【高木ひろし委員】
近年、性的少数者の権利の問題については非常に動きが激しく、パートナーシップ登録制度を創設する自治体もふえている。国際的には30カ国以上で、特にアメリカでは自治体レベルで、条例により家族的パートナーシップを設け、法律上の夫婦として差別扱いをしない措置が行われており、同性間の婚姻を法的に求めるという国も20カ国以上になっている。
愛知県では県民の人権に関する意識調査を5年ごとに行っているが、平成29年度の意識調査ではどのような調査が行われ、どのような結果であったのか。
【人権推進課長】
本県では、5年ごとに人権に関する県民意識調査を実施しており、前回は平成29年度である。調査対象者は愛知県内に居住する20歳以上の3,000人で、そのうち1,502人から回答があった。
性的少数者の人権では、性同一性障害者の人権上の問題及び性的指向に関する人権上の問題について、現在、特に問題となっていることはどのようなことだと思うか質問をした。
性同一性障害者の人権上の問題では、性同一性障害者に関する理解が足りないため、世間から好奇又は偏見の目で見られることという回答が最も多く、次いで、学校や職場に、性同一性障害者に対応した設備、トイレ、更衣室などが整っていないことや、学校や職場で、いじめや嫌がらせを受けることという回答が多かった。
また、性的指向に関する人権上の問題では、性的指向に関する理解が足りないため、世間から好奇又は偏見の目で見られることという回答が最も多く、次いで、同性カップルが互いの配偶者とみなされないことにより、社会生活上のさまざまな不利益があることとの回答が多かった。
【高木ひろし委員】
この設問は、過去から何回か繰り返し設定されている。時系列で変化を見た場合、愛知県民の性的少数者の人権に関する意識がどのように変化しているのか。
【人権推進課長】
平成19年度から性的少数者に関する設問を始めたが、平成19年度、24年度のときは性同一性障害・性的指向に関して質問し、29年度から、性同一性障害者と性的指向に対する人権上の問題ということで二つに分けて質問した。
読み取れることとしては、平成19年、平成24年では性同一性障害、性的指向に対する理解がないことが最も多く、平成19年では55.9パーセント、平成24年では47.2パーセントであった。平成29年は、性同一性障害者に対する理解が足りないため、世間から好奇または偏見の目で見られることが53.1パーセントであった。性的指向に関する理解が足りないため、世間から好奇又は偏見の目で見られることが47.4パーセントということで、いずれの調査においても理解が足りないということが最も多いという結果になっている。
【高木ひろし委員】
世界的には性的少数者の権利を認めていこうという方向に動いているが、残念ながら愛知県においては、さまざまな性的指向を多様性として容認し、認めていこうという意識の普及について、大きな前進は見られないのではないかと思う。
愛知県としては、意識調査において示されているような課題に対して、性的少数者への差別や偏見の解消に向け、どのような取り組みが行われてきたのか。
【人権推進課長】
本県では、人権教育・啓発に関する愛知県行動計画及びあいち男女共同参画プラン2020において、性的少数者に対する理解の促進を施策に掲げ、各種啓発活動を行っている。具体的には、性的少数者の人権をテーマとした講演会の開催、性的少数者の現状や性的少数者に対する支援などを紹介するパネル展示及び関連図書や啓発用DVDの貸し出し、人権週間における人権啓発ポスターの制作などを行っている。
その他、行政の職員は、窓口業務や施策の実施に当たっては、性的少数者への配慮が必要となる。高い人権意識を持って職務にあたるために、県職員、市町村職員等に対する性的少数者の人権に関する研修を行っている。
【高木ひろし委員】
性的少数者の問題は、人間の意識の奥深くに根強く残っているため、なかなか払拭しきれない難しい問題がある。したがって、啓発の手法においてもいろいろな媒体やコミュニケーションのツールを活用して、人々の心の奥底にまで届くような啓発の工夫が必要だと思うが、人権啓発上、性的少数者問題に関して、どのような工夫をしているのか。また、今後、この問題を県としてどのように進めようとしているのか、総括的に伺う。
【人権推進課長】
性的少数者への理解を促進するための工夫としては、性的少数者の人権に関する講演会では、性的少数者の当事者の方を講師として招き、みずからの体験や、そのときそのときの気持ちなど、当事者でなければわからない話をしてもらっている。参加者からは、なかなか聞くことができない内容を知ることができたとか、本人の生の話を聞かせてもらいよかったなど、多くの人から、有意義であったとの感想を得ている。
また、あいち人権啓発プラザでは、性的少数者を含め、さまざまな人権に関する情報発信や啓発に努めており、図書やDVDなど人権に関する啓発資料を収集し、閲覧や貸し出しを行っている。特に、視聴覚教材であるDVDは性的少数者に関するものを10本ほど用意しており、一般貸し出しのほか、人権推進課職員が講師として行う研修に活用している。
加えて、毎年12月の人権週間には、人権啓発ポスターやリーフレットを作成し、重点的な人権啓発を行っているが、性的少数者への理解を深めてもらうものも制作しており、漫画やキャッチコピー等により、親しみやすいものとなるように努めている。
引き続き、さまざまな工夫を重ね、性的少数者に対する差別や偏見を無くし、正しい理解と認識を深められるよう、取り組んでいきたい。
【高木ひろし委員】
最近、この問題で県が被告になって裁判が行われている。今後、同様の問題で愛知県が訴えられたり、告発を受けたりする可能性もあるため、まずは当事者の訴えに真摯に耳を傾けてほしい。