令和2年2月定例会(第6号) 2020-03-06

 
 
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◯九十二番(高木ひろし君)
私からは、二点質問をさせていただきます。
最初は、歳出第二款総務企画費第一項政策企画費、国際観光都市機能整備調査費九千五百三十八万四千円についてであります。
昨年十二月末の県議会閉会間際に、知事から、突然、中部国際空港エリアにおけるIR(統合型リゾート)整備に関わる民間事業者からの提案意見を募集するという趣旨が発表されました。
これは、これまで二年にわたりまして県が有識者などを集めて進めてまいりましたMICEを核とした国際観光都市の実現を目指す調査、研究とは質的に異なる段階に入ったということを意味します。
二〇一八年七月に国会で成立いたしました特定複合観光施設区域整備法、いわゆるカジノを核とした日本型IR(統合型リゾート)整備法に基づき、中部国際空港エリアへのIR誘致を目指した具体的作業に着手することを、初めて公的に発表したものにほかなりません。
しかるに、この発表後初めての議会となるこの本議会においても、新年度予算の議案説明資料の中にも、知事の提案理由説明の中にも、IR(統合型リゾート)、カジノといった言葉は一切なく、MICEを核とした国際観光都市の実現を目指した具体的検討云々の語句が並ぶのみであります。
既に、このIR法をめぐっては、我が国の刑法上初めて民間事業者に賭博を解禁し、海外のカジノ事業者に日本上陸の道を開くものとして、世論の強い抵抗と批判がありました。ギャンブル依存症や犯罪など、社会的腐敗への懸念も決して払拭されてはおりません。
そして、その懸念の一部が、年末、安倍内閣においてIR担当副大臣でありました秋元代議士のカジノ事業者からの収賄容疑での逮捕、起訴、これによりまして、早くも現実化したのであります。
こうした状況の中で、愛知県がIR誘致に向けて、事業者提案を募集して、その業者との接触を始めようとするならば、まずは、現在のIR整備法に基づくカジノを核とする統合型リゾートというスキーム自体に対する県民意識の把握に努めて、その是非について議会や県民の多角的な議論を促すことが前提とならなければならないと思います。 県民の強い反対意見があるこうした重大な事業について、検討を進める順序とそのタイミングについて、私は強い疑念を禁じえません。
さらに、秋元事件の教訓を生かすならば、他の自治体で既に検討が進んでいるように、カジノ事業者と県関係者との不適切な接触を規制する厳格なルールを整備し、絶対に汚職事件を発生させないというトップによる強い決意の表明も欠かせない条件だと思います。
これらの点に対する県当局の基本的な認識をお伺いいたします。
二番目に、歳出第四款福祉医療費第五項障害福祉費、愛知県障害者差別解消条例についてお伺いいたします。
二〇一五年十二月十八日にこの条例が成立をいたしまして、翌二〇一六年四月一日に施行されてから、もう丸四年が経過しようとしております。
この条例は、愛知県議会史上でも例のない経過で提出されたことを御記憶の方も多いと思います。
それは一旦、九月議会に知事提案によって提案すると発表された条例案が、障害者団体からの抗議によって提案が見送られ、障害者団体を交えた三か月に及ぶ協議で重要な変更が加えられた新たな条例案が十二月議会に提案されたのであります。
その変更点とは、第一に、前文に厳しい障害者差別の現実について明記したこと、第二に、市町村との連携や相談窓口の設置を明確にしたこと、第三に、障害当事者を含む差別解消調整委員会を設置し、助言やあっせん、指導や勧告などができることとしたこと、そして、第四に、三年経過後の見直し規定を加えたことであります。
これらの変更によりまして、本条例は、障害者権利条約の基本精神である、Nothingaboutus、withoutus(私たち抜きに私たちのことを決めないで)という精神を体現する条例となったのであります。
障害や障害のある人への偏見や誤解による差別は、この三年間で解消に向かうことができているのでありましょうか。私たちはいま一度、この条例に基づく取組を振り返り、障害当事者の皆さんの声に真摯に耳を澄ませてみる必要があります。
様々な障害種別等による県内二十九の団体で構成いたします愛知障害フォーラムが、去る三月三日に愛知県知事と愛知県議会に対しまして、同条例の見直しを要望いたしました。
その要点は、第一に、関連差別、間接差別というようなものも含めて、差別の定義をまず明確にすること、第二に、深刻な差別の実態について調査をし、重点項目を条例の中に明記すること、第三に、現在は努力義務となっている民間事業者の合理的配慮を他の多くの県条例と同様に義務規定とすること、第四に、解決すべき対象に合理的配慮の不提供を追加することなどであります。
これらの申入れの背後には、不当な差別的取扱いの事例が後を絶たないのに、この条例による相談や解決のための仕組みが効果的に機能しているとはいえないという障害当事者の切実な思いがあります。
車椅子使用者が路線バスに乗車しようとして拒否されたなどの交通に関わる例、昨年の選挙では、盲ろう者の通訳介助員による代理投票が認められずに、結局投票ができなかったなどの例、そして、この愛知県議会議事堂に関しても、先日、重度障害者の団体から、ドアやインターホンの位置などが、車椅子での入館の妨げになっているというふうに具体的な改善の申入れがなされたばかりであります。
そこで質問します。
愛知県障害者差別解消推進条例についてこの三年間、県としてどのように取り組み、その実績をどのように評価しているのか。また、条例に明記された三年経過後の見直し作業を今後どのように進めようとしているのか、県当局の考えを伺います。

