和4年6月定例会(第4号) 2022-06-21

 
 
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◯九十二番(高木ひろし君)
私のほうからは、通告いたしました三つのテーマについて、順次質問をさせていただきます。
まず第一は、愛知県新体育館のユニバーサルデザインについてであります。
愛知県政百五十周年記念事業の一つに位置づけられております愛知県新体育館は、いよいよ本体工事が間もなく始まろうとしております。
この体育館は、最先端のICT機能を備えた世界最高レベルのスマートアリーナとして、大相撲名古屋場所や国際スポーツ大会だけでなく、音楽コンサートなど様々なイベントが開催され、国内外から多くの人々が集う施設になることが期待されております。
また、この新体育館は、二〇二六年のアジア競技大会、そして、アジアパラ競技大会の会場ともなるのであり、当然、ユニバーサルデザインの点においても世界最高レベルの施設とすることが求められております。
その基準は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会によるTokyo二〇二〇アクセシビリティ・ガイドラインに詳細に示され、新国立競技場をはじめ、東京オリパラの関係施設全てに適用されたところであります。
その基礎にあるのはIPC(国際パラリンピック委員会)のガイドラインであり、車椅子を使用する身体障害者だけではなく、視聴覚の障害、知的・精神障害のある人々が不安や差別を感じることなくアクセスできるよう、利用できるよう、様々な設備基準を定めております。
今回の新体育館につきましては、県が事業者からの提案を募集する際に示した要求水準書において、愛知県人にやさしい街づくりの推進に関する条例をはじめ、関係法令の遵守はもちろんのこと、こうしたユニバーサルデザインに関する条件が明確に示されており、設計に当たっては、障害のある方や高齢者などの意見も十分に伺いながら進め、誰もが使いやすい施設となるよう注文をつけております。
こうした確認に基づきまして、昨年の十二月に新体育館のPFI事業者となりました株式会社愛知国際アリーナは、障害者団体などに対する説明会を開催いたしました。
そこで示されました設計図では、確かに、車椅子使用者用スペースは全座席の一%に当たる百五十席設けられ、多機能トイレは車椅子使用者用スペース百五十席の一〇%に当たる十五か所が設置される計画であるなど、いずれもTokyo二〇二〇アクセシビリティ・ガイドラインの要求基準を満たすものとなっておりました。
しかしながら、この説明会の場で、来場者の新体育館へのアクセス、動線に基本的な問題が指摘をされました。最大一万七千人の来場者を迎えるメインエントランスが二階部分に設置されまして、幅四十メートル、高さ七メートルの四十九段に及ぶ大階段を上らなければこの入り口にたどり着けないという構造になっていたことであります。
当初計画には、この階段に手すりやスロープすらなく、十五人乗りの屋外エレベーターが一機のみ傍らに設置されているという状態でありまして、これでは、車椅子やベビーカーを利用される方、高齢者には大変なバリアであります。下から見上げると、その印象はまるで威風堂々たる大神殿のようだと、こんなふうに評するバリアフリーの専門家もいらっしゃいました。ユニバーサルデザインとはかなりかけ離れたイメージだと言わなければなりません。
この施設の利用者の移動、動線に関わる課題は、今回のPFI事業者の案が、昨年二月、選定委員会によって評価、決定される段階で既に指摘されていた課題でもあります。
選定委員会の審査報告によりますと、次のような要望事項が付記されておりました。いわく、一般の利用者にも様々な事情──高齢、ベビーカー、エスカレーターに乗れないなど──の方々がいるため、車椅子以外の利用者もエレベーターが利用できるよう十分配慮すること。そして、エレベーターやエスカレーターの配置位置、その数量及び運用方法については詳細設計時に十分配慮すること。これが特に要望事項として付記された上での選定結果であったのです。にもかかわらず、障害者団体に示された設計図には、スロープやエスカレーターもない大階段の上にエントランス、大部分の方々の入り口が設定されるという案が示されたわけでありまして、これに対して批判や要望が噴出するのは当然であったと言えましょう。
