◯九十二番(高木ひろし君)
通告に従いまして、私は二つのテーマについてお伺いをしてまいります。
一つは、カーボンニュートラルについてですが、このテーマにつきましては、毎議会テーマとして取り上げられ、本議会におきましても、桜井議員や、先ほど午前中の野中議員も触れられたところであります。非常に本県にとって大きなテーマでありますので、重複する点が多少あることを御容赦いただきたいと思います。
私のほうとしては、県に問いかける視点を若干変えておりますので、よろしくお願いいたします。
ちょうど一年前、菅内閣は退陣の表明をされましたけれども、発足早々になされた仕事が、二〇五〇年の温室効果ガスの排出を実施ゼロにするという、いわゆるカーボンニュートラル宣言でありました。二〇三〇年までに二〇一三年度比で二六%減であったこれまでの目標を一気に国際水準の四六%削減することを目指す。そして、さらに五〇%の高みに向けて挑戦を続けると、こう表明されたのであります。そして、このことは、四月に行われた気候変動サミットにおきまして、これは日本政府の国際公約となったのであります。その実現に向けて、政府は、グリーン成長戦略を策定し、これまでの温室効果ガスの抑制、削減から、脱炭素、つまり実質ゼロにするという目標に向かって、省エネと再生可能エネルギーを極大化させるために政策を総動員しようとする動きが一気に強まったのでありました。今年も世界各地で異常気象による被害のニュースが駆け巡りました。アジア各地での豪雨や洪水、カリフォルニアでの摂氏五十度近い熱波や森林火災、そして、干ばつ、国連の専門家組織であるIPCCは、こうした地球温暖化の原因が人間の活動、つまり化石燃料燃焼に使うCO2の排出によるものである、このことは疑う余地がないと八月に発表いたしました。地球温暖化に懐疑論を唱えて、二〇一五年のパリ協定から離脱をしたトランプ氏に代わってアメリカ大統領に就任したバイデン氏は、アメリカのカーボンニュートラル政策を飛躍的に強化する方針にかじを切っております。
欧州委員会は、二〇四〇年までにガソリン車とディーゼル車の販売禁止を打ち出し、CO2排出量の多い輸入品に課税するという国境炭素税の考え方も打ち出しております。脱炭素をめぐる世界の動きは、既に環境政策という枠を超えて、貿易や金融、産業全体の新しい国際社会のルールづくりをめぐる激しい競争に突入していると言えると思います。
二〇三〇年まであと十年です。日本の年間CO2排出量を基準年となる二〇一三年度比で四六%削減するということは、現時点のCO2排出量全体の約半分に相当する六億四千八百万トンを実質で減らすという非常に高い目標であります。政府の計画では、電源構成において現在一八%の再生可能エネルギーの比率を三六から三八%に増やす。火力発電の比率を四〇%程度に縮小する。また、水素・アンモニア発電の導入などを上げております。当然、産業設備や住宅、建築物、運輸での抜本的な省エネ対策も必要だとしております。ただ、経産省が示した第六次エネルギー基本計画の素案につきましては、十月四日まで、現在、パブリックコメント中ではありますが、原子力発電の比率を含めて多くの議論を呼んでおり、その計画の具体性となると、依然不透明のままであります。
こうした状況の中で、日本最大の産業県であると同時に、環境先進県であろうとするこの愛知県としては、二〇五〇年、カーボンニュートラルの実現を目指して、地球温暖化防止戦略二〇三〇の大幅な加速、見直しが迫られております。これまでの本県は、再生可能エネルギー導入容量が全都道府県中、第二位であることに象徴されるように、国内でトップクラスの温暖化対策の取組を行ってまいりました。しかし、二〇二〇年のCO2削減目標すら全く達成できなかった状況からしても、愛知のカーボンニュートラル、排出ゼロという実現への道程は、これまでの取組の延長線上にはあり得ないという厳しい現実を直視する必要があります。
愛知県で六月に設置されましたあいちカーボンニュートラル戦略会議、これには、そんな総合的で戦略的な議論を期待するところでありますけれども、今回の私の質問では、この愛知県のCO2排出量の約半分を占める産業部門に関わる最近の動きに焦点を絞って伺いたいと思います。
それは水素戦略の大きな変化であります。究極のエコカーと言われる燃料電池車(FCV)普及を中心としたモビリティーの分野では、この分野の水素利用については、既にこの二月議会での同僚議員、西久保議員や、そして、この県議会でも桜井議員からも質問がありまして、現状と課題を明らかにしていただいております。