◯政策企画局長(野村知宏君)
統合型リゾートに関する基本的な認識についてであります。
本県においては、二〇一六年十二月に常滑商工会議所から、また、二〇一七年七月に常滑市議会から、それぞれ統合型リゾートに関する要望書が提出されました。
本県及び常滑市では、中部国際空港やその周辺エリアにおいて、MICEを核とした国際観光都市の実現を目指し、二〇一七年八月に地元学識者による研究会を設置し、調査研究を行い、二〇一八年三月に統合型リゾートの活用について検討を進めていくべきとの報告をいただいております。
空港島は、交通インフラなどが整備されており、昨年八月には、愛知県国際展示場、アイチ・スカイ・エキスポが開業するなど、国際交流拠点としての機能が充実しつつあり、中部国際空港の二本目滑走路の具体的な検討も進めているところでございます。
また、空港島におけるスーパーシティ、スマートシティの実現を目指し、昨年十月末には国のアイデア募集に応募したところでございます。
こうした状況を総合的に勘案して、昨年十二月に、国の法律に基づき、事業としての可能性について見極めるために、IRに関連する様々な事業者の皆さんから幅広く意見を募集する実務作業を行うこととしました。
今回の意見募集に当たっては、事業者への対応を適切に行うため、面談は複数職員で対応し、速やかに記録を作成し上司へ報告することや公平性、公正性の確保の観点から、面談の時間設定や頻度等について留意することなど、事業者対応に関する指針を既に定めているところであります。
また、統合型リゾートを進める場合の議会や県民の合意についてお尋ねいただきましたが、特定複合観光施設区域整備法では、公聴会の開催、その他の住民の意見を反映させるために必要な措置、立地市町村の同意、県議会の議決など、地域において合意形成を図るための必要な手続が規定されていると承知しております。
引き続き、MICEを核とした国際観光都市について調査研究を進めてまいります。

◯福祉局長(平田雅也君)
障害者差別解消推進条例のうち、まず、県のこれまでの取組実績と評価についてであります。
二〇一五年十二月の条例施行後、障害のある方の相談に的確に対応するため、障害福祉課に専任職員を配置するとともに、県内七か所の福祉相談センター等に市町村の相談を専門的、技術的に支援する広域相談窓口を設置し、相談体制を整備しております。
相談実績を見ますと、本年一月末までに合計百六十三件の相談が寄せられたところであり、商品、サービスの提供に関する相談や労働、雇用に関する相談が多くなっております。
また、条例に基づき、障害者差別解消推進の取組を、市町村とも連携して進めてまいりましたが、全ての市町村が相談窓口を設置するとともに、地域の関係機関との情報交換や相談事例を踏まえた差別解消の取組を協議する障害者差別解消支援地域協議会についても四十六市町村が設置しており、県全体で障害者差別解消に向けた体制整備が着実に進んでいるものと考えております。
引き続き、県民の皆様が、障害の有無によって分け隔てることのなく、相互に尊重し合いながら共生する社会の実現に向けて、市町村と共にしっかりと取り組んでまいります。
次に、障害者差別解消推進条例の見直しについてでありますが、条例の附則におきまして、条例の施行後三年を経過した場合において、この条例の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に応じて所要の見直しを行うものと規定しております。
そのため、県におきましては、現在、条例に基づく取組状況の把握に努めるとともに、先進的な取組を進めている自治体の状況を調査するなど、検討に当たっての事前調査を行っているところです。
こうした中、現在、内閣府が設置する障害者政策委員会におきまして、差別の定義や事業者による合理的配慮の義務化など、障害者差別解消法の見直しに向けた議論が進められているところであり、引き続き国の動向についても注視していく必要がございます。
今後、条例見直しの検討に当たりましては、これまでの実績を踏まえて、障害当事者及び障害者団体の皆様の御意見も十分お聞きしながら、進めてまいりたいと考えております。

◯九十二番(高木ひろし君) IRに関する調査費について再質問をさせていただきます。
御説明は、IRを愛知県でやりたいというふうに考えている方、恐らくいらっしゃると思います。そして、IRという愛知県での事業に参入したいと思っている事業者、これも多分いるんだろうと思います。そういう立場からの、これは研究や調査は進めてこられました。
しかし、様々な調査が明らかにしているように、このIRの誘致に関しては世論の非常に強い反対があるんです。
私の手元にも実は独自の調査の結果があります。
一昨年の調査ですが、我々が独自に行った調査で、県内の有権者四千百八十件の有効回答が得られた中の分析では、愛知県に対するカジノ誘致について七五%が反対、もしくはどちらかというと反対、こう回答しております。六十代では七九・九%、七十代以上では七八・四%が反対、また女性では八〇%が反対と、こうなっております。
しかも、重要なことは、愛知県がIR誘致をもし行う場合には、事前にその賛否や懸念事項などについての県民の意識調査をしっかりやるべきかどうかという問いには、八九・七%の方がこれをぜひ行うべきだと、こういうふうに答えているわけであります。
こうした推進をしようとしている人の立場ではなくて、これに対して懸念や反対を思っている方々の意見については、一体県当局は今どのような把握をしていらっしゃるのか、こういった反対意見に対してはどのように対応しようとしていらっしゃるのか、再度お答えをいただきたいと思います。

◯政策企画局長(野村知宏君) IRの今後の県の考え方について御質問をいただきました。
この件につきましては、まず、現在、意見募集を行っているということでございまして、この意見募集において、事業者へのヒアリングを行っていくということをしておりますので、この事業者からの意見、提案がどうなるかということをまずは見て、判断をしていきたいというふうに考えてございます。


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