そこで伺います。
これまでPFI事業者が設計を進めてくる経過において、障害のある方々から意見を聞くためにどのように対応してきたのか、また、いただいた御意見がどのように設計内容に反映されてきたのかお答えをいただきたいと思います。
もとより、ユニバーサルデザインの実現には、様々な障害当事者の方々の意見をしっかりと聞き、共につくり上げていくというきめ細かい対応を積み重ねることが重要であります。
中部国際空港セントレア、そして、東京の新国立競技場の場合には、設計の初期段階から障害当事者の方々などの参画を求め、数年にわたり二十回以上のワークショップを重ねつつ、ユニバーサルデザインの好事例をつくり上げたのであります。そういう意味では、今回の障害者団体等とのこれまでの話合いは、期間的にも内容的にも極めて不十分なものと言わざるを得ないと思います。
そこで、今後の進め方について伺っておきます。
七月に本体工事に入ることになっておりますが、案内表示や来客者の誘導体制など、運営面の課題を含め、障害者団体との話合いを継続して、ユニバーサルデザインのアリーナとしてのレベルアップを図っていく余地が多分に残されていると考えられますが、今後どのように対応していこうとされておるのかお答えいただきたいと思います。
二番目のテーマであります。
設楽ダム建設事業の基本計画の変更についてであります。
国土交通省は──中部地方整備局でありますが──五月十七日に、建設段階にある設楽ダムについて、その総事業費を二千四百億円から三千二百億円へと八百億円増加させるとともに、完成年度を二〇二六年度から二〇三四年度へと八年延長するという基本計画の大幅な変更を発表し、県に同意を求めてきております。
このダムは、皆さん、既に御承知のとおり、利水、治水にわたる本県最大規模の多目的ダムとして、一九七〇年代に国が計画を発表して以降、その必要性や費用負担、住民生活や自然環境への影響などをめぐって様々な議論が半世紀近く交わされてきました。そして、二〇〇八年に国が最初の基本計画を策定し、本県としても、これに初めて県議会を含めた同意をいたしました。ここで一定の結論に達したものと理解しております。
その時点での計画の内容は、総事業費二千七十億円、工期は二〇二〇年完成というものでありまして、県の負担は七百二十一億円とされていました。その後、全国的なダム見直しの動きの中で、二〇一〇年から二〇一三年にかけて、本県をはじめとする関係自治体や専門家から成る検討の場が設立され、また、事業主体である国によって五年間に及ぶ設楽ダムに関する事業検証が進められてきました。その結果、事業の妥当性が確認されたといたしまして、二〇一四年に再び設楽ダム計画は動き出したのであります。
しかし、二〇一六年になって、国は、物価上昇や消費増税を理由に、総事業費は二千四百億円に引き上げると計画を変更、完成年度も二〇二六年と延長されました。この時点での県の負担は八百十億円に増えております。
二度目の計画変更となる今回、その中身は、働き方改革への対応とか、資材価格の変動に対する対応など、社会的要因の変化以外に、金額的にも、内容的にも、二〇一六年の計画変更とは大きく事情が異なる要素を含んでおります。
二点に絞って、県当局にお尋ねしたいと思います。
まず第一は、今回、事業費が大幅に膨らみ、工期が延長された最大の要因は、当初の計画で想定していなかったダムサイトやダム湖周辺の地盤の脆弱性が詳細な地質調査によって初めて明らかとなったことで、付け替え道路の位置変更や地滑り対策の追加、コンクリート打設量の増加など、追加工事と工法変更が必要になったとされていることであります。 もともとこの設楽ダム予定地の地層は極めてもろく、幾筋もの断層破砕帯が走っていて、地層的にはダムの適地ではないのではないかという指摘はかねてから出されておりました。しかし、事業者は、問題となるような断層は存在しない、地盤に特に問題はないと言い続けてきておったのであります。それが、転流工や本体掘削のための準備のため、二〇一五年から二〇一七年にかけて実施したボーリング調査に基づく詳細な地質分析によって、ダムを貫く多くの断層と地滑りブロックの存在を初めて認めざるを得なかったのであります。問題は、その対策としての追加工事が、ダムの安全上、必要かつ十分なものであるのかという点であろうと思います。
