令和4年アジア・アジアパラ競技大会調査特別委員会 2022-08-02

 
 
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【高木ひろし委員】
アジア・アジアパラ競技大会における競技施設について、愛知県新体育館はアクセシビリティガイドラインに沿って設計されている。愛知県新体育館は約2万人が入るアリーナであり、アクセシビリティガイドラインでは、全観客用の座席数のうち1パーセントを車椅子用の座席として確保するという基準がある。設計を見ると、確かに全座席のうち150席分の車椅子用のスペースが確保されている一方、車椅子に乗った150人が車椅子用の席までどのように移動するのかを考える必要がある。障害者団体などから話を聞いていたときに痛感したが、施設内の座席数だけでなく、どのように車椅子で会場へ向かうのか想定しなければならない。
東京2020オリピック・パラリンピック競技大会の場合はどうであったのか。例えば、新国立競技場など、東京2020オリピック・パラリンピック競技大会のために造られた施設があった。そこには、恐らく1パーセント以上の車椅子用のスペースが確保されていたはずだが、車椅子の人はどのように会場へ向かい、車椅子用の席にたどり着いたのか。
また、災害時は一斉に避難しなければならない。100人以上の車椅子を使用する人が、一般の人と共に避難しなければならず、車椅子を使用する人の避難方法を想定する必要がある。
単に設備を設計するだけでなく、設備周辺の交通機関や街中の動線などを含めた検討が必要になると思うが、東京2020オリピック・パラリンピック競技大会では、具体的にどのように検討していたのか。

【仲前参考人】
障害のあるなしに関係なく、一般の人と同じように過ごしてもらえるように取り組むことが、我々の基本的な考え方である。そのため、会場の中は、運営を行う公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が環境整備を行うが、会場に行き着くまでの公共交通機関に対しては、協力をお願いする必要があった。
例えば、新国立競技場周辺にあるJR千駄ヶ谷駅のホームや構造物を大幅に改修してもらった。具体的には、各部分にエレベーターが設置され、車椅子を使用する人が使いやすくなった。また、駅にあるトイレもガイドラインを参照してもらい、使いやすくしてもらった。さらに、東京地下鉄株式会社には、外苑前駅等のエレベーターを複数化してもらった。
以上のように、大会時の競技会場の配置に合わせ、エレベーターの設置など、できるところを実現してもらった。
その上で、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会として、チケットを持っている人へガイドブックを配布したり、スマートフォンのアプリでのルート検索時に、車椅子の場合に使えないルートと使えるルートを事前に伝え、行き方を計画してもらえるようにした。
また、鉄道事業者などと協力し、車椅子を使用した場合でも、ほかの人たちと同じように出入りできる環境づくりを行った。
さらに、公共アクセスがない会場には大会で観客用のシャトルバスを運行したが、車椅子を使用した場合、バスの乗降に時間がかかる場合があるため、他の人を待たせることを気にする車椅子を使用する人の気持ちをくみ取り、UDタクシー等を用意した。
様々な人ときめ細かく連携し実現することが重要であり、アジア競技大会及びアジアパラ競技大会においても、手厚く支援してほしい。


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