【高木ひろし委員】
愛知県新体育館は2025年夏のオープンに向けて、設計が大詰めを迎えており、本年7月からは本体工事に入る予定で、完成後は大相撲名古屋場所や2026年アジア競技大会の会場として使われる予定であると聞いている。国際的なスポーツ大会や全国レベルのコンサートなど、様々なイベントがこの会場で開催されて、多くの人が利用することを見込んで建設されると考える。
また、アジアパラ競技大会の誘致が間もなく決定されると思うが、愛知県新体育館が大会の会場として利用された場合は、障害者が多く来場することが見込まれる。
愛知県新体育館は、座席やトイレ、観客の動線やサインなどにおいて、どのように障害者等に配慮した設計となっているか。Tokyo2020アクセシビリティ・ガイドラインや国際パラリンピック委員会アクセシビリティガイドの基準を満たしているのか。
【新体育館室長】
愛知県新体育館整備に当たっては、PFI事業者に対する要求水準として、人にやさしい街づくりの推進に関する条例等を遵守するほか、Tokyo2020アクセシビリティ・ガイドライン等も踏まえて計画することを求めており、現在、株式会社愛知国際アリーナが、誰もが分かりやすく、利用しやすい施設となるよう設計を進めている。
例えば、車椅子使用者用スペースは、ガイドラインが、パラリンピック会場に1パーセントから1.2パーセントの座席比率の確保を求めているため、愛知県新体育館でも固定と仮設を合わせて150席、全席数の1パーセント程度を確保するとともに、大会に応じてさらに増設することも可能と考えている。
また、多機能トイレは、ガイドラインが、必要とする利用者15人に1か所の割合、約7パーセントで設置することを求めているため、愛知県新体育館でも、車椅子使用者用スペース150席に対して15か所、約10パーセントを各階に複数ずつ配置する。
動線やサインは、AI案内板による視覚的な案内や音声案内を導入するほか、分かりやすい案内表示や誘導ブロック等により、安全でスムーズな動線を確保する予定である。また、コンコースは耐火構造、排煙システムを備え、災害時には、館内各所に配置するモニターに避難情報を表示し、安全に誘導できるよう計画している。
そのほか、Tokyo2020アクセシビリティ・ガイドラインには、エレベーターや更衣室など、多くの項目や基準があるため、これらの基準を満たすよう、設備面の設計を行うとともに、運用面でのフォローも含めて検討していく。
【高木ひろし委員】
東京都の新国立競技場を設計する際には、14の障害者種別による障害者団体との間で、3年半にわたって21回の意見交換会を開催したと聞く。愛知県新体育館の設計に当たり、障害者団体との意見交換等、これまでどのようなやり取りを行ったのか。
【新体育館室長】
愛知県新体育館のユニバーサルデザインの設計に当たっては、昨年度の事業者選定の際、入札参加者に対し、高齢者や障害者等からの意見聴取会を設計初期の段階で開催することを求めている。
このため、PFI事業者に選定された株式会社国際アリーナが、昨年12月に、実施設計に向けて意見聴取会を開催した。意見聴取会には視覚や聴覚、重度障害、子育てなど、38の関係団体や学識者が参加し、2階のメインエントランスへの階段のバリアフリー化や多機能トイレの充実等のほか、継続的な意見聴取会の開催等の意見が出た。
これらの意見は、PFI事業者から関係団体にフィードバックをするとともに、今後も継続的に意見を聴き、PFI事業者と共に検討しながら整備・設計を進めていく。
【高木ひろし委員】
工事着工まで半年を切ったが、障害者団体からのヒアリングが1度しか行われておらず、形式的なものと言わざるを得ない。愛知県新体育館におけるユニバーサルデザインの実現に重きを置く必要があると考えるが、南側の正面エントランスは、脇に15人乗りのエレベーターが1台設置してあるものの、およそ30段の大階段となっている。
なぜこうした設計となったのか。メインエントランスにおける階段の存在についてどのように捉えているか。また今後、横にスロープを設置したり、エレベーターを主にした動線に変える等の対応は可能か。
【新体育館室長】