国が行った地質調査の分析報告書を見ますと、ダム本体の直上流左岸のダム湖斜面には、深さ六十メートルにわたって三層から四層の地滑りブロックが存在し、その最大のものは幅二百二十五メートル、長さ三百メートルにも及ぶ深層超巨大ブロックと記載されております。深い層に大変大きな地滑りブロックがあるということをこの報告書は述べております。しかし、今回追加された地滑り対策は、その表層部の地滑り対策のみを想定したものでしかありません。
万が一、ダム湖が満水の状態において、地震など何らかの影響でこの巨大地滑りブロックが動き、いわゆる深層崩壊というものを起こせば、ダム津波という大災害にもつながりかねないという指摘があります。
そこでお尋ねいたします。
今回の地質調査の結果に基づく今回の地滑り対策やダム本体掘削量及び打設量が見直されておりますけれども、ダムの安全性ということについて問題はないのか、県のお考えをお聞きしたいと思います。
二点目の問題は、今回の大幅な事業費の増大によって、二〇一〇年から二〇一四年にかけて行われた設楽ダムに関する事業検証を見直す必要が生じるのではないかという問題であります。
国が行った事業検証は、治水、利水、流水の正常な機能の維持と、この三つの機能について、ダムとその代替案を比較してコストや事業期間などを試算した結果、総合的な評価で最も有利な案は、やはりダムによる案だということで結論を導いたものでありました。
知事も常々おっしゃっておりますように、こうしたダムなどの大規模かつ長期にわたる事業につきましては、大きな県民負担を伴うものであり、時代の変化に合わせた不断の検証が必要であります。今回の変更では、当初二千七十億円であった設楽ダムの建設コストが三千二百億円と一・五倍になり、県の負担額は千七十億円に膨らんでおります。
そこでお尋ねいたします。
このように事業費が増大してもなお、本事業の費用対効果が得られると考えるのかどうか、県のお考えをお聞きしたいと思います。
三番目の課題は、愛知県公安委員会の事務専決規程の在り方についてであります。
昨年の十月七日、名古屋高等裁判所は、愛知県警が二〇一六年七月から十二月にかけて沖縄県公安委員会の要請を受けた沖縄県東村高江の米軍北部訓練場のヘリパッド移設工事現場に愛知県機動隊員を派遣したことが違法であるとして、当時の警察本部長に対して、機動隊員らに支払われた時間外手当相当額を賠償するよう愛知県に命じる判決が行われました。
この高裁判決は、愛知県公安委員会の事務専決規程、愛知県公安委員会が本来自ら決定すべき決定を本部長に委ねるという専決の規程でありますが、警察官の県外への派遣が異例または重要と認められる場合には公安委員会の承認を受けなければならないと定めておりまして、今回の派遣はこれに該当するので、愛知県警察本部長が専決により派遣を決定したことがその手続において違法であると、こう明快に判断したのであります。
また、判決の中では、都道府県公安委員会は都道府県警察の民主的な管理に当たるものであるから、警察法上、他の公安委員会からの援助要求に同意するかどうかは、都道府県公安委員会が合議体として審議して判断すべきであるのが原則であると解されると述べておりまして、警察法が付与いたしました警察官のための権限を、事実上、警察本部長の専決に丸投げしているとも見られる愛知県公安委員会の在り方そのものに重要な問題提起をしているというふうに受け取らなければなりません。
この高裁判決そのものに対しましては、愛知県は最高裁に昨年十二月十四日に上告をしておりますので、最終判断、確定判決は最高裁での判断を待つべきものとなりますが、愛知県議会としては、この高裁判決の指摘を重く受け止め、公安委員会と警察本部のあるべき関係について議論すべきであると強く思うところであります。
そこで質問いたします。
そもそも公安委員会制度とは、戦前の内務省の下に置かれた国家警察による人権じゅうりんなどの反省に立って、政治的中立性を確保するために、国民を代表する公安委員を知事や市長の推薦によって選任し、議会が同意して構成されています。そして、自治体警察を民主的に管理する責任を負う、極めて重要な機構であります。
