【高木ひろし委員】
小牧市にある愛知中央美容専門学校、美容師を目指す人たちが通っている学校が、5月末に突然閉校になったことについて伺う。
この専門学校は、学校法人が設置した学校ではなく、愛知中央美容協同組合という協同組合が設置した学校となっている。
この協同組合の組合員3社のうち、2社が、昨年8月から9月にかけて、相次いで破産手続を開始し、これを受けて協同組合は学校運営を継続するためにスポンサーを探したが、見つけられなかったとのことである。
学校としては、年度途中、しかも年度が始まった当初の5月にいきなり閉校するというようなことは極めて異例だと思うし、このようなことは度々あってはならないことであるので、幾つか伺う。
報道を見ると、愛知中央美容専門学校については、専門学校、美容師養成施設、協同組合などのいろいろな用語が出てくる。国の所管の関係もあり、県の中でもそれぞれの所管があると思う。どのような所管となっているのか。
【私学振興室担当課長(私学)】
愛知中央美容専門学校は、専門課程を置く専修学校、いわゆる専門学校であり、所管は、私学振興室となっている。
なお、当該学校は、美容師養成施設にもなっており、この美容師養成施設については、保健医療局の生活衛生課が所管している。
また、当該学校の設置者は、愛知中央美容協同組合となっているが、協同組合については、経済産業局の商業流通課の所管となっている。
【高木ひろし委員】
本委員会は県民環境委員会であるため、私学振興室が所管する専門学校の部分について伺う。
まず、昨年の8月と9月に専門学校を運営している協同組合の組合員3社のうち2社が破産したときに、その情報を私学振興室は把握していたのか、もし把握していたのなら、どのような対応をとったのか。
【私学振興室担当課長(私学)】
昨年8月にある事業者から、愛知中央美容協同組合の親会社が破産したことにより、愛知中央美容専門学校の経営を引き継ぎたいと県に対して相談があり、認可上の基準や手続について相談者に説明した。
翌日、当該協同組合の代表者に、親会社の破産の事実確認を行うとともに、今後の協同組合の解散及び学校の廃止予定について確認したところ、組合の解散予定はなく、学校も引き続き運営していく旨の説明があったため、今後の動向を注視することとした。
同年10月、当該専門学校の事務長から、学校法人化も視野に入れた今後の手続について問い合せがあったため、各認可事項等の説明をした。
このような相談内容から、県としては、当該専門学校が、学校法人化等の認可事項に関する手続を行い、学校運営を継続していくものと認識していた。
【高木ひろし委員】
昨年の学校への聞き取りでは、閉校となることは想定できなかったとのことだが、専門学校が閉校することを私学振興室はいつ把握したのか。また、把握してから、どのような対応をしたのか。
【私学振興室担当課長(私学)】
今年4月11日に、当該協同組合の代表者から、協同組合の構成員が破産したことにより、協同組合自体も破産手続の開始が決定される可能性があり、学校を継続することができない状態であるとの連絡があった。
美容師養成施設を所管する生活衛生課、協同組合を所管する商業流通課に確認と情報の共有を図ったうえで、翌日、私学振興室から学校に対し、生徒の処遇については、生徒の学習機会が奪われることのないよう適切に対応し、生徒、保護者への説明やフォローを適切に実施したうえで閉校に向けた準備を進めるよう指導を行った。
その後、5月9日に、専門学校に通っている生徒の保護者から、学校から閉校の説明を受けたとの連絡があったため、学校に確認したところ、5月9日に保護者説明会を実施し、5月31日で閉校となることを説明したとのことであった。
この説明を受け、学校に対しては、生徒の不利益となることがないよう、生徒、保護者への説明、フォローを適切に行うよう指導した。
また、生徒の学習機会の確保が最優先であることから、愛知県専修学校各種学校連合会等と連携しながら、愛知中央美容専門学校に対して生徒の受入れ可能な学校の情報提供を行い、閉校となる5月31日までに、生徒の受入先が確定できるよう調整を行った。
【高木ひろし委員】
