令和2年2月定例会(第7号) 2020-03-09

 
 
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◯九十二番(高木ひろし君)
私からは、歳出第七款建設費第九項住宅費人にやさしい街づくり推進指導費についてお伺いいたします。
本県では、一九九四年に大阪府、兵庫県に続き全国で三番目となる先駆的な条例である人にやさしい街づくりの推進に関する条例を制定し、障害者や高齢者を含めた全ての人があらゆる施設を円滑に利用できるまちづくりの推進を目指して取り組んでまいりました。
この条例では、病院や集会場、ショッピングセンターなど、不特定多数の方が利用する施設の新築などを行う場合に遵守すべき基準として、施設の用途や規模に応じて、敷地内の段差や施設の出入口の幅、階段の構造、スロープの設置、トイレの設備、構造、エレベーターの設置などについて全国でも最高水準の整備基準を定めたもので、その後に法制化されましたバリアフリー法の先駆けと呼ぶにふさわしいものでありました。
この条例では、仕組みとして、工事に着手する前に施設のバリアフリー措置に関する整備計画を県に届け出るという仕組みを設けておりまして、届け出された整備計画は整備基準に適合しているかどうかを審査し、さらに、適合していないものについては、指導、助言が行われることになっております。
実際の作業についてお伺いしたところ、整備基準に適合していない施設の建築主等に対しましては指導、助言が行われまして、それによって後日、建築主等の理解が得られ、整備基準に適合するように計画が変更されたという事例もあるようでございます。
人にやさしい街づくりの条例の上では、条例で定めた整備水準に適合した施設をいかに増やしていくか。その第一歩として、まずは対象となる施設の建築主に整備計画をきちんと届けていただくことが大変重要となります。
そこでお尋ねいたしますが、整備計画の届出について、これまでどのように県として取り組んできたのか、そしてまた、その適合率はどうなっているのか、お伺いいたします。
第二問。
先ほど触れましたように、条例では、不特定多数の方が利用する施設の新築を行う場合に、条例で定めた整備基準に適合させることを求めております。
一方で、街には多くの既存施設がありまして、これらが愛知県の整備基準には達していない、いわゆる既存不適格と呼ばれる建物ももちろんたくさんございます。これらをどうしていくかという課題があります。
既存施設をバリアフリー改修するには、今使っているスペースを減らして、スロープを設置したり、通路に変えたりする必要があったり、部屋の使い方を変えて使い勝手が悪くなるなど、新築の場合とは違う、異なる困難さが伴っております。
そんな中で、民間の既存施設のバリアフリー改修を進めていただくためには、まずは公共施設や学校などの県有施設において、率先垂範したバリアフリー改修が進められるべきだと考えております。
そこでお尋ねいたします。
県有施設の大規模な改修時のバリアフリー化について、どのように取り組んでいるのか、お伺いいたします。
三番目、最後に、もう一問お伺いいたします。
人にやさしい街づくりの推進に関する条例から既に二十五年が経過いたしております。この間に、国において二〇〇六年、平成十八年には高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律、いわゆるバリアフリー法が制定され、駅などの交通施設などのエレベーター設置が急速に整備されました。
高齢化の進展、障害者の権利関係の法整備が大きく進み、社会生活に関わるハード、ソフト両面においてノーマライゼーションという考え方が普及し、条例制定の当時と比べて、社会情勢が大きく変化しております。
加えて、本県にとりましては、二〇二六年のアジア競技大会の開催と併せて、障害者スポーツの祭典としてのアジア・パラリンピック競技大会の開催を目指しております。二〇二七年のリニア中央新幹線の開業を控えて、名古屋駅を中心とした大規模な街の改造も既に始まりつつあります。
この機を捉えて、愛知・名古屋をバリアフリー先進地域としていくために、人にやさしい街づくりの推進に関する条例のバージョンアップを含めた取組の強化が必要なのではないかと考えるものであります。
そこでお尋ねいたします。
こうした社会情勢の変化に対応していくために、さらなる人にやさしい街づくりの推進に、県としてどのように取り組んでいくのか、お伺いをいたします。