しかし、一方、その権限が風俗営業法から道路交通法に至るまで、実に広範多岐にわたっておりますために、定例的、定型的なものや軽易なものまで一々合議体として決定をすることは現実的ではないと、効率的ではないといたしまして、事務の効率化のために警察本部長などに専決や代行をさせることが行われておるのであります。しかし、これがゆめゆめ公安委員会を形骸化させることがないよう、専決の範囲とルールは厳格に設けなければならないと考えます。
愛知県公安委員会においては、こうした趣旨を踏まえて、どのように専決規程を定め、運用していらっしゃるのかお聞かせをいただきたいと思います。
実は、この専決規程が全面的に改正されました昭和五十三年に、愛知県警察本部自らがこの専決規程の解釈指針を警察内部向けに発出しております。これは愛知県警のホームページで見ることができます。そこでは、専決とはあくまで内部委任でしかなく、対外的には行政上の効果と責任は公安委員会に帰属するものであることを自覚するよう警察に促すとともに、専決ではなく公安委員会の承認を受けるべき異例または重要な警察官や機動隊の県外派遣に当たるケースを次のように示しています。一、その処理によって後日紛議を生ずることが予想されるようなもの。二、社会的に反響の大きい事案。などであります。
この考え方によれば、今回の沖縄の米軍基地建設に関わる住民の抵抗運動や、また、別の時期に福井県の大飯原発の再稼働をめぐる市民の意思表示などに対しても愛知県警は機動隊を県外に派遣しておりますが、このような事例は、県民の中にも様々な意見があり得るものでありまして、公安委員会が自ら決定した上で派遣されるというのが筋となる、そんな例ではないかと思われます。
警察本部長に伺いたいと思います。
国民の中でこうして大きく賛否が分かれるから、その事態に対処するための派遣である場合に、派遣に対して、県民の中からも批判が起き得ることも当然であり、こうしたケースには、警察の解釈指針にあるとおり、公安委員会の承認を求めてから派遣すべきケースということに扱うべきだと考えます。警察本部長のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
以上、三点にわたり県当局各位に質問をさせていただきました。
以上で壇上からの私の第一問を終わらせていただきます。真摯な御答弁をよろしくお願いいたします。(拍手)

◯スポーツ局長(成瀬一浩君)
愛知県新体育館の設計における、障害のある方などとの意見交換及びいただいた意見の反映状況についてお答えします。
設計を進める中で、PFI事業者である株式会社愛知国際アリーナがこれまでに、昨年十二月、今年四月及び六月の合計七回、合同の意見交換会を、さらに個別の説明も含め、県も参加して開催してまいりました。これらの意見交換会には、肢体や視覚、聴覚等の障害、子育て世代や高齢者などの関係団体及び学識者の方々に御参加をいただきました。
主な意見としては、来場者は、原則、屋外の階段やエレベーターを使用して二階のデッキにあるエントランスから入場する計画となっているが、障害者等には利用が困難であるという御意見をいただきました。また、車椅子使用者の観客席スペースの拡張や多機能トイレの充実のほか、継続的な意見交換会の開催などを求める御意見をいただきました。
こうした御意見を踏まえ、二階エントランスへのアクセスについては、従来の設計にあった階段に加え、スロープ及びエスカレーターを追加するとともに、当初十五人乗りで計画していた屋外エレベーターを二十四人乗りに拡張する変更を行いました。あわせて、障害のある方を含めた来場者が一階からも入場し、屋内のエレベーターで二階以上の観客席に上がれるよう、一階にもエントランスホールを設けることとしております。
車椅子使用者の観客席スペースの拡張についても、同伴者や補助犬が座ることができるスペースを設け、また、多機能トイレの充実については、混雑を緩和するため、増設や配置を見直すなどの改善を行うこととしております。
次に、愛知県新体育館の着工後におけるユニバーサルデザインに関する今後の対応についてお答えします。
これまでの意見交換会では、誰もが入退場しやすい動線の整備、車椅子使用者の観客席スペースの拡張や多機能トイレの充実といった建物の設計に関することのほかにも、分かりやすい案内表示や混雑時における安全確保など、附属設備や運用面での対応についての御意見もいただいております。
