令和5年県民環境委員会 2023-06-27

 
 
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【高木ひろし委員】
県は昨年度10月に、5年ぶりに人権に関する県民意識調査を実施した。それが3月にはまとまったということで、分析の結果をパンフレット等で見たが、所管している人権推進課として、今回の県民意識調査からどのような状況が分かったのか。その概要と結果の特徴について伺う。

【人権推進課長】
人権に関する県民意識調査は、県民の人権に関する意識を把握し、人権教育・啓発の実施に向けての基礎資料とするため、2002年度から5年に1回実施している。 この調査は、昨年度で5回目となり、愛知県内に居住する満18歳以上の県民を無作為に3,000人抽出し、調査票を配布し、1,286人から回答を得た。
調査項目は、人権意識全般に関するもののほか、女性の人権、子どもの人権等、個別の人権課題について伺い、人権尊重の取組についても聞いている。
調査結果については、人権侵害や差別は10年前に比べて減っていると思うかという質問に対しては、減ってきているが前回の30.1パーセントから35.9パーセントに増えており、改善が見られた。
しかし、今の日本は人権が尊重されている社会であると思うかという質問に対しては、そう思うが前回の30.3パーセントから24.9パーセントに減っていたり、インターネットによる人権侵害と思われる投稿やウェブページを見たことがある人が、前回の30.3パーセントから42.8パーセントに増えており、今後とも、人権尊重の社会づくりに努めなければならないと考えている。
また、愛知県人権尊重の社会づくり条例について、知っている人は、7.4パーセントにとどまっており、引き続き、周知に努めていきたいと考えている。

【高木ひろし委員】
この調査結果を見て、改めて人権尊重の愛知県をこれからつくっていくために、極めて重要なベースになるデータではないかと思った。
この条例ができたことを知っている方は7パーセントぐらいしかいないこともあり、個々の項目を見ても、やはり依然として、自分の身内、家族等に、LGBTQ、性的少数者が、カミングアウトしているということが、息子や娘らにも、家族の一員がそうであった場合どう受け止めるかということに関して、高い割合で非常に違和感を感じると、これが正直なところだと思う。そういうところから出発をして、今後の啓発を考えていかなければいけないという現実や、また、私も以前から取り組んでいる、部落差別の解消などに関しても、結婚とか、就職等において家柄、そういうものを気にするという、あるいは気にすることは当然だという回答が3割近くあり、あまり減っていない。そして身元調査を行うことについても、3割程度の方が当然だと言っていると、これもなかなか減らない。
そして、最近よく言われる未婚化、結婚しない人が増えていることに関係すると思うが、家族が自分の結婚に反対した場合に、それを説得してでも結婚するという人よりも、家族が反対するならやめておこうという周りの家族の意見によって自分の結婚志向を断念する、思いとどまってしまうような方も増えている。
これはパラサイトシングルなどと言われるが、親と一緒に住んで、30、40と年を重ねた方にとっては、ある意味、居心地がいいと言ったら変だが、そこから自立して、あえて自分の家庭を持つ、自分の伴侶を求めていこうということに一歩踏み出すための条件も厳しいし、家族の庇護の下で、親の年金や親が造ってくれた家にそのまま同居しているという形から脱出することができないと、そういう意欲すら持たない傾向が増えているという、これも少子化問題の深刻化にもつながっているような意識もかいま見られるわけであり、これは人権問題だけにとどまらずに、結婚とかに関わるような、人の生き方に関わるような県民の意識がどのように変化しているのかということは、多方面のこれからの政策立案にとって非常に重要なデータだと思うので、調査した数字を並べているにとどまらず、調査項目の設定の段階から、専門家にもいろいろ意見を聞いているわけであるから、社会学者とか、その他いろいろな専門家の立場からも、こうした経年変化でどういった県民の意識の変化が酌み取れるのかということについて十分分析を加え、議論する一つのきっかけにすべきではないかと考える。
そして、昨年の4月から愛知県人権尊重の社会づくり条例がスタートしているが、先日、非常に大きなトピックが起こった。それは、6月3日に名古屋市が開催した名古屋城の復元をめぐる市民討論会という、行政が設定した会合の中で飛び出した発言である。
これが名古屋市議会でも議論になり、市側は、これは差別発言であるということは認めた上で、どうしてこういう発言が市の会合で行われたのか、あるいは、それを現場で誰も止められず、主催者である市長が、熱い議論を交わせてよかったという形で締めくくることになったのか。後になり、これは差別だということを認めざるを得ない事態に至り、非常に重大だと私も受け止めている。
名古屋市もこの問題の発生に対する今後の対応として、昨年から施行された愛知県人権尊重の社会づくり条例を引き合いに出して、県もこういう条例を制定されていると、名古屋市としても、こういう差別がなくなるようなことに焦点を当てた条例づくりが必要だというところまで発言しているようである。
これは愛知県としては、条例をつくったいい効果が現れているとも思えるわけであるが、まずは今回、新聞でもいろいろ報道されている市民討論会における差別発言に対して、愛知県としては、どのように受け止めているのか。