◯建築局長(砂原和幸君)
初めに、人にやさしい街づくりの推進に関する条例に基づく整備計画の届出に関するこれまでの取組と適合率についてであります。
本県では、条例に基づく整備計画の届出を行っていただくため、パンフレットの配布や県のホームページへの掲載に加え、セミナーの開催等により、制度の周知に取り組んでおります。
さらに、公開されている建築計画概要書の情報を基に整備計画の届出状況を確認し、届出を行っていない建築主に対しては文書で届出を促しており、条例制定から昨年度までに約四万五千件の整備計画の届出がございました。
なお、届出のあった整備計画のうち、約八割が整備基準に適合しておりました。
引き続き、整備計画の届出をしっかりと行っていただくよう取り組んでまいります。
次に、県有施設の大規模な改修時におけるバリアフリー化の取組についてでありますが、施設を管理する関係局や施設管理者の意見等を聴きながら、スロープや手すりの設置、玄関の自動扉化、車椅子使用者用トイレの設置など、柱や壁を撤去できない等の制約がある中で、対応可能なバリアフリー化に取り組んでおります。
現在、改修工事を行っている愛知県清洲貝殻山貝塚資料館においては、スロープや手すりの設置、車椅子使用者用トイレの新設をしており、豊川保健所では、これらに加え、玄関の自動扉化を行うこととしております。
県有施設は多くの方が利用される施設であることを踏まえ、今後もより円滑に施設を利用していただけるよう、関係局と連携してバリアフリー化にしっかりと取り組んでまいります。
最後に、さらなる人にやさしい街づくりの推進の取組についてであります。
本県では、施設の利用者や設置者等のそれぞれの立場からの意見を県の取組に反映するため、有識者や高齢者、障害者の団体及び事業者の団体を構成員とする、人にやさしい街づくり推進委員会を設置しております。
この推進委員会からは、より円滑に施設を利用していただくための整備の手引である人にやさしい街づくり望ましい整備指針の策定において御助言をいただくなど、本県の取組をサポートしていただいております。
引き続き、推進委員会からの御意見を頂きながら、全ての方があらゆる施設を円滑に利用することのできる人にやさしい街づくりについて、幅広く研究してまいります。

◯九十二番(高木ひろし君)
一点、御要望をさせていただきたいと思います。
今の御答弁でも明らかなとおり、人にやさしい街づくりの推進に関する本県の条例では、いわゆる行政指導という形で、新築工事の着工前に出される整備計画、そして、それに基づいて適合すべく行政指導をやるという形で成果を八割上げてきておるわけでありますが、実は、この適合率の経過を見てみますと、二十五年間の間に大きく変化してきております。
当時は一〇〇%近い適合率をもって、建築確認の際に行政指導が効果を発揮しておったわけでありますが、十年前、建築確認の審査の業務が民間に開放され、委任されるという大きな変化がありまして、建築確認の審査を県自らが行うのではなく、民間にこれを委ねるという形になったことによりまして、実は、この適合率が大きく下がってきたという現実があります。このことに対しては、やっぱり行政指導の限界ということも考えなければなりません。
そこで注目すべきは、バリアフリー法十四条三項に付加条項という規定があることであります。
そこでは、地方公共団体は、地域の自然的、社会的条件の特性などを踏まえ、対象とする建築物の用途を追加したり、対象とする建築物の規模を二千平米から引き下げることのできる、いわゆる上乗せや横出しができる条例の制定が規定されております。
この規定を愛知県の条例に当てはめて改正をするならば、建築確認申請と連動して、バリアフリー化措置を義務化することができるわけであります。
本県においても、このバリアフリー法に基づく付加条例の制定や、あるいは、人にやさしい街づくりの推進に関する既存施設の整備をどう促進するかなどの点につきまして幅広く研究、検討していただき、アジア競技大会と併せてパラ大会が開催される数年間の間に、この愛知をさらにバリアフリー先進地域と呼ぶにふさわしい地域へと取組を強化していただくよう要望して終わります。


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