【高木ひろし委員】
愛知県環境影響評価条例の一部改正について、地球温暖化対策推進法が改正されたことにより、再生可能エネルギーを活用した地域脱炭素化促進事業を推進する仕組みが創設された。
これによって、県の基準に基づいて、市町村が定めた促進区域内においては、市町村の認定を受けて行われる地域脱炭素化促進事業については、環境影響評価法に基づく配慮書の作成の手続を要しないという特例措置が定められた。
再生可能エネルギーの促進は、大いに推進すべきと思うが、FIT制度によって、再生可能エネルギー法を促進しようとした副作用が目立ってきており、メガソーラーなど太陽光発電パネルを設置する事業によって、様々な自然環境や、住民生活への悪影響が発生する事案が県内でも発生している。
このため、環境影響評価条例に基づく手続が簡略化されることに伴う影響はどのようなものがあるのかを慎重に吟味すべきである。
まず、地球温暖化対策推進法の改正により創設された地域脱炭素化促進事業制度とはどういうものなのか。
【地球温暖化対策課担当課長(温暖化対策)】
地域脱炭素化促進事業制度は、地球温暖化対策推進法が2021年6月に改正されたことにより新たに位置づけられたものであり、円滑な合意形成を図りながら、適正に環境に配慮し、地域に貢献する再生可能エネルギー事業の導入拡大を図るための制度である。
再生可能エネルギー事業は、地域において、事業者が太陽光や風力発電などの再生可能エネルギー設備の整備とともに脱炭素化のための取組を一体的に行う事業であり、環境保全の取組や経済と社会の持続的発展に資する取組も併せて行うものである。
具体的には市町村が地域の合意形成を図りつつ、この事業の対象となる区域や整備する再生可能エネルギー設備の種類や規模、事業者に求める地域の環境保全、経済、社会の発展に資する取組などの方針を定めた上で、それを満たした事業者の事業計画を認定することで、再生可能エネルギーの導入を拡大していく制度である。
この制度のメリットとして、市町村にとっては、地域主導で地域と共生する再生可能エネルギー事業を誘致することができる。事業者にとっては、既に市町村が設定した促進区域内で事業計画を立てることから、事業の見通しが立てやすいこと、事業者が個別に行う許可等の手続に代わって市町村が協議を一括して行うワンストップ化、一定規模のものについては、環境影響評価法の配慮手続が不要になるといった特例がある。
なお、市町村による促進区域の設定に当たっては、環境保全の観点から、国が定めた一律の基準があり、それに加えて、都道府県が地域の実情に応じて基準を定めることができるため、その基準に従う必要がある。
本県としては、環境に配慮した促進区域が設定されるよう県基準の策定作業を進めている。
【高木ひろし委員】
現在、県はこの基準の策定作業に向けてどのようなことに取り組んでいるのか。また、県基準は、どういった効果を狙ったものなのか。
【地球温暖化対策課担当課長(温暖化対策)】
県基準の策定作業であるが、本県では昨年11月に動植物や生態系、騒音、振動、景観などの専門分野の学識者から構成される促進区域の設定に関する愛知県基準設定検討会を立ち上げ、これまで3回の検討会を開催して、審議を重ねてきた。
第1回の検討会では県基準の骨子案、第2回の検討会では庁内各部局の意見も反映させた具体的基準案について議論し、これに対して、動植物のレッドリストにある絶滅危惧種だけでなく、準絶滅危惧種も配慮すべきという意見や、促進区域の設定に関して参考となるマニュアルを記載したほうが分かりやすいなどの意見があり、基準案に反映した。
その後、パブリックコメントを実施し、環境省が定める重要湿地以外の湿地も配慮するようにすべき、国際的に重要な渡り鳥の飛来地に対する配慮も追加すべきなど、4人から合計12件の意見をもらった。
第3回の検討会は本年3月に開催し、パブリックコメントや意見を反映した最終案について議論しており、年度内を目途に基準を公表する予定である。
この基準によって、市町村が地域の環境保全に配慮した促進区域を設定できるようにしていきたい。
【高木ひろし委員】
環境への影響が懸念される再生可能エネルギー事業の例として太陽光パネルの設置や風力発電が挙げられる。森林を開発して、林地における太陽光パネルの設置がどれぐらい行われてきたのか、農林基盤局森林保全課に確認したところ、FIT制度が導入された2012年以降、非常に大きな面積の林地が太陽光パネルに置き換わる事案が県内でも発生していた。
しかしこれに関しては、これまでは1ヘクタール以上の開発に対してのみ、県の許可が必要であったが、本年4月から0.5ヘクタール以上のものに関しても県の許可が必要になった。規制が強化されたことにより、乱開発を防ぐことができるのではないかと考える。
一方で問題となるのは、風力発電であり、全国的にも大きな反対運動が起きている風力発電計画がある。
そこで本県には、環境影響評価が必要な巨大風力発電事業が、これまでに6件あったと思うが、どうなっているのかを伺う。
【環境活動推進課担当課長(環境活動)】
風力発電所については、環境評価書までの環境影響評価手続が完了し、事業に着手したものは6件のうち1件である。
また、環境影響評価の手続の途中で事業を廃止したものが1件、現在、環境影響評価の手続中のものが4件あり、いずれも環境影響評価法に基づくものである。
【高木ひろし委員】
新城市から設楽町にかけて、最大8万6,000キロワットまで出せる風力発電所計画があると聞いている。この事業の環境影響評価の手続はどこまで進んでいるのか。
【環境活動推進課担当課長(環境活動)】
(仮称)新城・設楽風力発電事業については、2022年1月18日に最初の段階である配慮書の縦覧が開始された。現在、配慮書の手続までが完了している。
【高木ひろし委員】
愛知県環境影響評価条例を改正することによって、環境影響評価の最初の手続である配慮書を省略することが可能となり、自治体が計画をさらに促進するおそれもある。
再生可能エネルギーの導入は進むが、地域の自然環境は破壊されてしまうのではないか。本条例改正によって、そうしたことが起きないか環境局の考え方を伺う。
【環境活動推進課担当課長(環境活動)】
愛知県環境影響評価条例の計画段階環境配慮書手続は、事業者が事業の位置や規模、建造物の構造、配置に係る計画を立案する段階で、重大な環境影響を回避し、又は低減することを目的として、既存資料などを用いて環境の保全のために配慮する必要がある事項を検討するものである。
一方、地域脱炭素化促進事業制度では、まず、県の基準に基づき市町村が環境保全に配慮した促進区域を設定する。その促進区域内で行われる事業について、市町村が定めた地域の環境保全のための取組を満たす事業が認定される。
このように、計画段階環境配慮書手続が目的とする重大な環境影響の回避又は低減が図られることが制度的に担保されることから、本議案のとおり、計画段階配慮書手続を省略する特例を設けるものである。
【高木ひろし委員】
開発の目的が再生可能エネルギーであっても、自然破壊への規制が緩くなることは、極めて問題だと思うので、再生可能エネルギーの導入を推進しながらも、自然環境や住民生活への影響に関して、より規制の目を細かくして、多方面からチェックをかけることが県の役割と思うので、その点に十分留意をして、条例の運用を行うよう要望する。