◯九十二番(高木ひろし君)
私からは、第七款建設費第三項河川海岸費のうち、木曽川水系連絡導水路事業について伺いたいと思います。
徳山ダムの水を揖斐川から愛知県や名古屋市の取水口がある木曽川まで地下トンネルを通じて流す木曽川水系連絡導水路事業は、二〇〇九年に着工を予定しておりましたが、二〇〇九年の五月に名古屋市長に当選した河村市長が水余りを理由にこの事業からの撤退を宣言して以来、十四年間凍結状態が続いてまいりました。その間、国が中心となって全国のダムについて個別の検証作業が続けられてきたわけでありますが、この導水路事業だけがいまだに検証中という状態が続き、関係自治体が合意可能な代替案を見いだす展望はまったく開けておりません。
そのきっかけとなった名古屋市が、このたび、突然撤退方針の転換を表明され、三項目の提案を要件に同事業を容認する考えを事業主体である国、水資源機構や愛知県にも伝えてきたようであります。
報道によりますと、その提案とは、そのまま紹介しますが、一、安心・安全でおいしい水道水の安定供給。本市、名古屋市の水源に揖斐川を追加することで、平常時における水道水の質的確保を図るとともに、新用途の導水からの直接取水などによりリスクへの対応力を向上させる。二、流域治水の推進。大雨の予測時に木曽川ダム群において積極的な事前放流を行い、水災害を防ぐとともに、その後の河川の流量を確保するための新用途の導水を活用する。三、堀川の再生。新用途の導水を活用した堀川への恒久的な導水と。これで以上であります。
各提案の中身は、これ以上のものではなくて、まだ明らかではない部分も多いんですが、この提案が、方針転換が出たことによりまして、十四年間、凍結・膠着状態になっていた本事業の検証作業と検討が動き出すきっかけとなり得ることだけは間違いないと思います。
その意味で、まずは、事業主体の国、水資源機構が名古屋市の提案を真剣に受け止め、関係自治体それぞれの立場で合意ができるような環境整備を急ぐべきだと思います。そして、その結論を導いていく上で、本県の役割は極めて重要なものであると申し上げたいと思います。
既に、完成して十六年がたつ徳山ダムの関係自治体は、愛知、岐阜、三重の三県、そして名古屋市、沿岸市町村であり、それぞれの事業によって得る便益に比例した費用分担、アロケーションは決まっておりますが、一体となります導水路につきましては、建設事業費八百九十億円のうち、名古屋市負担分が百二十億円に対し、本県負担分は三百十八億円であり、利水者は名古屋市と愛知県、この二自治体だけであります。この事業費も凍結していた十四年間にいまだに八百九十億でできるとは考えられず、相当上振れしているはずでありますし、そうなりますと、本県にとって、この導水路事業をやるとした場合の費用とこれによって得られる効果の検証も改めてはじき直す必要が出てまいります。
二〇〇九年の河村市長の撤退宣言がされた当時は、当時の神田知事は、国の事業を積極推進する立場でありましたけれども、二〇一一年に初当選された大村知事は、木曽川水系連絡導水路事業について、見直しをマニフェストに掲げられておったはずであります。少なくとも当時は、この事業への巨額な追加投資の有効性や環境への影響について、河村市長と問題意識を共有されていたのではなかったんでしょうか。
そこで、改めて、この時点で、河村市長の方針転換の発言を受けて、今後県としてはこの導水路事業にどのように取り組んでいくのかお尋ねしたいと思います。
◯建設局長(道浦真君)
木曽川水系連絡導水路事業についてであります。
木曽川水系連絡導水路事業については、二〇〇九年十二月にダム検証の対象事業に選定されたことから、国と水資源機構を検討主体とする検討の場が設置され、検証作業が続けられており、これまでに検討の場が一回、検討の場の幹事会が五回開催されているところです。
検証作業は、中部地方の水供給のリスクや安定供給の在り方を検討するために二〇一八年十一月に国が設置した中部地方水供給リスク管理検討会の進捗を見定めて進めていくこととされており、現在、この検討会において、木曽川水系における水供給のリスクや対応策などが検討されております。
