【高木ひろし委員】
家庭から出るごみの量は事業系と同じくらいであり、事業系では各企業でいろいろな取り組みが進んでいるが、家庭から出る生ごみの量はそれほど減っていない。
生ごみの処理は、動物の飼料にするか、肥料にするか、メタン発酵等でエネルギーを取り出すかの大体この三つであるが、家庭でできることはコンポストを利用した堆肥化くらいしかないため、家庭から出る生ごみがなかなか減らない。
県内の家庭から出るごみの堆肥化等の取り組みは、どのような状況であるか。
【資源循環推進課主幹(循環・一般廃棄物)】
環境省のデータによると、生活系ごみのうち、粗大ごみを除く31.6パーセントが生ごみというデータが出ており、このデータを活用して本県の数字を推計した場合、2017年度の県内市町村の生活系ごみの総排出量は163万5,000トンであり、その31.6パーセントの51万7,000トン余りが生ごみと推計される。
県内の市町村における生ごみを含む可燃ごみの処理は、衛生面や減量化、量を減らす観点から、ほとんどが焼却処理されているが、一部の市町では焼却以外の処理をしているところがある。
また、コンポストを利用している家庭もあり、この生ごみ量は先ほどの総排出量に含まれていないが、昨年3月現在、一般家庭向けには、生ごみ処理コンポストの購入補助や無償貸与を行っている市町村は37、電動式の生ごみ処理機については43という状況である。
なお、焼却以外の処理は、例えば豊橋市はバイオマス資源利活用施設において、メタン発酵によりバイオガスを取り出して、ガス発電のエネルギーとしての活用を行っており、大口町や幸田町での一部の地域では、生ごみを堆肥化して地域農業などで活用している。また、田原市では生ごみを含む可燃ごみ及び可燃性粗大ごみを原料として、炭化物を製造して燃料化している。
【高木ひろし委員】
家庭のごみの量はなかなか減っていかないが、意識啓発以外の点でどのような課題があると考えているか。
【資源循環推進課主幹(循環・一般廃棄物)】
家庭から排出される生ごみは内容が不均質であり異物の混入する可能性も高く、一定期間保管が必要となることから、においや害虫などの発生するおそれがあり住民の理解を得ることが困難である。また、製造される堆肥等の品質、安定供給、経済性等について、利用側が求める条件をクリアする必要があり、分別、運搬、処理、製品化の各過程で課題がある。
【高木ひろし委員】
名古屋市北区の大曽根住宅の一角にソーネOZONEという複合施設がある。その一つにしげんカフェという施設があり、通い箱型の段ボールコンポストを大量に用意し、これを定期的に通ってくる人が持って帰り、生ごみを入れて持ってきてもらい、それを取り出して、さらに大型で高性能の生ごみ処理機の中で本格的な堆肥化を行う2段階の取り組みを行っている。
この事業は、愛知県循環型社会形成推進事業費補助金の採択事業と聞いたが、県としてこの補助事業にどのような期待を持って取り組んでいるか伺う。
【資源循環推進課主幹(循環・一般廃棄物)】
本年度、ソーネOZONEを運営している特定非営利活動法人わっぱの会が、県の事業化検討の補助金を活用して、家庭から排出される生ごみを堆肥化して有効利用するための仕組みを検討調査している。
これは、家庭に配付した段ボールのコンポストに生ごみを入れ、集合住宅の1階で地域住民の交流の場となっているソーネOZONEに持参し、ソーネOZONEでは家庭から持ち込まれた生ごみから堆肥を製造し、住宅の花壇や菜園、わっぱの会が運営する農場で使用するものである。農場で栽培された野菜は、生ごみを持参した家庭にも提供し、家庭から排出された生ごみの循環ループを構築するものである。
この仕組みを構築するに当たり、収集運搬費用の削減のため、住民みずからが段ボールコンポストを回収拠点であるソーネOZONEに持参することや、堆肥の品質や製造量を確保するため家庭の生ごみから製造された堆肥とわっぱの会が運営する店舗から排出された成分が一定である食品廃棄物から製造した堆肥を混合させることを計画している。
