令和5年2月定例会(第6号)前半 2023-03-08

 

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◯九十二番高木ひろし君
私からは二項目質問させていただきたいと思います。
まず最初は、歳出第二款総務企画費第一項政策企画費について、ジブリパークの整備であります。
県政百五十周年記念事業のうち、象徴的で最も人気があるのは、昨年十一月、愛・地球博記念公園の中にオープンしたジブリパークであります。国内外から高い評価のあるスタジオジブリの作品の世界を実際に体感できる、他に類を見ないテーマパークとして、前評判にたがわぬ人気を博しているようであります。その延長線上に、二〇二三年度には、いよいよもののけの里と魔女の谷という二エリアが加わり、いよいよ全面開園を迎えることになります。
今、私はテーマパークと申し上げましたが、実は、スタジオジブリの宮崎吾朗監督によりますと、これはテーマパークではないというふうに説明をされております。その説明によれば、ファンタジーが現実世界にはみ出してきているのが従来のテーマパークであったようだが、ジブリとしては現実世界に立脚して描かれているジブリ作品の本物感、本物を体感できるということにあくまでこだわるということが特徴だということであります。
その事例として特徴的なものは、となりのトトロに登場したサツキとメイの家であります。昭和三十年代の建物を昭和初期の工法と材料で大工さんらが忠実に再現したこのサツキとメイの家が愛・地球博の中で実現し、これが好評を博して、その後も毎年十万人以上の方がここに訪れ喜んでいただいているということが、今回のジブリパークへの展開の原点だったと宮崎吾朗監督も述べております。
一方、県がスタジオジブリとの間で合意したジブリパーク整備の基本方針によれば、一つ、人、生き物、地球に対する愛という二〇〇五年愛知万博の理念と成果の継承、当然であります。二番目として、スタジオジブリの作品の世界観を愛・地球博記念公園の中の公園施設として整備する。そして、三番目としては、多様な利用者が共に楽しめる公園づくりというような形で掲げております。当然のことではありますけれども、大人も子供も、障害のある人もない人も、当然広く国内外から多くの来園者に楽しんでいただけることを重要視したものであります。
この基本方針にのっとって、施設整備を行う県と管理運営会社として設立された株式会社ジブリパークは、設計段階からユニバーサルデザインに配慮したものとするため、障害者団体などとのヒアリングを重ねてきていると聞いております。
しかし、実際には、本物へのこだわりということとバリアフリーとの両立というのは、なかなか容易ではないと思います。車椅子ユーザーやベビーカーでのフリーアクセスが完全にパーク内で実現するかという、なかなか困難であります。
それができない場合には、しかし、どのような代替手段、そして支援措置が可能なのか、きめ細かい工夫や時には大胆な決断も必要となるんであろうと思います。
ここで質問です。
ユニバーサルデザインに配慮したジブリパークの整備について、これまでどのように取り組んでこられたのか、また、残る二エリアの開園に向け、現在どのような取組を進めていらっしゃるのか、具体例を挙げて御説明をいただきたいと思います。
二点目であります。
第四款福祉医療費第一項福祉総務費の中に地域生活定着支援センター事業というのがあります。
これには、私、かねてから関心を持っておりまして、刑務所の中にいる受刑者の約半数が何らかの障害者や高齢者、依存症系の病人であって、刑を終えて出所しても住むところや頼る人もなくて、再び窃盗や万引きなどの軽微な犯罪に手を染めて刑務所に舞い戻ってしまうという状態が蔓延しているんだと。こんな実態が、累犯障害者というタイトルの本が出版されたりして、大きな社会問題として注目されたのは今から二十年ほど前のことでありました。
知的障害者の場合、約七〇%が一年以内に再犯し刑務所に戻ってきてしまうと言われております。高齢受刑者の場合には、この二十年間に五倍に増えております。約七〇%が再入所者、つまり再犯者でありまして、そのうちの三割は実に十回以上服役しているというデータもあります。社会に行き場のない障害者や高齢者が、結果的に刑務所をついの住みかにしてしまっているのだという実態がここにあります。
こうした現状を変えようと始まったのが、地域生活定着支援事業であります。刑務所を出所した高齢者や障害者のうち、行く先や受皿のない人々に居場所や福祉サービスを提供し、支援して、人間らしく生活できるように支える、それによって再犯を防止していこうとするものであります。
国の方針を受けて、愛知県でも平成二十二年(二〇一〇年)から地域生活定着支援事業に取り組んでおりまして、地域生活定着支援センターを民間に委託して設立いたしまして、今年で十三年目を迎えております。
改めて、この事業に対する県の基本認識を伺うとともに、これまで民間に委託して運営してきた同センターの実績、そして現状、そして今後の課題についてもお答えをいただきたいと思います。

◯政策企画局長(沼澤弘平君)
ジブリパークの整備については、多様な利用者が共に楽しめる公園づくりを基本方針の一つに掲げており、そのためには、全ての方が安心して利用できるよう、様々な当事者の方の御意見をいただきながら整備を進めていくことが重要であると考えております。
昨年十一月に開園した三エリアの整備では、子育て世代や高齢者、障害者などの関係団体及び学識経験者の皆様の御意見を設計の段階で伺い、例えばエレベーターボタンの触感──押すときの感触でございますが──や音声対応などの仕様の充実、多機能トイレ内のベッド等設備の充実などの御意見や御要望をいただきまして、これらを反映して工事につなげてまいりました。
また、工事中においては、設計の段階でいただいた御意見の反映状況を御確認いただく現場確認会を開催し、当事者の視点から、例えば多機能トイレ内の大人用ベッドの収納方法をより使いやすくしてほしいなどの御意見をいただいてそれを取り入れるなど、工事完了間際まで施設の改善に取り組んでまいりました。
また、障害者団体の皆様には、開園前の昨年十月に、運営主体である株式会社ジブリパークのスタッフトレーニングにも御協力いただき、運営面で配慮すべき心構えなどの御助言をいただいたところであります。
来年度に開園する予定の残る二エリアにつきましても、三エリアと同様、設計段階から御意見を伺って整備を進めており、今月下旬には工事途中での現場確認会も開催し、工事完了まで皆様の御意見をできる限り反映していくこととしております。
県といたしましては、パーク整備における各段階において、関係団体や学識経験者の皆様の御意見を伺いながら、引き続き、残る二エリアの開園に向けて、しっかりと進めてまいります。