県といたしましては、このような大型の公共事業は不断の検証が必要だと考えており、ダム検証において、事業の必要性、事業効果、コスト、環境への影響、実現性などの面から、予断を持たず、しっかり検討していただくよう引き続き国に申し入れてまいります。
◯九十二番(高木ひろし君)
大体予想したお答えしか出てまいりませんでしたけれども、これは国に、確かに検証事業をやっている主体は国ですから、そして、国が事業主体なんですから、国が結論へと導く責任があることは、これ、間違いありません。
しかし、国の責任ばかりを言っているだけでは、これは解決しないんじゃないかと思うんですね。やっぱり県もこの導水路事業の部分については、やっぱり名古屋市と愛知県が当事者なんですから、これ、やはりこの問題の解決、合意に向けてやはり積極的に県も汗をかくという姿勢が大切なんじゃないでしょうか。
そこで、私は一つだけお聞きしたいことがあります。
河村市長の提案の中で私が注目したのは、堀川の浄化、堀川への導水という問題であります。
これは、いろいろと経過がありまして、県議会の議事録などを検索してみましても、二〇〇四年に既に、ここにおられる塚本久議員が木曽川からの導水が堀川浄化のアイデアとしては検討に値するのではないかということを既に県議会で提案しておられます。
そして、二〇〇七年から木曽川からの導水による堀川の浄化の社会実験というのが三年間行われたんですね。これは、富田議員もその当時、堀川一〇〇〇人調査隊という市民運動がありまして、これをぜひ堀川浄化のために実現するような働きかけをすべきだということを県議会でも主張していただいているんですが、これがなぜか、浄化の効果は明らかに認められたんです。明らかにきれいになったんです。しかし、なぜか社会実験のまま終わってしまって、木曽川からの導水が本格的な検討に上ることはなかったんです。これはなぜでしょうか。これは、河村市長の導水路問題に関する撤退宣言が大いに関係しているわけですね。
つまり、庄内川水系なんですよ、堀川は。ですから、木曽川水系とは本来関係ないんです。そこへ、しかし、庄内川にはそんな水量の余裕はないものですから、木曽川の水系から引っ張ってくる。これはいろんな方法がありますが、恐らく名古屋市が想定しているのは、利水として、水道用水として鍋屋上野の浄水場まで引っ張ってくる経路が既にあります。そこでの水が十分足りているということが、河村市長は言っているわけですね。
しかし、木曽川のほうは、この導水路事業を見ても分かるように、何十年に一回には非常に深刻な渇水が起きるということが言われておりまして、ここにはそんな常時堀川へと水を流すような余裕はないということになっておるわけです。それで、河村市長が揖斐川から引っ張ってくる導水路事業を反対しているものですから、これは、ますます余裕のない木曽川からそんな堀川に流すような余裕はないと、こうなっちゃっているわけですね。
これが恐らく名古屋市とすれば、懸案の問題を解決する導水路事業に相当なまだ追加投資が必要なんですが、せめてこれが念願である堀川への導水によって実現できれば、これは、関係市町村にも迷惑をかけずに木曽川に余裕の水量が、確保を名古屋市がするわけですから、その一部を上水路経路を伝って堀川に流すということは、これは簡単に実現するんじゃないかと私は思うんですが、これは、木曽川の水を使った、以前、社会実験によって効果が認められた事業が恒久的な制度になるかどうかという点について、県の見解はいかがでしょうか。
◯建設局長(道浦真君)
名古屋市から今回示された提案、三項目につきましては、名古屋市長から中部地方整備局長に要望として提案されたと承知しております。
国におかれましては、こういったことも含めて、今後、事業効果、実現性などについて検証がされると認識しておりますので、その検証をしっかりと踏まえて対応してまいりたいと思います。
以上です。