このため、例えば、AIを搭載した案内板による視覚的な案内や音声案内を計画しておりますが、視覚や聴覚に障害のある方などからの御意見を踏まえ、より分かりやすい案内ができる機能や表示の方法を検討していくこととしております。
さらに、会場スタッフが障害のある方などの着席状況を把握し、緊急時には迅速に駆けつけ、優先的に避難できるよう案内するなど、運用面での対応についても検討を進めております。
ユニバーサルデザインの実現に当たっては、実際に設置する設備や備品の形状や位置など、関係者の皆様から御意見をいただいて気づくこともあり、意見交換会を継続して開催していくことは重要であると認識しております。
株式会社愛知国際アリーナは、新体育館の着工後においても関係者の皆様から御意見を伺っていくとしており、本県としましても、引き続きPFI事業者と共に適切に対応してまいります。

◯建設局長(道浦真君)
設楽ダムの建設事業の基本計画の変更についてのお尋ねのうち、初めに、ダムの安全性についてであります。
ダム建設予定地の地質については、国が二〇二一年五月に予定地の周辺にダム建設に支障となる断層が存在しないことや、ダム本体の基礎岩盤が重力式コンクリートダムを建設する地盤として十分な強度を持ち、ダム建設に支障がないことを公表しております。
また、国は、このたびの基本計画の変更で、ダム本体の基礎となる十分な強度を有する岩盤が当初想定より深くなったため、土砂掘削量及びコンクリート打設量の見直しをしております。
さらに、ダム湖斜面に対する必要な補強工事として、斜面に鋼製のくいを打設するなど、地滑り対策の見直しも行っております。
いずれの見直しも、これまでに実施した地質調査の結果を踏まえ、適切な対策を講じるものであり、ダムの安全性を十分確保して事業が進められていると考えております。
次に、費用対効果についてであります。
建設中のダム事業における費用対効果の分析を含む事業の評価については、国が五年ごとの実施に加え、事業の節目にも実施することになっております。
設楽ダム建設事業においては、これらの評価を二〇一四年度のダム検証の時点や二〇一六年度の第一回計画変更の時点、二〇一八年度のダム本体着工の時点など、これまでに計六回実施しております。
今回の基本計画の変更に合わせた事業の評価は今後速やかに行われると聞いており、この中で変更後の事業費に対する費用対効果の分析が行われます。
評価の最終的な結果については、学識経験者などの第三者から構成される委員会の審議を経て結論が出されることになりますが、現在のところ、国からは、変更後の計画においても、費用対効果を含め、これまでの評価に変わりはないと聞いております。
県といたしましては、引き続き、国に対し、事務事業の合理化、効率化を図るとともに、水源地域の生活再建対策に万全を期すなど、しっかりと地域に寄り添って取り組んでいくよう申し入れてまいります。

◯警察本部長(國枝治男君)
愛知県公安委員会事務専決規程の専決のルールの考え方についての御質問に、同公安委員会の委任事務を担当する立場からお答えいたします。
愛知県公安委員会事務専決規程につきましては、愛知県公安委員会の権限に属する多様な事務に関し、当該事務が公安委員会の事務とされた趣旨を踏まえつつ、同時に迅速かつ能率的な処理を実現すべく、一定の事務につきましては、同公安委員会の名において警察本部長が意思決定を行うことができるように定め、運用させていただいているものと承知しております。
議員お示しのとおり、現在上告中の事案があり、今後の訴訟への影響も予想されますことから、個別の事例についての答弁は差し控えさせていただきますが、公安委員会から示されている専決規程では、専決可能とされている事務でありましても、異例または重要と認められるものについては、専決によることなく合議体での意思決定を受けるよう定められております。
この異例または重要及びその部内的解釈として、おおむね次のものを言うとしている、後日紛議を生ずることが予想されるものや社会的に反響の大きいものへの当てはめにつきましては、個別の事務やその根拠法令に則して、主として愛知県内の治安に与える影響等の観点から判断されるべきものと考えております。

◯九十二番(高木ひろし君)
三つのテーマについて、それぞれ御答弁をいただきました。これに対して、要望を申し上げたいと思います。