私は、今回取り上げようとする産業界の動きとは、この水素を再生可能エネルギーを貯蔵や輸送するエネルギーキャリアとして活用したり、火力発電の分野で水素やアンモニアを燃料として導入しようと、こういう動きであります。
中部電力と東京電力が共同出資するJERAは、火力発電所の燃料として、水素を混焼させる、混ぜて燃やすことでCO2排出量を削減する実証実験を始めました。そして、将来は全ての燃料を水素に置き換えるというような構想の実現に取り組もうとしております。ちなみに、水素ガスタービンによる出力百万キロワットの発電所一基は、FCV、MIRAIなどの燃料電池自動車の四百万台分に相当する水素を消費するとされております。東邦ガスは、工場や病院、大学などの発電設備に利用されるコジェネ、熱電併給用のエンジンについて、燃料の都市ガスに加えて、水素を三五%混ぜることによりまして、CO2排出量を一三%減らすということができると発表いたしました。
トヨタ自動車は、先ほどの御質問でも紹介がありましたけれども、独自に開発した水素エンジンの車でレースに参戦し、大きな話題を呼びました。ガソリンの代わりに水素を燃焼させるエンジンが実用化されることになれば、FCVと並ぶモビリティーにおける脱炭素の重要な選択肢となることが期待されます。そして、そのレースに使われた水素は、福島の太陽光発電由来の研究フィールドや地熱発電由来の電力で作った大林組のプラントからの供給を受けたノーカーボン水素であることも重要な意味を持っております。
川崎重工は、世界初の液化水素運搬船すいそふろんてぃあを建造いたしました。この船で、オーストラリアで未利用のまま残されている褐炭から取り出した水素を液化して、日本に運ぶ実証実験がこの秋にも始まろうとしております。この事業によって期待されているのは、今後の水素利用の最大の課題となっている供給量の確保と、その調達コストを大幅に改善する効果であります。さらに、現在は肥料の製造に使われておりますアンモニア(NH3)でありますが、これも水素化合物として燃焼材料に使う、または水素キャリアとして使うというような現実的可能性も注目されております。
世界的には、風力発電の普及などにより、特にヨーロッパでありますけれども、再生可能エネルギーの価格が大幅に低下しております。これを水素に転換して、日本に輸入することを含めて、国際的な水素エネルギーのサプライチェーンの構築が課題となってきていると言えます。
こうしたことに対応すべく、昨年三月、中部圏水素利用協議会が主要企業によって組織され、活発な企業の連携が進んでまいりました。現在利用されている水素のほとんどは、化石燃料から分離したものでありますので、今後は、再生可能エネルギーの電力で水を分解して製造するなどした、いわゆるグリーン水素が主流になっていくと思われます。
その意味で、先日、注目したニュースは、茨城県の東京大学研究施設や豊田中央研究所で取り組まれている研究です。これは、光触媒のパネルを使った人工光合成によりまして、電力を使わずに水素を作り出すという画期的研究だそうであります。大いに注目されるところであります。日本の脱炭素の実現には、こうした今はまだない革新的なイノベーションによるブレークスルーが必須であると思っておりまして、こうした動きを強力に支援していく必要があると思います。
こうした水素やアンモニアの活用で脱炭素を進めようという取組は、産業部門のCO2排出量が際立って多い本県にとっては、注目に値する重要性を帯びていると考えます。
同様に、産業部門からの排出が半数以上を占めているのが兵庫県でありまして、兵庫県は、既に神戸港の神戸空港島で水素基地、巨大なタンクが既に整備されておりまして、この施設を活用して、カーボンニュートラルポートを目指す取組が進められております。
先ほど御紹介しました川崎重工の水素運搬船がオーストラリアの褐炭から取り出した水素を日本に運ぶという、この船が目指している到着地は、残念ながら神戸港であります。
そこで、最初の質問であります。
総取扱貨物量で群を抜く名古屋港は、国が指定したカーボンニュートラルポート、七つの港のうちでも最もCO2排出量が多く、火力発電所や製鉄所、製油所などの大規模な排出源も集中しております。大村知事が管理者を務めておられた昨年度から、この名古屋港におけるカーボンニュートラルポートの形成に向けた検討が管理組合において始まっております。どのような検討が進みつつあるのか、県の認識をお尋ねしたいと思います。