これまで通っていた学校が、特に4月に入校したばかりの生徒にとっては、入校早々、入学金も払って授業に通い始めた途端に閉校というのは、本当に困った事態だと思う。悪意で取ればであるが、事前に経営が危ういことが分かっている学校が、どのみち駄目だが、最後に入学金と生徒だけ募集して取れるものを取ったうえで破産したのではないかと疑われるぐらい、不可解なタイミングだと言わざるを得ない。
通っていた生徒たちがどうなったのかが大変気になるが、生徒の行き先、転校状況等がどうなったのか伺う。
【私学振興室担当課長(私学)】
通っている生徒26人のうち、6月に転校した生徒が22人、来年の4月に再入学を予定している生徒が1人、退学した生徒が3人となっている。
また、通信の生徒61人のうち、6月に転校した生徒が57人、退学した生徒が4人となっている。
【高木ひろし委員】
他の美容学校の協力により、大半の生徒に追加負担が生じたものの、美容師を目指すという進路を諦めることなく就学を続けられるようにはなったようだが、今の経過を聞くと、専門学校は私学助成の対象であり、県が認可、あるいは助成してきたような学校が突然このような経過で閉校することは、経営責任を問わざるを得ないと思う。
5月末で専門学校が閉校して以降、県としてこの学校に対し、どのような措置をしてきたのか。
【私学振興室担当課長(私学)】
令和6年6月7日付けで、私学振興室、生活衛生課及び商業流通課より協同組合及び学校に対して、閉校に至った経緯、生徒及び保護者への今後の対応方針、教職員の処置、協同組合及び専門学校の今後の方針及びスケジュールについて、報告書を持参し、説明するよう求めた。
回答は、本日の午前に協同組合の代表者から、私学振興室、生活衛生課、商業流通課の各担当者が直接説明を受けたが、内容が不明確な部分等があったため、現在、内容を確認している。
【高木ひろし委員】
今後さらに少子化が進展し、学校の経営が厳しくなっていくことが予想される。学校の設立は、学校法人はもちろん学校法人以外も設立が可能であり、今回のケースのように、県の所管が分かれており、監督が行き届かない可能性もあるのではないかと思う。学校が突然閉校して、生徒が路頭に迷うことが二度と起こらないよう、県としてどのような対策を講じていくのか。
【私学振興室長】
私立学校は、私人の寄附財産によって設立され、学生生徒からの納付金をもとに、学校法人自らの責任において運営されるものであり、私立学校法では、私立学校の自主性を尊重するという観点から、所轄庁の権限が制限されている。
このため、私立学校法や学校教育法といった法律上、今回の事案において、生徒の募集停止や休校といった命令を行うことはできなかったと考えている。
今回の事案を踏まえた、再発防止策等においては、まずは、しっかりと原因究明を進める必要があると考えており、その究明に努めるとともに、県として今後、どのような対応がとれるのか文部科学省などと連携しながら、検討していきたい。
【高木ひろし委員】
影響を受けた生徒の数が多くないため、大事にならずに済んでいるが、今後の一つの教訓として、どのような報告書が出て、文部科学省とも調整した上で、今後の学校経営について、県が指導、監督していくのかについては、引き続きまた当委員会で是非議論していきたいと思う。
6月12日の朝日新聞によれば、美容医療をめぐって健康被害などの相談が増加していることを受け、厚生労働省が、美容医療の適切な在り方を検討するための専門家による検討会を立ち上げ、美容医療の実態を把握して、医療安全を確保し、適正な診療を促すとの記事があった。また、記事では、不安をあおって高額な支払いをさせられたなどの相談も増えており、厚生労働省の検討会では、契約上の課題も取り上げる予定とされている。
私の印象としても、最近特に美容医療のコマーシャルが非常に目立つ。ほとんどは医療とは言いつつも自由診療であり、保険診療ではないため、これだけの広告費を投じるということは相当な収益が見込めることも想像できるが、医療という限りは、これは医療機関でもって医師が行う医療脱毛や脂肪吸引、二重まぶたの手術、整形外科といった美容の目的とした医療サービスのことであり、健康や保険の適用がない自由診療で価格も自由である。そのため、こうした消費者トラブルに発展するケースが当然多くなるのだと思う。
美容や健康への関心が高まる中、自由診療で行われる美容医療をめぐっては、高額な支払いなど、契約に関するトラブルの相談も増えていると聞いている。
