【高木ひろし委員】
本県は住宅用太陽光発電施設の導入実績が全国一である。そこで、県内における太陽光発電施設の設置数の推移と導入促進に係る県の取組について伺う。
【地球温暖化対策課担当課長(温暖化対策)】
本県では、住宅用太陽光発電施設を設置する県民に対し、市町村と協調してその費用を一部補助する制度を2003年度に創設し、地球温暖化対策の取組を開始したところ、年間の日照時間が比較的長く、太陽光発電に適した地域であるということもあり、2005年度に設置数は全国一となった。
補助制度創設以降、協調する市町村数を増やすとともに、予算額も当初の9,000万円から2013年度には1億4,000万円、本年度は1億6,000万円に増額するなど、当該施設の普及拡大の取組を強化してきた。
その結果、補助制度を創設した2003年度末時点の設置数9,058件は、2009年における余剰電力買取制度の開始や2012年における固定価格買取制度(FIT制度)の開始など、社会的情勢を経て飛躍的な増加を続け、2021年度末時点で23万688件となっており、2005年度以降、全国一の設置数を維持している。
太陽光発電施設の普及拡大は一定程度進んだと考え、より一層の地球温暖化対策の取組強化を図るため、2018年度限りで太陽光発電施設単体への補助を終了するとともに、同年以降、太陽光発電施設に加えて、エネルギー管理システム(HEMS)や蓄電池等の一体的な導入に対する補助を実施している。
今後も必要に応じて補助メニューの見直しを行うなど、より一層の地球温暖化対策の取組を進めていく。
【高木ひろし委員】
本県は二十数年にわたって、住宅用の太陽光発電施設にスポットを当てて、施策を積み重ね一定の効果を上げてきたことは理解できた。
本県の一戸建ての住宅戸数は、住宅統計によると156万4,800戸であり、このうち23万戸に太陽光発電施設がついているとすると、設置率は14.7パーセントとなる。この試算でよいのか。また、この割合は全国で何番目なのか。
【地球温暖化対策課担当課長(温暖化対策)】
住宅用太陽光発電施設については、おおむね10キロワット以下、実際には4キロワットから5キロワットのものが多い。委員の試算については、把握できるデータによると間違いないと考える。なお、設置率の全国順位は把握していない。
【高木ひろし委員】
カーボンニュートラルを目指すに当たり、国が大幅にCO2削減目標を引き上げたことで各都道府県が自治体ごとのカーボンニュートラルの目標をかなり加速しており、東京都では住宅用太陽光パネルの設置を義務づける条例が、本年12月に都議会に提出される予定である。
補助金以外にも住宅メーカーに対し、新築住宅を販売する場合に一定のノルマを課して、太陽光発電施設を最初から組み込んだ住宅の販売を義務づけるやり方は、本県のアプローチとは違う注目すべきやり方だと思う。
都道府県は新規の住宅建設に関して許可や検査の権限を持っているため、新築住宅がどういう性能や機能、基準を満たしているかチェックでき、この立場を利用して太陽光発電施設を組み込んだ新築住宅の設置を進めるのは、今後検討すべきことではないかと思う。
本県もHEMSを導入することで、投資額や自己負担額について、かなり大きな投資が必要になり、年間1万戸以上のペースで進んできた新規設置が鈍っていく可能性もある。
その中で、本県としては全国一の住宅専用太陽光発電パネルの設置件数をさらに伸ばし、シェアを広げる策として、東京都が採用しようとする新規住宅の太陽光発電施設を義務づける制度についてどのように考えているのか。
【地球温暖化対策課担当課長(温暖化対策)】
東京都が本年9月9日に公表した、カーボンハーフ実現に向けた条例制度改正の基本方針によると、住宅等の新築建築物に対して、断熱・省エネルギー性能の確保や、太陽光発電施設の設置等を義務づけることとし、2025年4月に施行する予定である。
中小規模建築物への太陽光発電施設の設置義務づけは、都内の年間供給延べ床面積が合計2万平方メートル以上の大手住宅供給業者に対し、新築する建築物の棟数などから算出される基準量以上の太陽光発電施設の設置を義務づけるものである。
東京都は都内のCO2排出量における家庭部門と業務部門の合計割合が7割と、建物でのエネルギー使用に起因する排出量が多いことや、住宅屋根の太陽光発電施設の設置が現在限定的であることから地域特性を踏まえ、住宅等への太陽光発電施設の設置義務化を検討している。