質問の二であります。
御紹介したように、水素やアンモニアの活用を今後の脱炭素の鍵だと捉える産業分野の様々の動きが、二〇五〇年カーボンニュートラルを目指す愛知にとって、どのような意味を持ってくるんでしょうか。また、その前に立ちはだかる壁とは一体、課題とは一体何でしょうか。県の考え方をお尋ねしたいと思います。
質問の三であります。
カーボンニュートラルの実現を目指す移行過程では、化石燃料の関連産業やエネルギー産業を中心に広範かつ大規模な産業経済の構造的変化を避けることはできません。当然、各企業やそこで働く多くの労働者の雇用にも大きな影響を及ぼすことになります。この問題は世界共通の課題でもありまして、国際労働機関(ILO)は、この移行過程を経済や社会の安定を守りながら進めるために、公正な移行、ジャスト・トランジションという原則を打ち出しています。それは、政府や自治体、企業、学界、労働団体を含む多様な社会のステークホルダーが話し合い、雇用など国民生活への負の影響を回避しながら脱炭素社会へと転換を成し遂げるという総合的な社会原則となっているそうであります。今後、極めて重要な観点になってくると思います。
先日も全トヨタ労連から県に対して提出された二〇五〇年カーボンニュートラルを成し遂げるための要望事項、この中にもグリーンリカバリーにおける産業の構造転換に伴う雇用の確保、そして、公正な移行という項目が掲げられておりました。自動車産業に関わる広範な労働者の立場を踏まえた要望で、当然なことだと思います。脱炭素社会への転換における公正な移行という国際的な原則について、雇用としての観点から県はどのようにお考えなのか、お聞かせを願いたいと思います。
次のテーマ、二番目のテーマに移ります。
労働者協同組合についてであります。
来年十月一日から、労働者協同組合法という新しい法律が施行されます。その労働者協同組合という働き方について質問します。
現代日本においては、普通働くといいますと、自営業として一人で仕事をするか、さもなくば経営者に雇われる被雇用者という立場のどちらかになると思います。雇われる場合は、どうしても経営者や資本家という立場のほうが優位になりがちであります。資本主義社会ではそれが当たり前とされてきました。しかし、この日本でも、働く人たちが自ら出資という形でお金を出し合って協同組合をつくり、働く人たち自身が平等な立場で経営に当たる、言わば労働者と経営者、資本家という立場を統一した事業体としての労働者協同組合という組織形態が生み出されて続いてまいりました。
そうした働き方を求めてきたのは、高齢者や障害者など、通常の労働の場から排除されがちな人々であったり、労働者が協同して社会の役に立つ仕事をするということに働きがいを見いだす人々でした。かつての失業対策事業に源流を持つワーカーズコープ、そして、生活クラブ生協が母体となったワーカーズコレクティブ、そして、障害者の雇用創出に取り組むNPO共同連、こうした大きな流れがこの法律をつくる原動力となってきたのであります。
これに携わる人々は、ワーカーズコープの推計によりますと、今の日本でも十万人、事業規模では一千億円にも上ると言われております。その仕事の分野も福祉や子育て支援、若者支援、障害者の働く場づくりなど、様々な分野にわたっておりまして、営利企業がなかなか手を出しにくいが、地域にとっては誰かがやらなければならない必要なサービス、こうしたものを提供する形で生まれて育ってきました。しかしながら、この労働者協同組合に関する法の規定がなかったために、こうした事業体は、便宜上、NPO法人や企業組合、あるいは人格なき社団というような形を取って、活動をこれまで続けてこられたのであります。
こうした労働者協同組合を何とか法制化することによって支援しようという動きが一九九〇年代から始まってまいりました。紆余曲折がありながら、粘り強い運動が続けられ、そして、昨年十二月四日、ついに超党派による議員立法として、全会一致でこの労働者協同組合法が成立したのであります。
この法律が成立したことによって、実際には何が変わるのでしょうか。まず、これまでなじみの薄かった労働者協同組合という組織が初めて法的に認知され法人格を得ることができる。この効果は決して小さくないと思います。そして、制度面では、少人数、最低三人で設立することができ、派遣業以外は何でも仕事とすることができる。仲間と事業化できる。加えて、これまでの非営利、協同の事業体が行政による許認可が必要であったことに対して、届出制を採用して、設立が容易になったこと、かつ皆で出資して対等な関係で働くという在り方が可能になったという意義は極めて大きいものがあるのではないかと思います。