◯福祉局長(橋本礼子君)
地域生活定着支援センター事業についてお答えいたします。
この事業では、高齢または障害により福祉的な支援を必要とする刑務所等の矯正施設を退所あるいは退所予定の方に対して、その矯正施設や保護観察所等と連携、協働しつつ、入所中から退所後まで一貫した相談支援を民間事業者に委託して実施しております。
頼ることのできる家族がいない、帰る場所がない、貯金がないなど、生活に困窮し、自立した生活を営むことが困難な高齢者や障害者の方に対して、御本人の希望を丁寧にお聞きした上で、受入先施設のあっせん等の居住場所の確保、介護保険や障害福祉サービスの申請等を支援するもので、対象者の社会復帰や地域生活への定着に資する、大変有意義な事業であると認識しております。
二〇一〇年度の事業開始以降、二〇二一年度までの十二年間で五百四十三名の方の受入先施設を確保し、希望する地域で安心して暮らしていけるよう生活環境を整備するなど、成果を上げてまいりました。
しかしながら、センターが確保した居住場所で新たな生活を開始したとしても、残念ながら何らかの事由で再び罪を犯すに至る方もございました。
対象者は、障害の程度や認知症の有無、帰住先の家族の状況等が様々であるため、センターが個々の福祉ニーズを把握した上で地域の関係団体や機関と連携、協力してきめ細かな支援を継続することが必要であると考えております。そのため、矯正施設や市町村、社会福祉協議会、NPOなどの地域の支援団体と支援事例の情報共有を図る検討会の実施など、地域ネットワークの強化業務も事業メニューに加えているところでございます。
今後とも、刑務所出所者等の社会復帰や地域生活への定着が円滑に進むよう、地域生活定着支援センターの取組を着実に実施してまいります。


◯九十二番(高木ひろし君)
御要望と再質問をさせていただきます。
まず、ジブリパークに関しては、これは言うまでもなく、県も十分承知していらっしゃるように、障害当事者の方、いろんな障害を持った当事者の方に設計段階から、そして実際の工事施工段階、そして運営の段階にまで実際に加わっていただいて、それで一緒に考えていく、これが非常に大事だということ、十分踏まえられていることがよく分かりました。
それでもって、当事者が、開園してからクレームが来て、それに対して改善が迫られるというようなことがないように、可能な改善は全部開園前にやっておく、当事者団体の方にも御納得いただいて開園が迎えられるようにお願いをしておきます。
それから、地域生活定着支援センターでございますけれども、現在、御答弁の中では、十二年間で五百四十三名の方に居場所や支援をさしあげたという、トータルの数字だけが御紹介ありましたけれども、これ、問題は中身なんですね。この方々が一体どういう施設、どういうサービスに対して、それぞれの実情に応じて結びつけることができたのか、そして、もっと重要なのは、この先には、例えば、いろいろと問題があると言われております無料定額宿泊所、簡易宿泊所のような、はっきり言うと貧困ビジネスに近いようなものがあったり、あるいはグループホームとはいっても、実際にはほとんどそこに閉じ込めておくような形の管理型のグループホームなどもあるやに聞いておりまして、こういった中では、いや、刑務所のほうがましだったというような、そんな声まで出てくるという実態が実際あります。
本当に地域生活が定着できるようになったのかどうか、犯罪を繰り返すサイクルから抜け出すことができたのかどうか、この実績をはかる上で最も重要な指標は再犯率であります。刑務所を出所してから一年以内にもう一度また犯罪を犯して刑務所に入ってしまうとか、あるいは三年以内に入ってしまうとか、これは、やはり愛知県も再犯防止推進計画なんていうのをつくっていますけれども、やっぱり数値目標を設けて取り組んでいくということによって、この中身がだんだんに、課題がレベルアップしていくんだと、私、こんなふうに思います。
再犯率の話は、県としては、これ、どんなふうにお考えなんでしょうか。これ、もしつかんでいらしたら、もしぜひ御披露いただきたいし、つかんでいないんであれば、ぜひこれはこの事業の成果をはかる上で重要な指標であるとして、ぜひお知らせいただきたいと思います。いかがでしょうか。

◯福祉局長(橋本礼子君)
再犯率についてお答えいたします。
過去の経緯につきましては、愛知県のデータがございませんので、国の統計資料にあります六十五歳以上の高齢者の方のデータを申し上げます。六十五歳以上の高齢者の方が出所後二年以内に刑務所に再び入所するという割合は、地域生活定着支援センター事業が開始されました二〇〇九年の前年、二〇〇八年においては二九・七%という数字がございますが、直近の五年ではおおむね二〇%前後で推移しているということで、一定の成果が上がっているものと認識しております。
なお、地域生活定着支援センターでは、出所後の居住場所を確保した後も受入先施設等を訪問し、フォローアップ支援として相談等を行っておりまして、その範囲内で愛知県のセンターが把握した事例を申し上げますと、二〇二一年度に実施したフォローアップ支援におきましては、支援対象者百十八名のうち十名の方が再犯に至ったという報告を受けているところでございます。


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