この取り組みは、小規模ながら生ごみの分別、運搬など、各家庭における課題解決の一つであると考え、また、堆肥の品質や製造量が確保されることで、堆肥の供給と需給のバランスがとれたモデルとなることが期待されている。
【高木ひろし委員】
まだ実証実験の段階であるが、家庭の側から見るといろいろな利点があり、これが生活習慣の中に根づき、家庭の生ごみの堆肥化をサイクルとして生活の中に取り入れていく家庭がふえれば非常におもしろい取り組みである。
一方、事業系や食品メーカーから排出される廃棄物の削減や発生抑制について、県内ではどのような取り組みを行っているか。
【資源循環推進課主幹(循環・一般廃棄物)】
事業系や食品メーカーから排出される食品廃棄物の削減は、製造業者に対して、多量排出事業者に義務づけている排出抑制に関する取り組みの報告制度や6月と11月の産業廃棄物の適正処理に係る指導強化月間を中心に実施する重点立ち入り等、そして、産業廃棄物排出事業者セミナーを通じて、食品廃棄物の適正処理とあわせて発生抑制の指導、啓発を行っている。
また、活用に関しては、あいち地域循環圏形成プランに基づいて、持続可能な地域づくりとして、未利用木材等で未利用の資源を活用した循環圏づくりを行う中で、メタン発酵によるバイオガス発電を事業化するために立ち上げた推進チームがある。このチームにおいて、県の循環型社会形成推進事業費補助金を活用し、食品工場から排出される野菜くずなどから飼料を製造する事業について資金面の支援を行うなど、食品廃棄物の有効活用の取り組みを進めている。
【高木ひろし委員】
食品ロスの問題は、SDGsの17の目標の中にもはっきりと掲げられている課題であり、環境局としてもしっかりと取り組んでほしい。
日本でもこれから再生エネルギーを推進していく必要がある中で、非常に有望だと言われているのが風力発電、特に洋上風力発電と言われている。本年10月末から11月の初めにかけての県議会の海外調査団にて、風力発電大国であるデンマークにおいて風力発電の現場や意欲的な姿勢を学んでこようというテーマがあった。その過程で判明したことの一つに、日本でも風力発電の立地可能適地の調査がかつて行われており、その中では、愛知県内に適地はあるが、実際にはいろいろな政治的・社会的要因も含め、なかなか推進するのは難しいという評価になっているとのことであったが、環境局としては、本県における風力発電の活用、立地の可能性について、現在どのような見解を持っているのか。
【地球温暖化対策課長】
風力発電の検討状況について、具体的に個別の案件があるわけではないが、エネルギー施策の窓口として政策企画局で事業者からの相談を受けていると聞いている。
ただ、その具体的な適地となると、海の深さなどいろいろ難しい問題がある。国でも法律を施行したこともあり、九州で1号事業を進めていくという新聞報道などもされているようだが、現状では特段の大きな動きは聞いていない。
【高木ひろし委員】
洋上風力発電には海底に固定するものと浮力型のものがあるが、地政学的には愛知県内にも適地はある。ただ、結局のところ、漁業者の利益との相反の問題であり、航路や漁場として使っているところに風力発電の施設を並べると、漁業者にとって邪魔になる。
ところが、先日、長崎県の五島市において、風力発電施設を実験的に取りつけ、魚礁になるような塗装や凹凸をつけた風力発電の柱を海の中に設置したところ、その周りに藻が生えて魚が寄ってきたため、漁業者も最初は迷惑施設として断っていたが、今は1本だけのところを、さらにもう10本、20本とふやしていくという話に急速に進展したと聞いた。
本県においても、航路の邪魔になることはあるかもしれないが、漁業者との関係では、必ずしもマイナスばかりではないと考えられる。そのため、環境先進県を掲げる本県においても、いろいろな再生可能エネルギーの可能性を追求する中で、風力発電の立地可能性についても、条件によっては可能性があるという道を開くよう取り組んでほしい。