社員として働くのでも、フリーランスとして独立自営で働くのでもない。社会的に意義ある仕事や事業に取り組むのにふさわしい、言わば第三の働き方が初めて法的に位置づけられたと言えるわけであります。
今日、非正規労働が際限なく増え続け、労働の劣化が深刻化する現代において、ディーセント・ワーク(人間らしい働き方)を実現し得る一つの形とも考えられます。特に、長引くコロナパンデミックの中において、これまでの事業が潰れてしまったり、仕事を失う人が増えている中で、地域における新たな仕事起こしとして、この労働者協同組合という形が広がることも期待されているのであります。
そこで県に伺います。
この労働者協同組合法の施行を一年後に控えて、これからの地域社会にとって極めて有用な事業体となり得ると考えられる、この労働者協同組合の意義について、県としてどのように捉え、今後、この法制度の周知や普及に向けてどう取り組んでいかれるのか、答えをいただきたいと思います。
以上でもって、私の檀上からの質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
◯都市・交通局長(森哲也君)
名古屋港におけるカーボンニュートラルポートの形成に向けた検討状況についてお答えいたします。
名古屋港は、日本で初めてコンテナターミナルの自動化を実現するなど、官民がしっかり連携して、国際競争力を高めてきた国際貿易港であります。
カーボンニュートラルポートの形成に向けては、臨海部で事業を展開する産業界と行政機関が連携して課題に取り組んでいく必要がありますが、名古屋港には連携に向けた土台が整っており、集積する企業の高い技術力を生かして、この分野で日本全体をリードしていくことが可能であると考えております。
こうした観点から、本年一月に国土交通省の呼びかけで民間事業者や本県を含む関係行政機関で構成する名古屋港カーボンニュートラルポート検討会が設置され、名古屋港における将来的な水素需要の可能性を把握するとともに、カーボンニュートラルポートの形成に向けた取組の検討が開始されております。これらの関係者の間では、優先的な取組として、既に実用化が始まっている輸送車両の燃料電池化をはじめとする港湾荷役機械の脱炭素化、臨海部に立地する発電所や工場で使用する化石燃料の次世代エネルギーへの転換などが検討されております。
また、民間事業者を中心に中部圏全体を水素需要エリアとして捉え、海外からの大規模な輸入を前提とした受入れから配送までの事業の実現可能性について、今年度から調査が進められております。
本県としましては、こうした検討に積極的に参画し、名古屋港が日本における先導的な役割を果たすよう、カーボンニュートラルポートの形成に向けた歩みを着実に進めてまいります。
◯経済産業局長(矢野剛史君)
水素やアンモニアの活用意義と課題についてお答えをいたします。
水素は、使用時に二酸化炭素を排出しないだけでなく、再生可能エネルギーと水を利用することで、二酸化炭素を全く排出しない製造が可能となります。また、発電、産業、運輸、家庭など、用途も幅広いことから、カーボンニュートラルのキーテクノロジーと言われております。
また、アンモニアは、燃焼しても二酸化炭素を排出しないことから、発電で活用できるゼロエミッション燃料であります。これらをエネルギーとして活用する意義といたしましては、産業部門の二酸化炭素排出量が多い本県企業がカーボンニュートラルを自らの課題として捉え、率先して脱炭素に取り組むことで我が国の産業全体に波及していくことが期待されます。
一方、課題といたしましては、安価な水素、アンモニアを大量に仕入れて、大量に使うという枠組みの確立が上げられます。現在、国において、水素を大規模輸送できる国際水素サプライチェーンの構築に向けた実証実験が行われております。また、この地域では、需要拡大に向けて、先ほど御紹介がありました中部圏水素利用協議会において、水素の受入れから利用までを一貫して検討されており、本県といたしましても、当協議会と連携を図りながら取組を進めてまいります。
二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けては、製造業をはじめとする県内企業の取組が重要であります。本県といたしましては、あいち産業科学技術総合センターによる技術支援や知の拠点あいち重点研究プロジェクト及び新あいち創造研究開発補助金による研究開発支援により取組を加速してまいります。