また今後増えていくと想像しているが、昨年度の県内の美容医療に関する消費生活相談の状況を伺う。
【県民生活課担当課長(消費生活)】
県及び市町村には、年間約4万5,000件の消費生活相談が寄せられるが、そのうち、美容医療に関する相談は、2022年度は192件であったが、2023年度は472件で、前年度と比べて280件の増加、約2.5倍となっている。
相談内容の特徴は、「モニターになると安く施術を受けられるクリニックへ行ったところ、診察後、今日中に契約するようせかされて高額な契約をしてしまった。」といった相談が多く、他には、「クリニックで6回の脱毛契約をし、施術を1回受けた後、クリニックから休院の案内が届いた。その後、再開もされず、電話連絡も取れなくなった。未施術分の料金を返金してほしい。」といった相談も寄せられている。
2023年度の472件のうち、年代別では、20歳代と30歳代の相談件数が302件で、全体の約6割を占めている。
男女別に見ると、ほぼ同じ件数となっている。
【高木ひろし委員】
この美容に関して、類似としてエステティックというものがある。これは以前にも取り上げたことがあるが、このエステティックサービスは、医療分野ではなく、エステティックサロンで美顔や全身美容、脱毛、痩身、体型補正などを行うサービスであり、当然、医療行為はできないということになっている。
美容医療以外に、美顔、全身美容、脱毛、痩身、体型補正などを行うエステティックサービスについても、契約に関するトラブルの相談があると聞いている。
このエステティックサービスについても契約に対するトラブルが相当あると認識しているが、昨年度の県内のエステティックサービスに関する消費生活相談の状況を伺う。
【県民生活課担当課長(消費生活)】
エステティックサービスに関する相談は、2022年度は1,116件であったが、2023年度は846件で、前年度と比べて270件、約2割の減少となっているが、依然として多く寄せられている。相談内容の特徴は、「お試しでエステサロンへ行ったところ、2年のコースを勧められた。執拗に契約を迫られて契約してしまった。」といった相談が多く、他には、「脱毛サロンで全身脱毛の契約をし、施術を終えたが、効果が感じられなかった。支払いはまだ残っているが、払いたくない。」といった相談も寄せられている。
2023年度の846件のうち、年代別では、20歳代の相談件数が541件で、全体の約6割を占めている。
男女別に見ると、女性が約9割を占めている。
【高木ひろし委員】
この被害を訴えている人、サービスを受けている人も圧倒的に20代、若い人に多い。しかも未婚の若い人が少しでも結婚したいというような中で、少しでも自分の見た目をよくしたい気持ちは分かるが、そういった人はあまり経済力もなく、高額な医療やエステのサービスを受ける際に、なかなか自己の支払い能力がない場合も往々にしてある。そういったことは事業者側も先刻承知なわけで、例えばクレジット契約を結ばせるといった形で、支払い能力関係なしに、とにかく契約でもと追い込むような手法もある。これに関しては先ほどの相談事例でも、あっせん解決という形で県が消費生活相談を受けた、県として介入して事業者側に注意を促すといった形での解決をする事例も増えているようである。このあっせん解決の中身は、エステの場合も美容の場合もそれぞれ違うと思うが、県は相談を受けてその本人にアドバイスするだけでなく、契約の相手方との間に入ってあっせんして解決へ導いていくことを、県としては相談窓口を設けている以上、より積極的に行うべきだと思う。
美容医療、エステティックサービスに関する相談に対し、県が介入してあっせん解決に至った事例について伺う。
【県民生活課担当課長(消費生活)】
美容医療、エステティックサービスに関する相談に対しては、まずは、県や市町村の消費生活センターでは、クーリングオフや中途解約が可能な契約については、その方法を案内するなどの助言を行っている。そのほかに、必要に応じて、相談者と事業者の間に入って調整を行い、解決を図るあっせんにより、救済に向けた支援を行っている。
2023年度のあっせん件数は、美容医療に関する相談では、あっせん件数は30件で、うち、解約や返金など、あっせん解決は29件となっている。
エステティックサービスに関する相談では、あっせん件数は55件で、うち、あっせん解決が51件となっている。
