令和2年総務企画委員会 2020-06-29

 
 
PDFを開く

【高木ひろし委員】
新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)が改正される形で今回のコロナ対策が行われたが、特措法の改正を巡る議論を聞いていても、国民の自由や安全、営業の自由、移動の自由など、様々な私権を制限する可能性がある。したがって、必要な規制は最小限にとどめて、強制力を伴わない法律とすべきとの議論がなされたと思う。
今回、愛知県も、この法律に基づいて行われた緊急事態宣言に基づく緊急事態措置は、強制的な措置を一切伴わない形で県民の協力が得られ、休業要請等にほとんど応じてもらった。
しかし、制裁的なものに近い措置が取られたケースがあり、休業要請に応じない一部のパチンコ店の店舗名公表に踏み切った。これがどういう法律の解釈から可能となるのか、実際の効果はどうだったのかとの議論がある。
本県のパチンコ店の店舗名公表に至った経緯を説明してほしい。

【防災危機管理課担当課長(総務・危機管理)】
愛知県内には、当時、パチンコ店が514店舗あり、本年4月17日から5月6日までの20日間にわたり休業協力要請を行ったが、先行して休業要請を行っていた東京都や大阪府など7都府県では、要請に応じることなく営業を継続するパチンコ店に利用客が集中し、感染リスクの懸念が取り上げられるとともに、パチンコ店周辺の住環境を悪化させることが社会的な課題として報道された。
本県でも、開設したコールセンターに同趣旨の意見が多く寄せられたため、防災安全局、県民事務所、保健所、所管の警察署と連携して営業を継続している店舗の調査を行った結果、4月23日の段階で全体の15パーセントに当たる79店舗が営業を継続していることが確認できた。
それにより各店舗、営業を継続している店舗に職員が訪問し、知事のメッセージを手渡して、休業協力に応じるようお願いしてきた。その結果、徐々に休業する店舗が増えたが、大型連休を控えて、依然休業に応じない店舗があったことから、4月28日時点で営業続けていた37店舗に対し特措法第45条第2項に基づく休業要請を行う趣旨を伝えた。
その後、まだ営業を継続している6店舗に、4月30日の正午をもって法に基づく要請書を手渡し、店舗名を公表した。
その結果、2店舗がすぐに応じたが、4店舗は営業を継続していたので、5月1日に法第3項に基づく指示を前提とする事前通知を行ったところ、5月2日に全ての店舗が休業に転じた。

【高木ひろし委員】
なぜパチンコ店だけなのか。非常にたくさんの業種に休業要請したが、それらの中でパチンコ店だけが実際に県内で営業している、存在している店舗の数、休業要請に応じた店の数、あるいは従わなかった数がしっかりと把握されて、個別への要請もされた。パチンコ店以外の休業要請した非常にたくさんの業種に関して、どれだけ休業要請に応じて休業したのか、あるいは営業時間の短縮に応じたのか、応じなかった業者が一体どこに何軒あるのかを県はつかんでいたのか。

【防災危機管理課担当課長(総務・危機管理)】
今回の新型コロナウイルス感染症の感染防止として休業協力要請を行った業種、業態は様々なものがある。ただ、どのぐらいの事業者が協力に応じたのか、あるいは応じなかった事業者がどれだけいるかは県では把握していない。
一方で、今回、休業協力要請に応じた事業者には県から協力金を交付するため、制度を所管する経済産業局と保健医療局に確認したところ、6月中旬の時点で、合わせて4万5,000件の申請が出てきていると聞いている。
明日までの受付だが、かなりの数が休業協力に応じたものと推量される。

【高木ひろし委員】
県は非常にたくさんの業種を列挙して、営業を自粛してほしいとお願いしたが、これは特措法第24条に基づいて行われた。この第24条は、緊急事態宣言が発出されて特定の都道府県が国によって指定されることとは関わりなく、一般的に新型コロナウイルスの蔓延防止のために知事が行うことができる、自主的な自粛のお願いである。法的な裏づけのある要請や指示とは性質が全く違う。だから全く実態も把握できていないが、こういった業種があれば、できれば自粛してほしいというお願いをしているにすぎない。
特措法第45条は知事に権限が付与されて特定の施設や業種に対して法的な要請ができ、それに従わない場合は、さらに強い指示ができるとなっている。だから、法律に基づく要請として説得したのは正しいと思う。
問題は、店舗名を公表することをどういう根拠で行ったのかである。