◯労働局長(橋本礼子君)
脱炭素社会への転換における公正な移行について、雇用としての観点からお答えいたします。
暮らし、事業活動、エネルギー等、あらゆる分野で温室効果ガス排出量の削減の取組が全世界的に進められ、その実現のために労働力の公正な移行が必要であることが国際的にも認識されております。
我が国におきましても、二〇一九年六月十一日に閣議決定されましたパリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略の中で、脱炭素社会に向かう際の労働移行を円滑かつ遅滞なく進めるためには、国、地方公共団体及び企業が一体となって、各地域における職業訓練、企業の業態転換や多角化の支援、新規企業の誘致、労働者の再就職支援等を推進していくことが明記されております。
本県モノづくり産業、とりわけ自動車産業分野を中心に、カーボンニュートラルに向けた取組が加速する中で、雇用面においても様々な影響が出ることが懸念されます。
県といたしましても、公正な移行の観点は重要であると認識しており、脱炭素化に伴う自動車関連産業等に関わる産業構造の転換が進む中で、雇用面におけるマイナスの影響が最小限となるよう取り組んでまいりたいと考えております。
具体的には、各種助成金の活用を促す雇用維持、確保要請や人材過剰企業から人材不足企業への在籍型出向等に対する支援など、国と連携した支援を行ってまいります。さらに、デジタル人材の育成など、産業界のニーズに対応した公共職業訓練を実施するとともに、離転職者に対しては、就職面接会等を通じたマッチング機会を提供していくことしております。
今後とも脱炭素社会に向かう際の労働移行が円滑に進むよう、国や関係局、地域の経済団体や労働団体と連携して取り組んでまいります。
次に、労働者協同組合の意義と普及についてお答えいたします。
労働者協同組合制度は、事業主に雇用される雇用形態とは異なり、働く人自らが出資をし、自らの意見を反映した事業に従事する協同労働というこれまでにない新しい考え方を行う組織に法人格を認めるものでございます。
この制度は、自分らしい主体的な働き方の実現を可能とし、NPO法人よりも幅広い活動分野で事業が行うことができるため、多様な就労の機会を生み出す契機となることや、介護、福祉、子育て、地域づくりなど、地域の様々な需要への対応や課題の解決につながることも期待できることから、県といたしましても、積極的な周知、啓発を行ってまいりたいと考えております。
労働者協同組合法では、都道府県知事が個別の組合を所管することとされておりますので、今後、国から政省令、指針が示され次第、速やかに県庁内で関係部局と情報共有を図り、国とも連携しながら、県民やこれまでNPO法人、あるいは任意団体等として協同労働に取り組んできた団体等に対して、ホームページ等を活用して、制度の内容を情報発信するとともに、労働者協同組合の設立手続等について支援してまいります。
さらに、高度化により労働力人口の減少が見込まれる中、地域に必要不可欠な事業を持続的に提供していくためには、事業を担う労働者協同組合と市町村や地域の団体との連携が重要でありますので、NPO法人等から御意見をお聞きした上で、市町村等に対して、制度の周知と連携に必要となる情報の提供を積極的に行ってまいります。
◯九十二番(高木ひろし君)
御答弁をいただきましたが、私が期待したもう一歩の踏み込みが感じられず、ちょっと残念でありますけれども、カーボンニュートラル、そして、労働者協同組合それぞれについて、要望をさせていただきたいと思います。
カーボンニュートラルにつきましては、いろいろな角度から、各議員からもテーマが出されて、意見が交わされました。私が取り上げた角度というのは、つい先日の中日新聞が連載を始めてくれました脱炭素時代、水素の仲間づくりという、この連載がまさにどんぴしゃりの私の問題意識でありました。これまでMIRAIを世界に先駆けて市場化したトヨタ自動車、そして、水素の供給において、日本のトップメーカーである岩谷産業、こうした企業だけが突出して頑張っても、この水素社会というのはなかなか切り開くことができないと。そして、昨年のカーボンニュートラル宣言を機に動き出したのは、水素を使う仕組みをがーっと広げて、いろいろな業種を横断的にこの動きに巻き込んでいこうと。そして生まれたのが中部圏水素利用協議会という組織であります。トヨタ自動車が中心となって組織された十五社、この協議会参加企業の取組が、中日新聞の連載によって紹介されていました。これがベースになって、初めてカーボンニュートラルポートという名古屋港管理組合の下における検討会が動き出したと、こういうわけであります。
