驚いたが、この中で風力という宝物という項目を設けて、最新の動きを大村秀章知事が非常に細かく言及している。それを読んで、私も認識を新たにしたが、世界的に見ると、ヨーロッパでは既に遠浅の海を利用して洋上風力発電が相当進んでいるが、その流れはアジア、特に中国なども含めて世界的に洋上風力発電へ注目が集まっている。残念ながら日本では、かつて風力発電の装置を手がけていた三菱重工業株式会社や株式会社日立製作所といった大手電機メーカーがいずれも風力発電設備の製造から撤退してしまい、ほぼ中国一手である。
 そのような状況であるが、大村秀章知事がこの本の中で述べているように、世界的にはものすごく大きなポテンシャルを目指して、風力発電、洋上風力発電の開発を巡る競争が始まっており、日本は大きく出遅れている。これだけ四方を海に囲まれた地勢上の地位にありながら、この洋上風力を今まで全く利用してこなかった。そして、ものづくり国として、メーカーサイドも発電装置から撤退しているという現状は、非常に憂慮すべき事態だと思う。
 そこで、戦略上いろいろな数字が紹介されているが、洋上風力発電の可能性は、経済産業省が一所懸命に調べた数字を見ると、洋上風力だけで2040年には最大4,500万キロワットの発電を目指している。これは大型の火力発電所や原子力発電所の大体30基分である。それほどの勢いで国、経済産業省が目標を設定して取り組もうとしており、これにグリーントランスフォーメーション(GX)の2兆円という資金を投入しようとしている。当然、これに愛知県がアプローチしないではいられないわけで、この辺りについて、将来に向けて特に国が実証事業として認めたこの洋上風力の可能性について、もう少し戦略的な洋上風力の位置づけ、見方について県の環境局の立場を伺う。

【地球温暖化対策課担当課長(温暖化対策)】
 現在、あいち地球温暖化防止戦略2030(改定版)に基づき、2030年度を目標に進めている。洋上風力については、現在、2030年度までに実証を行い、その後取組を進めていくと思う。また、今後、我々も2050年のカーボンニュートラルあいちを目指しているので、その中で可能性について引き続き検討していきたい。

【高木ひろし委員】
 今言ったように、2030年度は当面の戦略の目標であるが、ゴールは2050年である。2050年までに完全にニュートラルにしようと言っている。この種の取組は、二、三年でどうにかなるような話ではない。ほかの局が大きく関わってくるが、その取りまとめをしているのは環境局であるので、あいち地球温暖化防止戦略2030を改定したばかりとはいえ、2030年度目標のその次を見据えた戦略的な立場の位置づけを行うよう取組をお願いしておきたい。
 もう一点、今度は非常に卑近な話で、住宅の断熱化について、私自身の体験を少し披露して、他の委員にも県にも推進の材料としてほしい。私は、築50年以上の非常に古い木造住宅の一戸建てに住んでおり、家も傾き始めて隙間風が非常にある。冬場の隙間風の寒さや結露、また、夏場はクーラーの効きの悪さに非常に悩んでいたが、名古屋市を通じて国の二重窓の改修の補助金を活用し、一番家族がいる率の高い居間とダイニングの3面をガス入りのガラスで二重窓にするという窓の断熱工事を去年12月に行った。
 今言ったように、私の家は本当に非常に隙間風の吹く寒い家だったので、それまでの年は灯油ストーブで大体20リットルくらいの灯油を買ってきて、月にそれを2缶ほど消費していた。朝から晩まで燃やしているので、大体一冬で灯油を100リットル以上消費していたが、去年から今年の冬場は、灯油ストーブを一回も倉庫から出すことなく冬を越せた。断熱効果がやはりすごい。エアコンは少し使うが、灯油ストーブが要らないくらいの保温効果がある。おまけに、遮音効果もあり、我が家も道路に面しているので結構うるさいが、外の音や、家の中の音も外に聞こえない。この断熱効果と遮音効果はすごいと思う。100リットルの灯油を燃やさずに一冬を越したこと、これが我が家の具体的なCO2削減の実績である。断熱によって、この夏のエアコンの消費をどれくらい抑えられるか、非常に楽しみにしている。
 この戦略の中にも、建物の断熱化でネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化の中の一つとして窓の断熱改修工事が書いてあるが、ホーム・エネルギー・マネジメント・システム(HEMS)や何百万円もする蓄電池を入れるなど、いろいろとかなり大きな投資が必要なことが書いてあるが、非常に単純に効果が確認でき、なおかつ家の大きさにもよるが、断熱効果がすぐ体感できる窓の改修について伺いたい。
 さきに言ったとおり、これは大体3割くらいを補助してもらえる国の制度があり、私は名古屋市を通じてこれをもらったが、断熱改修という窓の改修について県は今までどのような取組を進めてきたのか。