一方で、本県は産業県であることから、CO2排出量における産業部門の割合が約半分を占めており、業務部門と家庭部門の割合は合計で2割程度にとどまっている。
住宅用発電施設の設置数で比べても、昨年度末時点で本県23万688件に対して東京都は12万3,148件で、本県が倍近い設置数となっていることを踏まえ、本県と東京都における温室効果ガスの排出状況や太陽光発電施設の設置状況が大きく異なることから、今すぐに太陽光発電施設の設置義務化を具体的に検討する段階ではないと考えているが、今後の東京都の動向や成果等を注視していきたい。
【高木ひろし委員】
本県の見込みとして、現在の取組では2030年でのCO2排出の目標値達成は不可能な状況である。本県より取組が進んでいない東京都の様子を見てという姿勢ではなく、本県の強みであった住宅用の太陽光発電の分野をさらに推進してほしい。
2050年にCO2排出ゼロを目標としたのに対し、まだ約30年の期間があるが、今から取り組まなければ30年後に効果はでない。住宅は今後も更新されていくため、先を見越した対策を今から行ってほしい。
大量に太陽光発電施設を普及させると将来的に廃棄物になっていくことが見込まれる。これをどのようにリユースやリデュース、リサイクルしていくか考える必要がある。
太陽光発電パネルの耐用年数は20年から30年と言われているが、これまで全国1位を誇ってきた本県内の太陽光発電施設が今後、廃棄物になっていく可能性が高まっている。本県内における使用済み太陽光発電施設は、今後どのような時期にどれくらいの量が見込まれているのか。
【廃棄物監視指導室長】
2016年に国が作成した太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドラインによると、太陽光発電パネルの耐用年数を25年とした場合、使用済み太陽光パネルの排出は2040年代にピークに達し、全国で年間約80万トンと推計されている。
県内には本年3月現在、家庭用、事業用合わせて289万キロワットの太陽光発電設備があり、これは全国に設置されている太陽光発電設備6,553万キロワットの約4.4パーセントに当たる。
この割合から試算すると、ピークの2040年代には県内から年間約3万5,000トンの使用済み太陽光パネルの排出が見込まれる。
【高木ひろし委員】
2040年には相当な量の太陽光発電パネルが県内からも出てくるので、リデュース、リユース、リサイクルの工程にのせていくためには、今から様々な取組を始めなければ、間に合わない。
本県としてはサーキュラーエコノミーの取組を進めているが、大量廃棄が十数年後に見込まれる中で、太陽光発電モジュールをサーキュラーエコノミーの中にうまく取り込んでいくために、どのような取組を検討しているのか。
【資源循環推進課担当課長(循環・一般廃棄物)】
本県は、これまで循環型社会形成推進事業費補助金により、使用済み太陽光パネルのリサイクルを目指す事業者に対し支援を行ってきた。直近2年間では具体的な設備の整備に3件、また、事業化に向けた検討2件の計5件に支援を行ってきた。
使用済み太陽光パネルについては、2040年代に排出のピークを迎えることが想定されることから、大量の使用済み太陽光パネルのリユースやリサイクルを円滑に行う仕組みを構築していく必要がある。使用済み太陽光パネルについては、本年3月に策定したあいちサーキュラーエコノミー推進プランでも重要な課題として位置づけ、有効に循環利用をする推進モデルを創設している。
このモデルの確立に向け、リサイクル業者、リユース業者、解体業者、リユースパネルの活用事業者など、多様な事業者と有識者で構成するプロジェクトチームを年度内に設立する。このプロジェクトチームにおいて、太陽光パネルのリユースやリサイクル体制等の課題の洗い出し、解決策の検討を行い、太陽光パネルを有効に循環利用していくための仕組みづくりを行っていく。
【高木ひろし委員】
太陽光パネルの県内普及では全国をリードしてきた本県として、これまでの取組の延長線上ではなく、質的、量的な転換が戦略をつくる上で求められている。
太陽光パネルに関しては、建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律でも品目に太陽光モジュールを加えるといった検討を国が進めている。
こうした国の調整を把握し、県内の事業者との十分な協調や市町村との協力を強力に進めてほしい。
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