令和5年県民環境委員会 2023-10-10

 
 
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【高木ひろし委員】
今のファミリーシップ制度に関連して、知事が全国知事会議で提唱し、国での検討を求めている日本版PACS(民事連帯契約)について伺う。
これは、知事の説明によると、全ての子どもの福祉の観点から、事実婚であっても子どもの共同親権を認めるなど、婚姻に準じた法的保護を与える新たな届出や登録制度であるとされている。
永田敦史委員の発言にもあったように、婚姻や家族という定義の中にどういうものを多様な形として認めていくかは、最終的には、民法の改正にもつながってくる課題だと思う。県が今、ファミリーシップ制度で実現しようとしている実質的な家族の多様性と、国に対して検討を求めている日本版PACS、国でしかできない、こうした子どもを中心にした親の多様な形を認めて、親権等を認めるような制度改正があり、県が独自でやれること、そして国の法律改正によってしかできないことがある。目指している方向性は同じだと思うが、両者の関係について伺う。

【人権推進課長】
ファミリーシップ制度については、愛知県人権尊重の社会づくり条例にある性の多様性への理解増進の取組の一つとして、検討を進めている。
日本版PACSについては、このファミリーシップ制度が結果として使えるのではと、県ができる取組の一つとして考えられている。

【高木ひろし委員】
家族とは何かという、伝統的な家族観や慣習的な考え方ともかなり抵触する部分もあり、国民の意識の変化もあるため、幅広な議論をしてもらい、あるべき社会像、多様性を認める社会に向かっていくことの意義を浸透させてほしい。
もう一点、私学助成、私学の無償化について、6月定例議会で永田敦史委員が提起され、議論があったが、大阪府では、国公立高校と私立高校の授業料を完全無償化する制度の概要を発表している。
これは、これまでの私学助成運動、私学の無償化運動が新たな段階に差しかかりつつあると思われるが、この概要は、まず、これまで私立高校に通う父母の、保護者の家計の所得水準によって補助額を段階的に増やして、実質的に公立高校を選んだ保護者との負担がなくなるような実質的補助、無償化、公平を実現する制度として理解できるが、所得制限そのものを撤廃し、限度なしに、あらゆる所得の子どもたちが享受できる授業料助成を実現しようというものである。大阪府では、現行、年収590万円未満までの世帯を私学助成、授業料助成の対象としていたものを、一挙に全世帯に拡充する。補助額は現行60万円から63万円に増額し、近畿1府4県の私立学校に通う大阪府民も対象としている。
また、大阪府独自のキャップ制というものを打ち出しており、これに参加する学校が対象である。令和6年度は、まず高校3年生から適用し、これを令和8年度まで3年間かけて暫時無償化を実現し、令和8年度に完全無償化が実現するプログラムである。経常費の補助についても単価を段階的に引き上げ、令和8年度までに2万円を増額する中身である。 このキャップ制などを巡り、もちろん歓迎される意見が保護者からはある一方、私立学校の経営サイドやそこに勤める教員からも、いろいろな課題が提起されていると聞いている。
そこで、このキャップ制はどのような制度なのか伺う。

【私学振興室長】
大阪府の現在の授業料軽減補助金は、高木ひろし委員からも説明があったとおり、年収590万円未満の世帯に対して、国の就学支援金と大阪府の補助金を合わせ、60万円を補助上限額としているものである。例えば授業料が65万円の学校の場合、60万円を超える5万円、差額の5万円を保護者からは徴収できず、学校が負担する制度となっている。 このように、補助上限額を超える授業料について学校に負担を求める制度が、大阪府の言うキャップ制である。
なお、大阪府は、先ほどの拡充後の補助制度でも引き続きキャップ制を実施するとのことであり、補助上限額を60万円から63万円に増額して、所得に関係なく全世帯が無償化となる。したがって、授業料が65万円の学校の場合、63万円を超える2万円の部分は保護者から徴収できず、学校の負担となる。

【高木ひろし委員】
そのキャップ制の問題を含め、これまでの私学助成の流れについて、所得制限を一挙に撤廃し、全世帯に拡大することは一見望ましいように思えるが、いろいろな課題があるとも言われている。
この完全無償化と称する大阪府の新しい方針に対して、現在、どのような問題点が考えられているのか。

