令和4年県民環境委員会 2022-10-04

 
 
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【高木ひろし委員】
県内では、同性や様々な形のパートナーが夫婦と同様の扱いが受けられるパートナーシップ制度が各自治体で導入されている。本年10月には、みよし市でパートナーシップ・ファミリーシップ宣誓制度が開始され、名古屋市では今秋にパートナーシップ制度を導入すると聞いている。県はこうした各自治体におけるパートナーシップ制度の導入について、どのように支援を行うのか。

【人権推進課長】
パートナーシップ制度は性の多様性を尊重する取組の一つとして、基礎自治体である市町村を中心に導入が進み、本年10月1日現在、県内14市町で導入され、さらに導入の動きがあると承知をしている。
パートナーシップ制度については直接的な法的効果はないものの、自治体が独自に互いを人生のパートナーとし、継続的に生活を共にする関係であることを証明するものであるが、性の多様性に関する理解度には濃淡があり、この制度が広く理解され、様々な経済活動や暮らしの各分野において波及していくためには、性的指向や性自認に対する正しい認識を深めることが不可欠である。
県としては性の多様性についての理解促進に取り組むとともに、市町村に対しては、パートナーシップ制度をはじめとする性の多様性を尊重する取組について、様々な機会で情報提供などをしていきたいと考えている。具体的には本年8月に県や市町村職員を対象とした研修会において、性の多様性、性的少数者に関する講座を実施した。また、10月28日には主に事業者向けに「企業とLGBTQ-具体的な相談事例から組織の対応を考える-」をテーマに講演会を開催するとともに、12月4日から12月10日までの人権週間に合わせて、性的少数者をテーマに含む各種の啓発ポスターを作成し、あらゆる世代に周知するなど、啓発等を進めることとしている。
こうした取組を通じて、性の多様性についての理解を促進し、市町村における取組を支援していきたい。

【高木ひろし委員】
世の中には自分の性的な在り方について、周囲に表明することができず、悩んでいる人がたくさんいる。そうした人を理解し、現行制度の様々な障壁を取り除いていく方向に進んでいかなければならないと思う。
パートナーシップ制度は、行政が行う様々な諸制度の適用において、実質的に愛し合う同性の2人のカップルが夫婦と同等の扱いを受けることができるものであり、大いに評価したい。そのため、県内に広がるよう県も支援することを要望する。
次に、愛知県人権尊重の社会づくり条例には、特徴の一つとして、県が設置する公の施設において、本邦外出身者に対する不当な差別的言動、いわゆるヘイトスピーチの解消に向けた取組に関する規定が設けられている。公の施設に関する指針と表現活動の概要の公表については、これまで検討が重ねられ、本年10月1日に本条例は全面施行された。そこで、指針や概要の公表に関して、これまでどのような検討を行ってきたのか。その内容とポイントについて伺う。

【人権推進課長】
公の施設に関する指針についてであるが、これは愛知県人権尊重の社会づくり条例第9条に基づき、本県が設置する公の施設の管理者が施設の利用許可に当たっての判断の指針となるように定めたものである。
判断基準では、ヘイトスピーチを行うおそれがあることが明らかな場合やヘイトスピーチを行うおそれがあることが疑われる場合で、申請者から利用目的の聴取や申請者の活動歴の確認等を行った結果、ヘイトスピーチが行われることが明らかになった場合は、不許可とすることとしている。また、許可後、ヘイトスピーチが行われることが明らかになった場合は、許可の取消しを行うこととしている。
こうした判断基準は2016年及び2019年に庁内に通知した基準を改めてまとめたものであるが、新たな手続として各施設管理者がヘイトスピーチの該当性の判断に迷う場合には、条例に基づいて設置した愛知県人権施策推進審議会へ意見照会できることとした。
なお、公の施設は利用許可申請があれば許可することが原則となっているため、判断基準の運用に当たっては、表現の自由その他の日本国憲法の保障する国民の自由及び権利を不当に侵害しないように留意しなければならない旨も指針に記載している。
次に、表現活動の概要の公表についてであるが、これは愛知県人権尊重の社会づくり条例第10条に基づき、ヘイトスピーチに関する表現活動が行われた場合に、その概要を公表するものである。
ヘイトスピーチが行われた旨の申出については、県内で行われた表現活動を対象とし、申出内容は、いつ、どこで、どのような表現行為か、これらの事実を証する物の4項目としている。
申出または県において公表の対象となり得る事案を把握した場合には、審議会に諮り、ヘイトスピーチが行われたかどうかを判断することとなる。その結果、公表することになった場合は、活動の行われた年月日、場所、表現行為の内容の3点を公表する。
これは、どのような表現活動がヘイトスピーチに該当するかを県民に周知することにより、ヘイトスピーチの解消につなげていくためであり、罰則規定は設けず、またヘイトスピーチを行った人の氏名や団体名、住所等も公表しないこととしている。
なお、不当な差別的言動は本邦外出身者に対するものであるか否かを問わずあってはならないものであるので、公表に当たってはそうした旨も併せて県民に啓発していく。