【防災危機管理課長】
国は4月16日に緊急事態宣言を全国に拡大したことを受け、蔓延防止対策の一環として実施する休業要請について、法に基づく適切な運用がなされるよう、4月23日に特措法第45条の規定に基づく要請、指示、公表についての通知を全都道府県に発出し、留意事項を通知している。
この通知の冒頭で、「法第45条第2項及び第3項の規定に基づく要請及び指示は、施設を管理する者等に対して行われるものであり、使用制限の対象も個別の施設となる」とした上で、「また、当該要請及び指示に伴う第45条第4項の公表も、特定可能な個別の施設名等を広く周知することにより、当該施設に行かないようにするという合理的な行動を確保することを考え方の基本としている」としている。
また、逐条解説によると、「第4項において、特定都道府県知事が第2項に基づく要請又は第3項に基づく指示をした時は、利用者のため、事前に広く周知を行うことが重要であることから、公表することとしたものである」とされている。
本県でも、これらの法及び国の通達に基づいて、4月30日の要請、そして5月1日の指示に関する事前通知で施設名称を公表した。

【高木ひろし委員】
店の名前を公表することは、どういう効果を持つのか。
大阪府では、パチンコ店はほとんど休業した。その中でもどこか開いている店があるらしいという話がネット上で飛び交って、大阪府が店名を公表したら、そこへ客が集まったという事象が起きている。法律には第45条第2項及び第3項の要請や指示を行ったら、応じている、応じていないに関係なく、休業の要請をしたのであまり行かないようにという意味での公表である。制裁的な意味での公表ではない。パチンコ店に関しては、制裁的な意味での効果は全くなく、逆に客が寄ってきた。これは特殊かもしれないが、特措法に、言うことを聞かない人が出てきたときにどうするかという規定はない。あくまで国民の自主的な協力によって担保されているだけであって、何ら権力的なものや制裁的なものは含んでいない。
しかし、政府は、法律における公表の意味とは違う意味で使えと通達している。だから、県が国の通達に基づいてなした行為は仕方ないが、私は法律の立法過程からの議論や法律を素直に読んだときに、制裁的な意味での公表は想定外であると考える。
この法律が初めて適用されて、色々と効力を現すために、いろいろな措置が取られた。県は特措法に基づいた措置をいろいろ行い、非常にうまく成果を出したと思うが、特措法の見直しすべき点はどう考えているか。

【防災危機管理課長】
本県では、本年4月10日に緊急事態宣言の発出、緊急事態措置の決定とともに、対策本部の下に保健医療局が所管する医療対策チームをはじめ八つのチームを設置して、庁内横断的な推進体制を取ってきた。
防災安全局は、特措法対策チームとして緊急事態措置の編成に当たるとともに、特措法第24条第9項及び第45条の規定に基づく県民及び事業者への外出自粛要請や休業協力要請の実施に当たった。5月26日、緊急事態宣言の解除時には、再度の感染拡大の防止に向けて、愛知県新型コロナウイルス感染拡大予防対策指針を策定し、実施に移したところである。
当局として、これまでの特措法チームの取組を総括、検証し、課題を抽出して、対応策の改善を図ることは、今後の第2波に備える上で大変重要であると認識している。 現在、特措法対策チームとして業務に当たった職員を中心に、課題の抽出作業を実施しており、今後は引き続き、その内容を分析して業務の改善につなげたい。
また、全国的にも6月19日に全国知事会に新型コロナウイルス対策の検証のためのワーキングチームが設置され、各都道府県の取組を共有し、今後の取組を検討する場が設けられた。
本県では、感染症対策局、保健医療局、福祉局、防災安全局が検討課題ごとに参画することとし、検証の場で得られたほかの自治体の知見、そして、全国知事会で最終的にまとめられる検証結果を本県の体制にフィードバックすることで体制の強化を図っていく。


令和2年目次へ >>