【私学振興室長】
報道機関等によると、授業料は設置者が決めるという私学の独自性は堅持されるべきであり、学校が決めた授業料を徴収できず学校負担が生じる制度には課題があると言われている。また、キャップ制への参加を取りやめ、無償化の対象とならない学校が出てくる懸念がある、大阪府から通う生徒とそれ以外の生徒で不公平が生じる、そのほか、高所得世帯への恩恵が大きく、子育て負担軽減の観点からバランスを欠くなどの意見がある。

【高木ひろし委員】
高校無償化というか、教育無償化という問題は、令和2年に民主党政権が打ち出した政策に端を発して、国が4,000億円程度の新たな予算を組み、それまでは都道府県が自主的に行っていた授業料助成や経常費助成について、初めて国費が投入されることから、順次始まってきたものと理解している。
その後もいろいろと紆余曲折があり、一旦は公立高校の授業料は完全になくなったが、その後、所得制限を入れて、年収910万円以上の世帯は従来どおり授業料を払ってもらう制度になった。
今度は逆に、私立学校も所得制限をなくし、これは子ども手当などにも共通する考え方であるが、行政サービスとは子どもを主体にして考えれば、親の経済状況に関係なく、等しく提供されるべきサービスである。
一方、その原資となるべき税金は、所得に応じて応能負担で納めてもらうものであり、所得に応じてたくさん納めていただいた一方、その納めた税金が自分には返ってこないという国民の間の一種の不公平感を解消し、負担は応能で、サービスの提供は平等にという考え方は望ましい方向である。
6月定例議会で永田敦史委員が発言したこともそのような趣旨だったと理解しているが、国が支援金という形での支出を維持している下で、都道府県が独自に、今度は所得制限を撤廃した授業料助成を打ち出すとなれば、都道府県の単独の持ち出しが、愛知県の場合は100億円単位で必要になってくるため、財政上の問題は当然ある。
したがって、大阪府の場合は減債基金の積立てなど大阪府特有の事情で、令和5年度から浮いてくるお金をこちらに振り向けようというスキームとのことだが、東京都など財政力のある一部の自治体以外では、100億円単位の独自の支出を持ち出すことは困難である。
しかし、大きな教育無償化、それも所得制限なしの無償化という方向へ全体が動いている下では、本県も現行の制度をどのようにこれに近づけていくのかを議論しなければならない。
そこで、現行の本県の授業料補助制度について、他県と比較してどのような特徴があり、どのような段階にあるのか。

【私学振興室長】
本県の授業料軽減補助金は、現在は年収720万円未満の世帯に対し、県内の私立高校の平均額まで補助する制度で、実質無償化としている。
他県との比較であるが、文部科学省の調査によると、本県よりも高い所得の世帯まで無償化しているのは東京都と福井県のみであり、年収910万円の世帯まで無償化している。 そのほかに、埼玉県が年収720万円未満の世帯まで、神奈川県が年収700万円未満の世帯まで無償化している。
このように、本県の年収720万円未満の世帯まで無償化しているのは、他県と比較しても決して低い数字ではない。
また、本県では、入学納付金についても年収720万円未満まで無償化しており、これは他県にはない特徴である。授業料と同様に入学金も無償化していることから、私学団体からは、全国でもトップクラスの補助であるという評価を得ている。

【高木ひろし委員】
最後に、要望であるが、ある試算によると、高校の授業料助成を全世帯に実質無償化という形に持っていくためには、本県の場合、授業料と入学納付金を合わせて、現行の予算に加え136億円が必要になると聞いている。
当面の目標としては、公立の無償化の水準になっている年収910万円までの世帯の生徒について授業料の助成をし、公私の格差をなくすとしている。したがって、年収720万円から年収910万円の間の層、ここに対する手当は当面必要である。
このことは毎年要望が出ていると思うが、授業料と入学納付金を合わせて、年収910万円までを新たにカバーしようとすると43億円必要という試算も出ているが、これを新年度予算の一つの焦点として実現できるよう、財政当局としっかりと交渉してほしい。

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