【高木ひろし委員】
本邦外出身者や他民族にルーツを持つ人の心を深く傷つけることがないように、愛知県人権尊重の社会づくり条例が実効性をともない機能することを強く期待する。
ヘイトスピーチと関連して、犯罪や人に危害を加えるといったヘイトクライムが世界的に問題となっている。国内では他国、他民族の人に対して危害を加えるおそれがあるものであり、アメリカなどでは、アジア系の人に対する迫害や差別などである。
このヘイトクライムに関して、本年8月末に京都地方裁判所で重要な判決が言い渡された。その内容は、昨年8月に在日コリアンが多く暮らしている京都府宇治市のウトロ地区で7棟が全半焼する事件があり、当初は失火だと思われていたが、後ほど放火であることが判明し、被告の病院勤務の若者が懲役4年の実刑判決となったものである。
この事件は、京都で起こった事件であると思われがちであるが、実は昨年8月にウトロ地区で放火事件が起きる2か月前に、本県の大韓民国居留民団の本部が放火されるという事件があり、この放火は大事には至らずぼやで終わったが、この犯人は狙った効果が十分世間の話題にならなかったことに不満を感じて行動をエスカレートさせて奈良県、京都府で放火をしたものである。この事件の背景には、京都府宇治市のウトロ地区に何十年にも及ぶ差別と迫害の歴史的な遺産として平和記念館が完成することを妨害する目的があり、ヘイト感情が高ぶっていたことがわかる。
京都府での事件の前に本県でも事件を起こしており、この事件は本県とも関わりのあるヘイトクライム事件であると思う。そこで、この判決や事件について、どのように受け止めているのか。

【人権推進監】
特定の出自を持つ人への偏見や嫌悪感に基づく犯行は、決してあってはならないと考える。愛知県人権尊重の社会づくり条例の前文には、人種、国籍、民族、信条等による不当な差別をはじめとしたあらゆる人権に関する課題を解決していくために、たゆまぬ努力を続けていくことが必要であると明示している。
また、本条例では人権課題として、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進について個別に規定している。
京都府での事件の報道では、背景にウトロ地区に関する事実誤認や無理解があるのではないかということであるが、本県では公の施設に関する指針や表現活動の概要の公表のほか、県民に不当な差別的言動の解消の必要性について理解を深めてもらうため、必要な啓発等の施策を講じることとしている。
さらに、インターネット上の誹謗中傷等の未然防止及び被害者支援についても、本条例の規定に基づき、誹謗中傷等を未然に防止するため、必要な教育や啓発等を推進することとしている。
このような事件が発生しないように、愛知県人権尊重の社会づくり条例に基づき、実効性のある取組を推進することで、多様性を認め合い、誰一人取り残すことのない人権尊重の社会づくりを推進していきたい。

【高木ひろし委員】
本県には、東京都に次いで非常に多くの外国籍を有する人が住んでいる。また、4年後には本県で第20回アジア競技大会が開催され、アジア各地から多くの選手や観客が訪れる。国籍や人種によって差別を行い、感情に基づいて排外的な行動に発展することがないよう、愛知県人権尊重の社会づくり条例の制定を契機に取組を強化することを要望する。


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