【人権推進課長】
本県においては、これまで、人権教育・啓発に関する愛知県行動計画を策定し、人権が尊重され、差別や偏見のない郷土愛知の実現を目指して、人権に関する教育及び啓発を推進してきた。
また、愛知県男女共同参画推進条例、愛知県子どもを虐待から守る条例、愛知県障害者差別解消推進条例などを制定し、人権に関する課題に取り組んできたところである。 しかし、様々な事由による差別が存在していることから、昨年4月に愛知県人権尊重の社会づくり条例を施行したところである。
こうした中、詳細は把握していないが、市民討論会で差別発言があったのは遺憾であり、条例を施行して、まだ1年しかたっていないとは言え、その趣旨が、まだ県民の間に浸透していないのだと考えている。

【高木ひろし委員】
具体的に議論しなければならないのは、どういう発言、身体障害者に対する差別するような言葉を使ったというところが、直接的には問題になっているわけであるが、どういう言葉を使ったのか公にされていないので分からないが、例えばこれを、差別呼称ではなくて身体障害者と言っていればよかったのかと考えると、決してそういう言葉の問題だけではないと思う。
つまり片方ではバリアフリーを要求する、名古屋市が建てる天守閣においてもこれまで同様、障害がある人、車椅子の人も上れる名古屋城天守閣であってほしいという意見を述べた方に対して、あなた方が我慢しろと、そのあなた方のところに差別呼称がつけられたわけであるが、これを例えば身体障害者と言い換えたところで、我慢しろという発想が差別発言だと思う。
法律的にも高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律があり、人権に関する県の条例はもちろんであるが、この精神からいって、あらゆる人に保障されるべきアクセス権というものが、車椅子を使用している人や障害者にだけは、これが少数であるからといって、あなた方が我慢しろとか黙っていろという接し方は、明らかにその態度に問題がある。
どうしてそういう発言者を選んだのかは、アンケートをやり、そこの中から典型的な発言をしそうな人を名古屋市が選んでいる。名古屋市が選んでいる人が、名古屋市の期待に応えて本音を言ったというだけの話なので、これは、そういう設定自体がやはり名古屋市も反省してもらわなくてはいけないと思う。
ともすれば、何かそういう言葉を使ったことが、その言葉さえ使わないでもらえればよかったのかとか、それをその場で、不適切な言葉があったので、自主規制音を入れて、その言葉が聞こえないように処理するとか、そうした技術的な話ではないということが、名古屋市議会でも議論されていると思う。
そこで、人権推進課長は、確かに差別発言というのは遺憾だと答弁したが、問題は何がどう遺憾なのか。あるいは、愛知県人権尊重の社会づくり条例の精神にどう反しているのか。今後、こうした問題がいろいろな場面で出てくる可能性がある。そういう中で、愛知県人権尊重の社会づくり条例の考え方はこういう考え方であると、こういう問題を解決しようとしているのだということを、県は積極的に言っていかなければいけないと思うが、愛知県人権尊重の社会づくり条例の普及啓発をする上で、今回の事例をどのように捉えて取組を行っていくのか伺う。

【人権推進課長】
愛知県人権尊重の社会づくり条例の普及啓発については、今年度は、東大手庁舎にあるあいち人権センターにおいて、6月12日から7月7日まで、愛知県人権尊重の社会づくり条例をテーマとした企画展を開催している。
また、10月頃から、NPO等と連携して、県内4地域に出向いて人権啓発イベントを開催することとしているが、条例についての説明を行った上で、より深く、人権について考えてもらうためのワークショップを開催することとしている。その中で、今回の問題等についても盛り込むことが可能ではないかと考えている。
その他、市町村職員を対象とした会議や地域で行われる人権に関する研修会、講習会に講師を派遣しており、そうした際には、今回の問題も踏まえて周知に努めたいと考えている。

【高木ひろし委員】
愛知県人権尊重の社会づくり条例が7.4パーセントの県民にしか知られていないということをこれから克服していくためには、単に条例ができましたといってパンフレットを全戸配布したところで、県民の関心はこの条例には向かないと思う。
まさに、関心を持つような事象が発生したときに、これは条例では、このような考え方で、愛知県はこのようにこの問題を捉えて、このような問題が発生しないような社会づくりに向けてこういうことをやっていくと、条例の宣伝をしなければいけない。こういう具体的な事象を捉えたときに初めて、条例の意義が理解されると思うので、この問題を大いに議論してもらい、啓発を進めてもらいたい。
非常に重要な課題だと思うので、最後に、人権推進監に愛知県人権尊重の社会づくり条例をさらに実質あるものにしていくために、今後どのように取り組んでいくのか。

【人権推進課長】
愛知県人権尊重の社会づくり条例は、あらゆる人権課題の解消を図るとともに、全ての人の人権が尊重される社会の実現を目指している。
そのためには、私たち一人一人が人格と個性を尊重し合いながら互いに支え合うことが必要であると考えている。
このような認識を県民と共有し、条例の趣旨や考え方を広く周知・啓発して、理解を深めることにより、多様性を認め合う、誰一人取り残されることのない人権尊重の社会づくりを行い、差別をなくしていきたいと考えている。


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