そして、その協議会の皆さん、検討内容をつぶさに拝見いたしますと、これは一体何を名古屋港に求めているのか。そして、この愛知県に、このポート実現のために何ができるのかという課題が浮き上がってくるのではないかと思います。その一つとして、今日、提起いたしたいのは、水素の巨大な基地として、名古屋港を利用するためには、海外からの数万トン単位の水素を運搬船によって陸揚げ、貯蔵、加工、配送するという大規模なインフラが名古屋港の中に必要となってくるわけであります。そして、その初期投資には一千億円以上の資金も必要だと言われております。県にできること、あるいは名古屋港管理組合に求められていることというのは、検討会の中で提起された大規模な水素のための基地ですね、これを一体名古屋港の中のどこに配置するのか、港湾計画の中にどう位置づけるのかという課題だと思います。
そこで、今日、一つ提起しておきたいのは、名古屋港のほぼ中央にある巨大な島の存在であります。名古屋港のほぼ中央には、東航路、西航路と高潮防波堤がクロスする位置に、ちょうど野球のホームベースのような形をした人工島が出現しております。二百五十七ヘクタール、これは中部国際空港島とほぼ同じ広さの島であります。この島を一体どう利用していくのかという議論は、名古屋港管理組合議会でも数年前から活発に議論されておりまして、直江議員も活発に提案をされておるところであります。
私は、このポートアイランドに水素エネルギーの基地として必要となる巨大なコンビナートを設置する、あるいはタンクを並べるような場所としては最適な土地ではないかと思っておりまして、これは私の勝手な想像だけではないと思います。しかし、このポートアイランドを実際に使うためには、幾つかのまだハードルがあります。まず、このポートアイランドは、名古屋港内で発生するしゅんせつ土砂の処分場として国が管理しておるわけでありまして、まだ正式な島といいますか、陸地としては認められておりません。もちろん愛知県の一部となることは間違いないと思いますが、どこの自治体に属するのかという地籍が確定していないわけであります。
こうした課題も整理しながら、水素エネルギー基地としてのポートアイランドの利用、そして、名古屋港のカーボンニュートラルポートの実現、こうしたことを実現するには、一部事務組合である名古屋港管理組合が主たる責任を負うわけでありますけれども、これはこの場だけに任せておくわけにはいかない課題だと思います。愛知県知事は、二年ごとに名古屋市長と管理者を交代で務められ、そして、このカーボンニュートラルポートの道筋をつけたのは、大村知事がこの夏まで管理者をやっておられた名古屋港管理組合時代であります。愛知県としても、このテーマについて積極的に関与していく、リードしていくという構えがぜひとも必要だと思いますので、これは提案をさせていただきます。
労働者協同組合についても要望したいと思います。この法律は議員立法であったためか、法律が成立してもう一年もたちますが、政府の動きは非常に遅いと、鈍いと感じます。政省令が出てくるのは、どうも来年の春頃になるという話であります。施行が一年後に迫っているのに、国の通知を待つだけではなくて、県も担当部署をまず定めて、取組を一刻も早く始めていただきたいと思います。
県では、今回の質問のやり取りも、窓口はどこですかとお尋ねしましたら、労働福祉課がお見えになりました。しかし、私が紹介したような労働者協同組合の性格、内容からしても、これは労働局所管の問題なのかということもやや疑問であります。私は、むしろどちらかというと、社会活動推進課、県民文化局が担当されたほうがいいんではないかとも思っております。こうしたことも含めて、施行を一年後に向けて、来年度予算の中でもぜひとも広報予算を組んでいただいて、協同組合の普及のために尽くしていただきたい、これを要望して、終わります。
◯労働局長(橋本礼子君)
先ほど私の労働者協同組合に関する答弁の中で、高度化により労働力人口の減少が見込まれる中と申し上げましたが、高度化ではなく、高齢化の誤りでございました。訂正させていただきます。大変失礼いたしました。