あっせん解決につながった事例については、カード会社に抗弁書を送付するなどして、代金の取消しを求め、解決につながったという事例がある。
【高木ひろし委員】
美容医療に関しては、やはり医療というのは単なるサービスのやり取りだけでなく、医療行為に関することであり、これは医師法といったものも関係してくる。県にも医療安全支援センターがあるが、この医療安全支援センターとの関係についても伺う。
【県民生活課担当課長(消費生活)】
美容医療に限らず、医療に関する相談、苦情に対応する相談窓口として、医療法に基づき、各都道府県等に医療安全支援センターが設置されている。健康被害に関する相談が寄せられた場合には、医療安全支援センターを案内している。
また、美容医療の施術が適切に実施されたかどうかといった相談が寄せられた場合は、公益社団法人日本美容医療協会などの専門機関の相談窓口を案内している。
愛知県消費生活総合センターでは、こうした機関と連携しながら、また、日々、最新の情報を取り入れながら、今後とも、県民の皆様が安心、安全な消費生活を営むことができるよう、しっかりと対応していく。
【高木ひろし委員】
本年4月に始まった県のファミリーシップ宣誓制度についてであるが、この意義については、大村秀章知事も本会議場で触れ、私も注目している。
県内市町村においても、2019年に西尾市が初めてパートナーシップ制度を導入した後、本年6月1日現在では、35市町がファミリーシップやパートナーシップ制度を導入するまでに増えている。
県がファミリーシップ制度を導入した4月以降、市町村におけるファミリーシップやパートナーシップ制度の導入にどのような影響を与えたのか、最新の状況について伺う。
【人権推進課長】
本年4月以降の市町村における制度の導入状況であるが、安城市、犬山市、清須市、大口町、扶桑町、東浦町、武豊町の7市町で、新たに、パートナー及びその子どもを対象とするなどとしたファミリーシップ制度が導入されている。
また、豊橋市をはじめとする6市では、これまでのパートナーシップ制度から、ファミリーシップ制度へと制度が拡充されている。
さらに、幾つかの自治体からは、今年度中の制度導入を目指して、検討を進めていると聞いている。
【高木ひろし委員】
この制度の普及と大きく関わる事例として、本年5月に、長崎県大村市が、男性カップルの住民票の続柄欄に夫(未届)と記載したと報道された。これは、異性間の事実婚に使われる表記に準じた表記で住民票が受理されたというものである。
鳥取県倉吉市も昨年度から同様の対応を始め、栃木県鹿沼市も本年7月から始めると聞いている。
同性婚は、まだ法律上認めることはできないが、それに近い表記として、事実上の夫婦であると住民票上で証明するのは大きいと思う。
こうした扱いが、今後、県内市町村で広がっていくのではないかと予想しており、広げるべきだと思う。
県は、直接住民票を扱うわけではないが、ファミリーシップ宣誓制度を普及しようとしている立場から、住民票上の続柄欄に事実婚同様の表記が認められるという事例が広がっていくことについて、県としてどのように考えるのか。
【人権推進課長】
パートナーシップ制度を導入している長崎県大村市において、同性カップルについても、住民票の続柄に夫(未届)や妻(未届)と記載するとしたことや、鳥取県倉吉市や栃木県鹿沼市でも同様の対応を進めていることについては、性の多様性の理解増進という点で、一歩踏み込んだ対応であると理解している。
住民票の続柄の記載については、市町村の自治事務であり、市町村がそれぞれ判断するものとなるが、こうした事例があることについて、県内市町村と情報共有を行いながら、愛知県人権尊重の社会づくり条例に規定する性的指向及び性自認の多様性の理解増進を図っていきたい。
【高木ひろし委員】
非常に前向きに捉えるという立場を表明したことを評価する。
この問題については、司法の場で、同性のカップルを事実婚と同様に扱おうとか、今までのような性別の法律上の扱いを柔軟化して、家族の多様な形を認めていこうとする判例が相次いでいる。
県としては、今年度から本格的に運用を開始したファミリーシップ宣誓制度の意図が、こうした市町村の扱いや、司法の動きとあいまって進んでいくよう、積極的にリードしていくことを要望する。