基本的な考え方であるが、1階部分は競技面であるため、競技関係者は1階の入り口等から入場していただく、観客は2階以上の席となるため、2階に上がって入場していただく、というように動線を分けた結果、このような設計となっている。
【高木ひろし委員】
愛知県新体育館は150席の車椅子専用席があると聞くが、150人余りの車椅子使用者が来場した場合、多くの人を、15人乗りのエレベーター1台で席まで案内できるのか。
セントレアは、中部国際空港駅で下車した後、各ゲート及びフロア間の移動に段差がない。僅かに傾斜するスロープを上り下りするだけで、出発ゲートや到着ゲートにアクセスできることが、セントレアの一番の特徴だと言われている。
しかし、愛知県新体育館の設計では、メインエントランスに大階段があり、ユニバーサルデザインの実現という観点からは、専門家からも厳しい意見が出ていると聞く。
ユニバーサルデザインの世界最高水準を目指す上で、障害者団体から出された意見等に対して、今後対応していくのか。
【新体育館室長】
今後は、12月に出された意見への対応について、本年4月頃を目途に、再度意見交換の場を設けるよう、PFI事業者が関係団体と調整している。また、ヒアリングや協議を行いながら実施設計を進め、設計完了時には、意見の反映状況を関係団体に確認する予定である。
さらに、PFI事業者は、本体工事の施工途中にも、適宜現地を確認してもらうほか、竣工後も、運用面も含めて意見を聴く予定であり、県からも、PFI事業者に適切な対応を働きかけていく。愛知県新体育館がユニバーサルデザインのよりよい施設となるよう、関係団体の意見を聴きながら進めていきたい。
【高木ひろし委員】
愛知県新体育館は、本県がアジアパラ競技大会を誘致したことを後世に残すレガシーである。負のシンボルだと言われることがないよう、着工時期や設計を見直してでも、障害者のユニバーサルデザイン上の問題について最大限の対応をお願いしたい。
【高木ひろし委員】
障害のある生徒の高校進学について伺う。
名古屋市瑞穂区に、人工呼吸器をつけてストレッチャーに乗った筋萎縮症という重度障害の少女がおり、地元の小中学校を卒業して、昨年から名古屋市立中央高校に通っている。この事例は、多くの人の支援に支えられて実現した就学だと捉えている。
高等学校における医療的ケアの実施について、県教育委員会では実施要綱を策定したと聞くが、要綱の策定目的を伺う。
【高等学校教育課長】
昨年9月18日に施行された医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律、また、法律の施行に際しての文部科学省通知では、学校の設置者は、医療的ケア児に対し適切な支援を行う責務を有しており、これから入学する予定の医療的ケア児を含めて、切れ目のない支援を行う必要があること、教育委員会と学校それぞれにおいて、組織的に対応するための体制を整備すること、また、保護者の付添いがなくても、ケアが受けられるよう、看護師等の配置を進めるべきことなどが示された。
このことを踏まえ、県教育委員会では、医療的ケアを必要とする生徒の県立高校入学に備えて、本年1月28日に愛知県立高等学校における医療的ケア実施要綱を定め、施行した。
この実施要綱は、医療的ケアを必要とする生徒の健康と安全な学習環境を維持するために、看護師による医療的ケアを実施することを目的として策定した。医療的ケアの内容をはじめ、対象生徒、校内検討委員会の設置、実施体制の整備、実施決定までの手順、実施上の留意点などを定めている。
【高木ひろし委員】
県教育委員会として、これまで県立高校において医療的ケアの必要な生徒を受け入れた実績はないと聞くが、これまでに実例はあるか。
【高等学校教育課長】
県立高校では、少なくとも直近5年間は、医療的ケアが必要な生徒が在籍したという報告はない。
【高木ひろし委員】
特別支援学校における要綱を基に作成したようにみえるが、特別支援学校における教育体制と、県立高校の実態では前提条件が全く異なるため、機能面が心配である。
県教育委員会においても、医療的ケアが必要な生徒と保護者の立場に立ち、県立高校は、医療的ケアを必要とする生徒に対して、全部保護者任せではなく、入学後も看護師を配置し、医療的ケアを安全に保障するため、安心して受験をしてほしいという要綱の趣旨を、各学校や受験生向けに発信してほしい。