【地球温暖化対策課担当課長(企画・自動車環境)】
 住宅の断熱窓改修については、建築局が既存住宅の省エネルギー化を推進することを目的に、本年度新たな補助制度として民間住宅省エネ改修事業費補助金を創設し、省エネ基準やZEH水準に適合する断熱窓改修等に対し、国、市町村と協調して補助を行う。
 今年度は、春日井市、豊田市、蒲郡市、東海市の4市が補助を行っており、そのほかにも現在補助の実施を検討している市町村があると聞いている。また、環境局においても、温室効果ガスの排出量を削減し、地球温暖化防止に寄与することを目的に、住宅用地球温暖化対策設備導入促進費補助金の補助対象の一つとして、太陽光発電施設、HEMSと断熱窓改修工事の一体的導入に対して市町村と協調して補助を行っている。
 さらに、これら補助制度のほか環境に配慮した住宅の普及を目的として、あいち住まいるフェアや商業施設のイベント等において、県民に対し環境に配慮した住宅のメリット等について啓発を行っている。引き続き、環境局、建築局等の関係局が協力、連携し、市町村の意向を踏まえ適宜補助制度の見直しの検討を行うとともに、環境に配慮した住宅の普及啓発等を行い、住宅の脱炭素化を推進していく。

【高木ひろし委員】
 今、私なりの角度からいろいろな提案や質問をしたが、やはり農林基盤局や建設局、経済産業局など、県の持てる各分野の総力を本当に結集しないと達成できない大きな目標、戦略である。所管事項説明会でも言ったとおり、こうした全庁的な各局の連携の要になるのは、環境局で間違いないわけである。最後に、今言ったような各施策の角度から2030年度目標を達成し、そこからさらに2050年に本当のカーボンニュートラルという大きな目標に向かって、全庁的に県庁の総力を結集するために、局長の決意を伺う。

【環境局長】
 決意ということで、小水力発電の話もあったが、最初の洋上風力発電については、大村秀章知事の話を引用したとおり、今、愛知県にある碧南火力発電所や武豊火力発電所の石炭火力、1基100万キロワットに並ぶものとしては、やはり洋上風力発電しかないのではないかということは、当初から大村秀章知事もよく分かっている。今回、豊橋市、田原市沖で行う1基は15メガワット、つまり1万5,000キロワットの洋上風力発電であり、これがヨーロッパのように100基並べば150万キロワットとなり、十分石炭火力発電や原子力発電に並ぶ発電力があるということで大変有望だと思う。2030年には、アセスメントや建設が間に合わないので戦略には書いていないが、当然それは可能性のあるものとして考えており、経済産業局とともに、そのような設備が導入できるように促進を支援していきたい。
 また、例えば断熱窓の話について、戦略では家庭部門は8割削減という非常に高い目標を掲げている。データ的なことを言うと、高木ひろし委員の話にもあった家庭におけるCO2の排出量は、全体で一番多いのは電気であり、照明や冷蔵庫などが一日中ついているので、それが約4割、5割を占める。それに次いで冷暖房が4分の1程度あるので、それもしっかりやっていかなければならない。今回は建築局が国費を導入でき、財源を使えるということであったので、それを有効に使わせてもらい、補助制度を創設した。これに限らず、いろいろな分野で導入できるものについては、環境局としても庁内連絡会議も使って、カーボンニュートラルに向かって進めるように十分な体制を支援していきたい。


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