まず、新体育館の問題でありますが、このユニバーサルデザインに関しましては、障害者団体との意見交換の中で様々な改善策が取り入れられてきていることは理解をいたしました。
それから、問題の階段上のメインエントランスへの動線の問題につきましても、当初案にはなかったスロープやエスカレーターを設置すること、また、屋外エレベーターを拡張すること、そして、一階部分にもエントランスを設け、これを充実させることなどが改善策として示されたことは一定の評価ができると思います。
しかしながら、この改善策につきましても、エントランスが一階と二階に分かれると、あるいはエレベーターやスロープの位置によりましては、右に曲がるか左に曲がるか、来場した様々な障害を抱えた方がどのルートをたどるべきなのか迷われることが想定され、さらなる案内表示等の工夫が必要だと思います。
そして、イメージの上での大階段というものが引き続きメインエントランスへ通ずるものとして設置されている点については変わりがないわけでありますので、これについてもさらに検討していく必要があるのではないかと思います。
さらに、新体育館は現在の愛知県体育館の二倍以上の収容人数となりまして、その大半の来場者が地下鉄名城公園駅を利用することが想定されております。この地下鉄駅と新体育館の接続の在り方についても、今後、名古屋市などとの十分な協議を経て、スムーズでバリアフリーな移動をどのように保障することができるのか、重要な課題の一つだと思います。
新体育館のオープンまではまだ三年あります。新国立競技場においても、相当いろんな紆余曲折があって新しい国立競技場も完成をいたしておりますので、この愛知県の新体育館につきましても、引き続き、障害のある方々との意見交換や名古屋市などとの関係機関との協議を重ねて、新体育館がユニバーサルデザイン愛知のシンボルとして、その名に恥じないアリーナになり、後世に残るレガシーに仕上げていただきたいと強く要望するものであります。
設楽ダムの問題については、おおむね県からいただいた答弁は、事業主である国がこう言っている、国がこう説明しているということに終始をいたしております。
しかし、国の今回の説明資料の中には、私が今摘示いたしました、ボーリング調査によってどのような地質構造が明らかになったのかという資料が含まれておらず、追加工事や工法の変更によってその深層崩壊のリスクをどこまで減らせるのかという説明は十分ではないと思われます。事がダムの安全性や防災上のリスクに関わるだけに、この点は見逃せません。
国の説明をうのみにするだけではなく、県として、安全性の問題やコスト、便益の問題について、自ら調査検討し、国に対して言うべきことは言い、県民に理解を求めていくという姿勢を示していただくよう要望しておきます。
三点目の公安委員会の事務専決規程の問題であります。
今回、名古屋高裁で違法と判断されたのは愛知県警のケースだけでありまして、今回、実は沖縄への機動隊派遣を行ったのは愛知県だけではなく、東京都、千葉県、神奈川県、大阪府、福岡県、合計六つの都道府県が行っておりますが、その派遣手続は一様ではありません。
それぞれの公安委員会は専決規程を持っておりまして、警察法六十条、公安委員会による他の都道府県警察への援助要求について、全面的に県警本部長の専決に委ねているのは実は愛知県だけだということが分かっております。
他の都道府県では、災害、人命救助及び犯罪捜査等で緊急を要する場合、また、十人以内、十四日以内の期間の派遣という具合に、専決できる範囲を厳しく限定し、現に六年前の沖縄への派遣についても、事前に各公安委員会の承認を得た上でほかの都道府県公安委員会は派遣をしております。
この差は、単なる手続の問題ではないと私は理解いたします。公安委員会制度の本旨、この重要性を理解すればこそ、この手続が重要なんだと思います。
二十年ほど前、警察改革が全国的に大きな議論になりました。その中のテーマの一つは、戦後警察の特徴である公安委員会制度が形骸化しているのではないかという指摘でありました。愛知県公安委員会がその権威を保ち、県民の皆さんからの本当の信頼を担保するためにも、事務専決の在り方を見直していただくよう、強く改めて要望させていただきます。
以上です。


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