先ほどの重度障害の少女の話に戻るが、高校進学に当たり、階段の昇り降りができないため、エレベーターがない学校は進学対象から外したと聞く。最終的には、昼間定時制を開設していることと、障害のある生徒の受入れ実績があること、エレベーターが2基設置されていることが決め手になったとのことである。
県立の昼間定時制高校は、名古屋市内では、中央高校のほかに城北つばさ高校がある。城北つばさ高校は、エレベーターはないが、階段昇降機を設置していると聞く。
そこで、階段昇降機がどのような機械であり、どのように使用しているのか。
【財務施設課長】
階段昇降機は、車椅子に乗ったまま階段の昇り降りができる、キャタピラが付いた大きな台車のようなものである。車椅子自体を台座の上にセットし、車椅子の背中側にある取っ手のスイッチを介助する人が操作することでキャタピラが動き、階段を一段ずつ昇り降りする。この際、キャタピラは階段に沿って傾くものの、車椅子に乗っている生徒は、床面に対してほぼ水平の状態が保たれている。
なお、昇降スピードは、1階から踊り場まで昇るのに約1分、1階から3階まで昇るのに約5分かかる。教室の移動や体育館への移動時に使われていると聞く。
【高木ひろし委員】
先日、城北つばさ高校を視察した際に、実際に階段昇降機がどのように使われているのか体験したいとお願いしたところ、応じてもらえなかったため、視察は見るだけで帰ってくることとなったが、令和2年に高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法)の一部改正が公布され、特別支援学校や公立小中学校のバリアフリー化が義務づけられるとともに、高校も適合努力義務が課せられた。
全国的に現在小中学校では、平均で3校に1校エレベーターが設置されているが、4割以上に増やすため、令和7年度まで補助率を上げて、国は学校のバリアフリー化を本格的に図ろうとしていると聞く。一方、県立高校におけるエレベーターの設置率は、149校中9校であり、極端に少ない。
国がエレベーターの整備目標を定める中で、文部科学省がエレベーターの範囲を示しているが、階段昇降機は1人で車椅子に乗ったまま乗降ができず、誰かが乗せて動く必要があるため、エレベーターの類いと認めないとされている。
文部科学省の見解も踏まえ、既存の県立学校においても必要に応じて計画的にエレベーターの整備を進めていく必要があるのではないか。
【財務施設課長】
国が定めたバリアフリー化に関する目標では、階段昇降機のような車椅子に乗ったまま自力で移動ができない簡易的な昇降機は、エレベーターの範囲に含まれていない。しかし、階段昇降機は、個別にバリアフリー化が必要となる場合の措置として、操作を行う人員が必要となるといった制約はあるものの、移動手段の確保という点で一定の効果があると考えている。
一方、バリアフリー化の推進に当たって、障害のある生徒が自らの意思で移動できるエレベーターの重要性や必要性だけでなく、エレベーターの設置が進んでいないことが大きな課題であると認識している。
県立学校は老朽化が進んでおり、長寿命化計画に基づく改修が急務となっており、平準化を図りつつ、スピード感を持って対応している。なお、明和高校や春日井高校のように建て替えを実施する高校は、人にやさしい街づくりの推進に関する条例に基づき、エレベーターを設置していく。建て替えを実施しない高校は、階段昇降機を適宜使用しつつ、バリアフリー化の推進に向けて検討を進めていく。
【高木ひろし委員】
県立高等学校再編整備計画において、それぞれの高校に特色や個性を持たせていく中で、東三河の御津高校が外国にルーツのある生徒も同じように学べるインクルーシブ教育を行っていると聞く。多様性のある生徒を包括できる高校であると捉えており、こうした特徴を持った高校から優先的にエレベーターの設置を検討してほしい。
県立高等学校再編整備計画を進めていく中で、既存の建物にもエレベーターの追加設置を検討し、障害のある生徒にも高校教育の機会を広げてほしい。